プリンが「カビ」で自主回収。食品のカビって、削り取れば平気?

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12月初旬に、国内の菓子メーカーが一部製品の容器にカビが付着していたとして、出荷済みの製品およそ170万パックを自主回収するという事態が起こりました。このケースでは、製品に異常を感じた消費者からおよそ100件の報告が寄せられていたそうですが、いまのところ健康被害の情報はありません。

カビといえば、この時期だとお餅に生えることがしばしばありますね。「カビが付くいても、その部分を削り取れば食べられる」と言う人もいますが、実際はどうなのでしょうか?

カビが放出する数百種類の毒


結論から言うと、カビを削っても基本的に食べるのはNG。最大の理由は、数万種類もあるとされるカビの中には、人や動物に対して有害な成分である「カビ毒」を出すものがあるからです。

カビ毒としては現在300種類以上が報告されていますが、食品に付くカビの種類は周囲の環境によって異なる場合も多く、目の前にあるカビが種類かは専門家でもすぐには判断がつかないと言われています。

「だから、削り取ればいいでしょ」と思われるかもしれませんが、食品の表面にカビが確認できる場合、すでに内部にまで菌糸が成長していると考えられます。どの程度まで侵食しているかは容易に判断できないうえ、中には目に見えないカビもあります。

「じゃあ、加熱すれば?」という意見もありそうですが、これもやはりダメ。カビ毒は熱に対して非常に耐性が高く、通常の調理や加工の温度(100〜210℃)や時間(60分以内)では、完全に分解することはできないのです。カビ毒のある食品を茹でても50〜80%の毒が残り、茹で汁からは10〜15%ほどが検出されると言います。同様に、油で炒めた場合もカビ毒はほとんど減らないことがわかっています。

強い発がん性を持つものも


では、もし誤ってカビ毒を食べてしまった場合、どんな影響を受ける可能性があるのでしょうか? カビ毒の場合、細菌などによる食中毒と異なり、食べた後すぐに吐き気や激しい腹痛に襲われるということは比較的少ないとされます。

その代わり、慢性的なアレルギーや肝臓・腎臓の障害、がんなどを引き起こす可能性があると言われています。自然界における最強の発がん性物質はカビ毒の一種という説もあり、急性の疾患を引き起こす恐れも否定できません。

もちろん、少量食べた程度なら大きな影響はないと思われますが、カビが生えた食品は食べないというのが、健康のための大原則。

食品を保存する際には、カビが付かないように心がけたいものですが、気温が20℃以上、湿度が60%になるとカビの活動は活発化します。冬でもエアコンや加湿器などを使うとこうした条件に近づきやすくなりますので注意が必要です。

チーズ+青いカビ=ブルーチーズ?


一方、私たちにとって役に立つカビもあります。代表的なのが、醤油や味噌、日本酒、カツオブシなどを作るのに欠かせない麹(こうじ)菌です。これらの食品は、正式名称「ニホンコウジカビ」という日本にしか存在しないカビの一種の働きによって作られています。

またカマンベールチーズは白カビによって、ブルーチーズは、ペニシリウムという青カビによって熟成されています。ちなみに、青カビは抗生物質の「ペニシリン」の生産にも使われます。

ならば、冷蔵庫に放置した通常のチーズに青いカビが発生した場合、ブルーチーズとして食べられるかというと、それはダメです。青カビの種類はざっと300以上あり、毒性があるものもないものもあるからです。

ブルーチーズやカマンベールチーズのカビが安全に食べられるのは、おいしくてかつ無害なカビを厳選し、さらに改良して作っているからなのです。チーズや醤油、酒などは、数千年におよぶ人間の営みの中で幸運にも出会った素敵なカビたちの賜物と言えます。改めてありがたくいただきたいですね。

<執筆>
●阿佐木ユウ(フリーライター)

<参考>
●東京都福祉保健局「カビとカビ毒」(PDFへの直リンク)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/kabi/files/kabi.pdf

●健康・医療なんでもQ&A「カビは加熱すれば食べても大丈夫か」
http://www.cocokarada.jp/column/qa/0707/01.shtml

●チーズ資格・検定ナビ「チーズのカビが無害な理由。食べられるカビとの違いは?」
http://cheeseinfo.net/チーズのカビが無害な理由/