アトム法律事務所が自身のサイトに掲載しているWEBマンガ「漫画でわかる!強姦事件解決までの流れ」が物議を醸している。

「強姦加害者に反省の色がない」と炎上

全4ページのマンガは、強姦事件を起こして被害届を提出された会社員の男性が、「前科がついたら会社はクビ!?」「家庭崩壊!?」と苦悩し、弁護士が助けを申し出るところからスタートする。

弁護士は、「刑事事件は対応によっては半分以上が不起訴になり前科はつかない」「しかし事件が起訴されてしまうと有罪になる確率はほぼ100%」と伝え、穏便に解決するには不起訴になることが一番だと主張。被害者との示談で、被害届を取り下げてもらおうと提案する。

その後は弁護士が働き、男性は不起訴となる。「助かりました…」と安堵する男性に、弁護士は「事件が無事に解決したのはあなたの素早い判断のおかげです。次からは気をつけてくださいね」と笑いかける。男性は強姦事件が誰にもバレずに済んだことで「よおし! 今晩は久々に一杯やるか!」喜びの笑みを浮かべるというストーリーだ(参照:「漫画でわかる!強姦事件解決までの流れ」)。

作内にて、男性は一度も反省するそぶりを見せず、罪を償う意識は全く感じられない。一方の弁護士も終始にこやかだ。明るいタッチで描かれているこのマンガに、「とんでもない内容だ」とネットユーザーから非難が殺到。 「胸糞が悪い」「道徳的にアウト」といったコメントが見られる。

「コラでは?」との情報も錯綜

炎上騒ぎのなか、一時はマンガがコラージュで作られたものだというデマも拡散された。もともとは「交通事故」だったところを悪意あるネットユーザーが「強姦事件」に言葉を差し替えて広めた、という情報が一部で流れたのだ。実際に「交通事故」版も存在しているが、いずれのマンガもアトム法律事務所が運営するサイトに掲載されており、同事務所が自ら言葉を入れ替えて使いまわしていることが判明した。

『ウートピ』では、同事務所のマンガの責任者である弁護士に取材を実施。どういった意図でマンガを制作したのか、交通事故と強姦事件の言葉を入れ替えて複数のサイトに同一のマンガを掲載している理由、批判が出ていることをどう考えるかなどを聞いた。

あくまでも「流れ」を表現しただけ

――漫画の制作意図と、掲載開始時期は?

担当者:文章では法的知識のない一般の方に法律の手続きを理解してもらうのが難しいため、漫画形式で説明しました。掲載開始時期は、およそ半年前です。

――同一の内容で「強姦事件」「交通事故」と言葉が差し替えられたものが、別々のサイトに掲載されています。その理由は。

担当者:刑事事件の弁護活動は、被害者がいる事件の場合、示談で解決することが多くあります。罪名は異なっても基本的な流れは同じなので、「共通フォーマット」として使用しました。しかし、流れは一緒でも、適応される法律や事件の内容は違います。その違いに対応するため、専門サイトを分けて制作しました。

――この漫画は、強姦の冤罪を想定しているわけではない、という理解に間違いありませんか。

担当者:強姦事件は、女性側と男性側の言い分が食い違うことも多く冤罪かそうではないか、線引きが難しいケースも多いです。漫画では何か特定の事件を想定しているのではなく、一般的な流れを説明しています。あくまでも「流れ」を表現しただけで、当然、強姦を肯定しているわけではありません。

「適切ではなかったかもしれないです」と担当者

――ネット上では、男性キャラに反省の色が見えないことや、弁護士キャラの「次からは気をつけてくださいね」という台詞が適切ではないとの批判がありますが。

担当者:漫画は、法律の手続きの流れは私たちが考え、法的に監修をしています。実際に描く過程は専門業者に発注しています。そのため、こまかい表情などまで手が行き届かず、検討が不十分だった部分があります。適切ではなかったかもしれないです。もともとは「刑事事件一般」のため制作しましたが、台詞を転用するときに細かいセリフなどを検討したほうがよかったかもしれません。

――漫画が掲載されたページに一時は繋がらないほどアクセスが殺到しました。この件について公式声明を出す予定は。

担当者:現時点ではありません。

私たちは当事者の片方に立つ仕事であり、なおかつ犯罪というセンシティブな事柄を扱っているので、何らかの議論はつきものだと考えています。例えば「犯罪者を弁護するのはおかしい」と言われたら、それも一つの議論になります。存在そのものがそういうものを織り込んでいる仕事です。

セリフ等は今後、検討する

――「悪徳弁護士に見える」というコメントもありましたが。

担当者:法律では、どんな犯罪者にも弁護される権利があると定められています。その中で、私たちのように(加害者側に立つ)役割がある。請け負った以上は、クライアントに対してベストを尽くすのが弁護士の仕事です。もちろん証拠を隠すようなことは弁護士倫理上禁止されていますが、相手方が交渉に臨んでもよいと考えるならば、相手方と交渉、示談をすることは認められています。両者が納得してはじめて、最終的に示談に至ることができるのです。セリフや表現の細部などについては今後検討していきます。

批判の中には「被害者の気持ちを考えてほしい」といったコメントもあり、怒りを覚えた人がいることがうかがえる。「犯罪者にも弁護される権利がある」のは事実だが、強姦の加害者とされる男性キャラの罪を咎めない表現は配慮がないと言わざるを得えず、炎上はまだ続きそうだ。

(ウートピ編集部)