日本マイクロソフトの「Surface Pro 4」は、タブレット端末としても、ノートパソコンとしても使える2in1タイプのWindowsタブレットだ。完成度の高かった前モデル「Surface Pro 3」の特徴はそのままに、ディスプレイやキーボード、ペンなど、さまざまな点が改良されている。同社の基本ソフト(OS)「Windows 10」との親和性も高い。進化したSurface Pro 4の実力をチェックしていきたい。

12.3型液晶ディスプレイを搭載するSurface Pro 4。一番安価なCore m3モデルの価格.com最安価格は119,061円(2015年12月16日時点)。同モデルは価格.comの「タブレットPC(端末)・PDA」カテゴリーの売れ筋ランキングで9位、注目ランキングで3位に入っている(同)

薄く軽くなったボディに12.3型の高解像度ディスプレイを搭載

Surface Pro 4は、上の写真の通り、パッと見は前モデルからほとんど変わっていない。前モデルと同様、質感が高く、堅牢性にもすぐれたマグネシウム合金製のボディに、自由に角度を変えられる「キックスタンド」を備える。本体サイズは、約292.1(幅)×201.4(奥行)×8.4(高さ)mm、重量はCore m3モデルが約766g、Core i5/i7モデルが約786g。前モデルから、わずかに薄く、軽くはなっているが、携帯性は前モデルとほぼ同じと考えていいだろう。

サイズ感は前モデルからほとんど変わっていないが、ディスプレイは12型から12.3型へ大型化し、解像度も2160×1440から2736×1824にアップしている。画素密度は267ppiで、アップルの「iPad Pro」よりも高精細だ。発色は自然で、明るさは輝度を最高にするとまぶしいくらいだ。タッチパネルと液晶の間に空気層のない、いわゆる「ダイレクトボンディング」を採用しており、斜めから見ても白っぽく見えることもない。ディスプレイの表示品質は、タブレット端末としてはトップクラスだろう。画面比率は、前モデルと同じ3:2。縦向きでも横向きでも使いやすく、写真を表示したり、「Microsoft Office」で作業したりしやすい。スピーカーも改良されており、かなり大きな音が鳴る。プレゼンや会議で動画を流すときでも、これなら音が小さくて困ることはなさそうだ。

マグネシウム合金製のボディ。デザインは前モデルからほとんど変わっていない。自由に角度を変えられるキックスタンドもそのままだ

12.3型液晶ディスプレイの解像度は2736×1824。高精細で小さな文字もクリアに表示され、読みやすい。Surface Pro 3にあったWindowsボタンは廃止されたが、使い勝手の面で影響は感じなかった

本体の重量はCore m3モデルが約766g、Core i5/i7モデルが約786gだが、Surface Pro 4タイプカバーとSurfaceペンを含めると実測で1kgを超える

Windows 10と相性がいいのも特徴だ。生態認証機能の「Windows Hello」をサポートしており、前面のカメラに顔を近付けるだけでログインできる。パスワードよりも簡単にログインできて、パスワードを盗み見される心配もない。実際に試してみたが、パスワードをかけていることを忘れるほど自然にログインできた。また、「Surfaceペン」のトップボタンを長押しすると日本語に対応したばかりのパーソナルアシスタント「Cortana」が起動する。「Continuum」にも対応しているので、キーボード兼カバーの「Surface Pro 4タイプカバー」(別売)を取り外すと「タブレットモード」に、取り付けると「デスクトップモード」に自動で切り替わる。Surface Pro 4は、Windows 10の新機能を存分に体験できるモデルに仕上がっている。

カメラに顔を近付ける(極端に近付ける必要はない)とログインできるWindows Helloに対応

カメラに顔を近付ける(極端に近付ける必要はない)とログインできるWindows Helloに対応

「Surface Pro 4 タイプカバー」が使いやすくなった

Surface Pro 3から大きく変わったのが、Surface Pro 4 タイプカバーだ。Surface Pro 3用のタイプカバーは、キーとキーの間にほとんど隙間のないタイプだったが、Surface Pro 4では多くのノートパソコンで採用されている独立キー型(アイソレーションキー)を採用。キーピッチはデスクトップパソコン並みの19mmの広さを確保している。打鍵感がアップしているほか、角度を付けて使った場合の嫌なたわみも解消された。バックライトも引き続き搭載する。

さらに、トラックパッドは、面積が約40%広くなり、表面には滑りの良いガラスを使うことで、使い勝手がアップしている。3本指を使ったジャスチャー操作も快適に行える。キーボードの使い勝手は、前モデルから大幅に改良されている。色はブラック、ブルー、シアン、レッド、ティールグリーンの5色から選べる。直販サイトでは英語配列キーボードも購入できる。

残念なのは、前モデルと同じく別売なこと。価格.com最安価格で16,094円(2015年12月16日時点)もするが、使い勝手の良いキーボードだけに、いっしょに購入したいところだ。

アイソレーションキーに変わったSurface Pro 4タイプカバー。強度もアップし、嫌なたわみも解消された。広くなったトラックパッドも使いやすい

キーストロークは実測値で約1.5mm。打鍵感がアップし、タイピングしやすくなっている

キーストロークは実測値で約1.5mm。打鍵感がアップし、タイピングしやすくなっている

前モデルと同様、上部を折り曲げて固定することで、キーボードに角度を付けられる。剛性がアップしているので、角度を付けてもたわみにくくなった

広くなったトラックパッドでは、複数の指を使ったジェスチャー操作が快適に行える。3本指で上にスワイプすると、開いているアプリがすべて表示される。下にスワイプするとデスクトップが表示されるのも便利だ

「Surfaceペン」と呼ばれるペンは、筆圧検知が256段階から1024段階となり、他社のペンと比較してもそん色のないスペックとなった。メモ程度では違いがわかりにくいが、絵を描くユーザーにとってはうれしい改善だろう。書き味は、遅延が少なく快適そのもの。ペン先が柔らかく弾力があり、吸いつくような書き味だ。ペンのトップボタンに消しゴム機能があるのも地味だが非常に便利で、自然に文字入力と削除ができる。また、ペンは本体の側面にマグネットで固定できるようになり、前モデルの悩みだったペンの収納場所の問題も解消されている。

筆圧検知が256段階から1024段階にアップしたSurfaceペン

筆圧検知が256段階から1024段階にアップしたSurfaceペン

トップボタンは消しゴムとして利用可能。消しゴム付きの鉛筆と同じ感覚で使える

トップボタンは消しゴムとして利用可能。消しゴム付きの鉛筆と同じ感覚で使える

別売りの「Surface ペン先キット」。硬さと細さが異なる4つのペン先がセットになったキットだ。ちなみに、標準で付属するのはメモやスケッチに適したHB。直販サイトでの価格は1,512円(税込)

Surfaceペンを本体の側面にマグネットで固定できるようになった。細かいことだが、ペンをなくす心配がなくなったのはうれしい改良と言える

Surface Pro 4の発売日に開催された記念イベントで、ライブペイントパフォーマンスを披露したイラストレーターのJB style氏。アドビの「Illustrator」を使い、約10分で右写真のようなイラストを完成させた。Surface Pro 4とSurfaceペンの組み合わせは、プロのクリエイターの高い要求に応えられるポテンシャルを持っている

「第6世代Coreプロセッサー」を搭載! 性能は文句なし

最後にスペックをチェックしたい。Surface Pro 4は、搭載するCPUの種類、メモリーとストレージの容量の違いで6機種をラインアップする。一番安い機種はCPUにCore m3、中位の2機種はCore i5、上位の3機種はCore i7を搭載する。いずれもインテルの最新CPUである「第6世代Coreプロセッサー」(開発コード名「Skylake」)だ。パフォーマンスはもちろん、グラフィックス性能も強化されている。なお、Core i7モデルは来年2016年1月の発売となる。

メモリーは下位の2機種が4GB、中位の2機種が8GB、上位の2機種が16GB。前モデルは8GBが最大だったので、メモリーを多く消費するアプリケーションを使用する人にとって、16GBのモデルは魅力的なはずだ。なお、購入後のメモリーの増設はできない仕様となっている。ストレージは下位の2機種が128GB、中位の3機種が256GB、最上位機種が512GBで、いずれもストレージ容量に余裕がある。microSDカードスロットも備えるので、大容量のカードが使えるのもありがたい。

今回はCore i5/8GB/256GB モデルを試したが、動作は快適そのものだった。CPUの型番は、2コア・4スレッドの「Core i5-6300U」(2.40GHz)で、パソコンの総合性能を測れる定番ベンチマークソフト「PCMark 8」のスコアは2626(Home accelerated)だった。ストレージのスピードを測定する定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark 5.1.0」(ひよひよ氏作)の結果は下の通り。Read(読み込み)は非常に高速だった。また、Surface Pro 3では長時間作業していると、本体が熱くなることがあったが、Surface Pro 4では排熱処理が改善され、熱くなりにくくなっている。ベンチマークテストなど、負荷のかかる作業中はファンが勢いよく回ったが、熱問題は解消されている。

ストレージのスピードを測定する定番ベンチマークソフト「CrystalDiskMark 5.1.0」(ひよひよ氏作)の結果。Readの速さが光る結果となった

ハイスペックな2in1パソコンの決定版

Surface Pro 4は、見た目が前モデルとほぼ同じなので、新鮮味には欠けるが、中身や使い勝手は大きく進化している。モバイルノート代わりに使いたい人にとっては、Surface Pro 4タイプカバーが使いやすくなったのはうれしい改良点だ。

多くの点が改良されたSurface Pro 4だが、一番の魅力は2in1でありながら、メインマシンとしても使えるほどハイスペックなところだろう。ライバルとなるiPad Proや東芝の「dynaPad N72」と比べても、性能の高さは頭一つ抜けている。その分、価格も高いが、完成度は高く、ハイスペックな2in1パソコンの決定版と言っても過言ではないだろう。


>> ハイスペック2in1の決定版!? 完成度が高まった「Surface Pro 4」を試す の元記事はこちら