左からクリエイターズマッチ社長の呉京樹氏、西野氏、司会の田中研之輔氏
「好感度低い芸人」「炎上芸人」などと言われつつも、出す絵本は驚愕のクオリティで世間の度肝を抜き、2000席の独演会を満員にする男、キングコングの西野亮廣氏。

 そんな彼が、12月14日に東京は御茶ノ水のデジタルハリウッド大学駿河台キャンパスの教壇に立ち、同校の社会学概論の講師である田中研之輔氏の司会のもとで、クリエイターズマッチの代表取締役社長である呉京樹氏とともに講演を行った。

 デジタルハリウッド大学に通う学生と当日集まった一般客の前で、西野氏自身が語った自身の活動への哲学は、クリエイターのみならずビジネスピープルにもヒントになることが多い内容だった。その一部を紹介しよう。

◆【1】敢えて自分にとって一番「便利」なものを捨ててみる

 デビューからトントン拍子で冠番組を獲得し、収入も上がったし、生活も良くなったし、知名度も増えた西野氏だが、かつて自分が思い描いていた「スター」像に到達していないことにジレンマを抱いたという。

「人気タレントにはなったと思う。でも、僕がなんか起こしたら時代が動いちゃうような、凄い影響力みたいなのは兼ね備わってないなと思って、で、やべえと思ったんですよ。知名度も増えてゴールデンの、いわば四番で打席に立たせてもらって、追い風も吹いてるのにそのタイミングでホームラン打ててない。そう気づいた時に、この先、30代40代50代の自分がなんとなく見えちゃった。50歳でも芸能界にはおるやろうけど、右肩下がりでなんとなく出てる奴になちゃうなって。このまま行ってもビートたけしさんやウォルト・ディズニーには勝てないなって。僕、本気で勝ちたいんすよ。でも今のままじゃ絶対無理だって思った。だから、ひな壇とかグルメ番組に出るのはもう辞めるって決めたんです。テレビで60点とか70点くらいは取れる芸人になってて、僕にとってはめっちゃ便利な存在でしたが、その便利なものを切っちゃおうって。便利なものがないと、人は他のところでどうにかしようとするでしょう。それくらいしないと突き抜けられないと思う」

◆【2】何かやろうと思ったら、ひたすらそれに打ち込んでみる

 テレビ出演を辞めた西野氏は、決まっていた収録以外はすべて辞めた。結果として週休5日とか6日くらいになったという。

「もうニートみたくなっちゃって。一か月くらい飲み歩いたんだけど、ある時タモリさんに呼び出されて、「お前絵描いてみれば」って言われて。そのときから絵を描き始めたんすよ。で、絵本を作ろうと思ったんだけど、実際どうしようかと思ったんです。というのも、僕自身絵本なんか出すタレントは今までずっと悪口を言ってきた(笑)。だってそうでしょう。絵とかずっと勉強している人からしたら、あいつらタレントだから絵本出せただけだろって思う。僕もそう思っていたわけです。だから僕も確実にそう思われるなって思ったんです。でもそういう声を黙らせたい。じゃあどうすればいいか。プロに勝たないと意味が無い。でも僕は画力も負けてるし、出版のノウハウも知らないし、コネもない。絵本の描き方自体わからない。勝てるところはどこだろうと考えた時に、『一冊を作るのに費やす時間なら勝てる』と思ったんです。プロの方はそれが生業だから生計を立てるためには結構短いスパンで作品を出さないといけない。でも僕は本業ではないし何しろ半ニートみたいな状況。一冊作るのに極端な話10年とかだって掛けられる。だから文房具屋で一番細いペンを買って、細密な絵にするようにして物語も長くした。ああいう絵にしたのは、とにかく時間を掛けて書き込むような感じにすればプロの人と競い合うこともなくなるかもしれないと思ったんです」