いよいよ折り返し点に差し掛かった30年ぶりの新TVシリーズルパン三世。来年1月に放送されるTVスペシャルが、新シリーズの流れを汲んだ『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』と発表されて、いよいよ楽しみになってきたわけだが、まずは11話「イタリアの夢 前編」をおさらいしよう。


1話でルパンと結婚した富豪令嬢のレベッカ・ロッセリーニが見つめる謎の奇書。心理学から物理学、宇宙科学、脳科学に精通した日本人天才学者・浦賀航が遺したものだ。奇書の謎を解こうとするレベッカは、本の中にあった暗号文が示す廃屋に出向くが、そこでイギリス諜報部MI:6と遭遇、そのまま誘拐されてしまう。

MI:6のアジトで拷問を受けるレベッカ。MI:6は自分たちが追っている「イタリアの夢」についてレベッカが何か知っていると踏んだのだ。

執事ロブソンにレベッカ奪回を依頼されたルパン一味は、さまざまなトリックを駆使してMI:6のエージェントたちからレベッカを奪い返すことに成功する。しかし、そんな中、MI:6最強のエージェントと呼ばれるニクスが暴走を始めてしまう。

髪は逆立ち、目が赤く光り、至近距離からの銃弾も回避するニクスを見て、次元がポツリと一言「人間業とは思えねぇ」。いや、銃弾を叩っ斬るあなたのお友達の五エ門さんのほうが人間業じゃないのですが……。

なんとか逃げおおせたルパン一味とレベッカ。実はレベッカが唯一愛した男こそ、奇書を記した浦賀その人だった。しかし、浦賀は遺書もないまま自殺を遂げていた。レベッカは浦賀の真意を知るために、奇書を解読しようとしていたのだ。レベッカに代わり、不可能と言われる奇書の解読に乗り出すルパン。

「やったろうじゃねぇの。ワイフの願いをかなえてやるのが旦那の務めってぇもんだ」

カッコいい!

ルパン一味全員集合! レベッカ奪回作戦


今回はルパン、次元、五エ門、不二子というルパン一味が久々に勢ぞろい(あと、銭形も)。ルパン一味が全員で一つの“仕事”に取り組むのは、実は今シリーズ初めてのこと。シリーズ構成の高橋悠也は今シリーズのルパン一味のことを「仲間であることが当たり前じゃない関係」と説明するが、一味が全員揃ったということは、それだけ今回のヤマが重要だったということだ。

物語の鍵となった奇書は、不可解な文章と奇妙な生物などの絵が描かれたもの。イタリアで発見された解読不可能な古文書「ヴォイニッチ手稿」をモデルにしたものと思われるが、実際は美術スタッフの蜂谷祥平(入社2年目)が描いた落書きを美術監督の山子泰弘が(勝手に)使ったものなのだという。

今回とりわけ目を引いたのが、MI:6最強のエージェント・ニクスのアクションシーンだ。突如としてキャラクターがザクザクした線になり、ものすごくヌルヌル動く。ニクスが敵のエージェントに歩み寄り、相手のパンチをかわしながら銃座で首を殴るだけの短いシーンなのに、異様に見ごたえがある。ものすごく荒っぽいのにリアルで生々しい。これはアニメーターの大平晋也が原画を手がけたものだ。

昨年放送されていた『ピンポン The Animation』のOPをつくった人、と言えば「ああ、あの人か」と納得する人も多いかもしれない。クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビルVol.1』や中島哲也監督『渇き。』のアニメパートも大平の手によるものだ。

「ニクスのとこの作画めっちゃかっこいい」
「ニクスとエージェントの戦闘シーンの作画神ってた」
「ニクスのところの作画がやべえ」
「作画好きな人なら、あれで飯が美味くなるレベル」
など、SNSなどでは作画マニアのみならず一般ファンも沸き立っていた。

OVA『ルパン三世 GREEN VS RED』は、『ルパン三世』の絵がシリーズや作品ごとにあまりにも違うため、それを逆手にとった「絵の違いの数だけルパンがいる(全員別人)」というトリッキーな設定の作品だったが、どんな絵でも飲み込んでしまうのが『ルパン三世』という作品の懐の深さだとあらためて感じる。同じ長寿アニメでも『サザエさん』や『ドラえもん』ではなかなかそうはいかないだろう(『クレヨンしんちゃん』ならアリ)。

さて、今回は前後編の前編だったわけだが、結局まだ何の謎も解明されていない。奇書の中身とは? 浦賀とレベッカの関係は? そもそもMI:6が追う「イタリアの謎」の正体は? ニクスが暴走すると一体どうなるの? ニクスとルパンの決着は? これ、全部次回で片付けるの? というわけで今夜放送の「イタリアの謎 後編」に続く! いよいよ前半戦のクライマックスだ。チャンネルは決まったぜ。
(大山くまお)