復帰を願っていた松来さん(アルバム『White Sincerely』より)

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 10月27日の急逝理由が公表されなかった経緯から、死因に関する諸説がネット上で噴出した声優の松来未祐さん(享年38)。

 このたび、四十九日翌日の故人ブログ(12月15日付)で、所属事務所が「慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection ; CAEBV) 」と病名を記し、最終的な死因が「悪性リンパ腫」との真相を明かした。

 公表した背景には、彼女のご遺族が抱いた「同じ病気の一人でも多くの人が、早期発見によって助かって欲しい」という意向があったという。

 松来さんは、原因不明の体調不良から検査を重ね、今年6月30日に急性肺炎で緊急入院した。精密検査後の診断結果は、聞きなれない病名(chronic active Epstein-Barr virus infection ; CAEBV)。事務所関係者も「非常に症例が少なく、難病指定もされていない難しい病気であることが判明し、そこから松来未祐の闘病生活が始まりました」と、当時の困惑ぶりと無念さを述懐している。

 専門医によれば「医療関係者でさえ、いまだ認知度が低く、診断と治療が遅れがちの病気」だというから、本人や周囲の不安たるや幾何だったか......。

化学療法のみでは治せないCAEBV

 CAEBVによる症状と障害臓器は、多岐におよぶ。生命を脅かす合併症の罹病率も高く、重篤で予後不良の疾患だ。近年では慢性白血病リンパ腫の仲間(=リンパ増殖性疾患)と考えられるようになってきた。

 さまざまな治療法が行われているが、いまだに十分な有効性や安全性の実証例は確立されていない。「化学療法だけの治癒は期待できない」「唯一期待できる治療法は造血幹細胞移植(=骨髄移植)」というのが、現場を担う専門医らが語る実情である。

 CAEBVは、EBウイルスに感染したTリンパ球、NK細胞の増殖症である。同じEBウイルスが原因の伝染性単核球症と比べて、感染は100〜1000倍以上と多いのが特徴だ。

 症状は長期の発熱、リンパ節や肝臓・脾臓の腫れ、肺炎などで、合併症は、心筋炎・肝硬変・脳炎など重篤なものが多い。感染し増殖したTリンパ球、NK細胞を根絶しないかぎり根治は期待できない。

 また、現状ではCAEBVの診断基準が曖昧なため、川崎病や若年性関節リウマチ、急性リンパ性白血病などに見られる類似症状からの区別が重要だといわれている。

検査の保険適応が「手遅れ」を救う

 CAEBVは、発症に男女差はなく、EBウイルスは世界中のほとんどの成人が既感染者だ。EBウイルスは、乳幼児期には家庭内や保育所で、思春期以降では異性間の交流を中心に、唾液を介して主にBリンパ球(まれにTリンパ球、NK細胞)へ感染する。

 患者団体は「誰が発症してもおかしくない」とメカニズムの解明を願い、「CAEBVの周知徹底」と「(EBウイルス定量検査にかかる)費用の負担軽減」を国に求めている。

 だが、がんや感染症は、難病指定から除外されるのが通例だ。早期発見と確定診断に不可欠な血中検査は、保険適用外(自己負担1〜2万円)という壁が、診療の手遅れを招く一因にもなっている。

 風邪や膠原病とも混同されやすいCAEBVの発症率は「100万人に1人」ともいわれ、正常なリンパ球を増やす造血幹細胞移植だけが唯一の期待療法とされている。しかし、移植可能な身体状態による制限、情報の乏しさやリスクから敬遠した結果、手遅れとなるケースも少なくない。

 愛娘に先立たれた両親は「娘の闘病生活は頭が下がるほど立派でした」と、病床での松来さんを述懐。本人も「いつか手記を出して同じ病気に苦しむ人の支えになりたい」と考えていたという。

 事務所関係者も今回の病名・死因の公表を機に「より多くの方に『慢性活動性EBウイルス感染症』という病気を知っていただき、早期発見と治療法の進展に繋がることを願っております」と故人の遺志を代筆している。折しも、来年から難病指定が56疾患から306疾患に拡大される。EBウイルス検査も早く保険適応となることに期待したい。
(文=編集部)