写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●体験共有の場を作り出せるか
ビデオオンデマンド(VOD)方式の動画配信サービス業者が乱立し、時間と場所を選ばない動画視聴が一般化しつつある状況のなか、LINEはあえて生放送にこだわる動画配信プラットフォーム「LINE LIVE(ラインライブ)」を立ち上げた。その狙いとは。

LIVEはタレントやアーティストなどによる生放送の動画配信事業。ユーザーは動画視聴用アプリやWebブラウザを通して動画を視聴する。2016年早々には一般ユーザーによる動画配信も可能になる。

LINEが生放送にこだわる理由は、「今起こっていることを今見たい」と望む多くのユーザーの存在を感じているからだ。スマートフォンのプッシュ通知機能を活用し、多くのLINEユーザーをライブ配信の同時視聴に呼び込む一方で、これらの視聴者に情報をリアルタイムで発信したいクライアントに対し、広告媒体としてのLIVEを売り込む。LINEが生放送の特性を活かして構築を目指す動画配信事業のビジネスモデルだ。

○体験共有ニーズの掘り起こし狙う

リアルタイムの情報発信を武器に、視聴者と広告クライアントの双方にライブ配信動画の魅力をアピールするLINE。LIVE事業の成功は、国内5,800万人の豊富なLINEユーザーを動画視聴に結び付けられるかどうかにかかっている。LINEが取り込みを狙うのは、同じ動画を同じタイミングで見て盛り上がりたいという体験共有ニーズを持つユーザーだ。

LIVE立ち上げの発表会に登壇したLINE取締役の舛田淳氏は、スマートデバイスとVODの普及により、動画視聴は場所や時間に縛られなくなった一方、リアルタイムでユーザーが視聴体験を共有する機会は減少傾向にあると分析。昨今の野外音楽ライブ(いわゆる夏フェス)の盛り上がりを引き合いに出しつつ、体験の個別化が進む一方で体験共有を望むニーズが高まっているとの認識を示した。

大勢で同じライブ配信を視聴しつつ、コメントを付け合うLIVEの事業モデルは、体験共有を望むユーザーのニーズにも合致しそうだ。こういったニーズの開拓に向け、LIVEではスポーツの試合や音楽ライブをグループで視聴するパブリックビューイングのようなコンテンツについても配信を検討していく。

●生放送が生み出す広告媒体としての価値
○プッシュ通知の集客力を活用

LIVEの視聴者数を増やすには番組の開始を知らせる仕組みが不可欠。LINEはスマートフォンのプッシュ通知機能を活用することで、ライブ動画のリアルタイム視聴にユーザーを呼び込む考えだ。LIVE発表会で舛田淳氏は、既存の類似サービスに対するLIVEの優位性として、LINEのプッシュ通知機能が持つ集客力の高さを強調。友達登録を行ったアカウントからライブ配信開始の知らせが届けば、LINEユーザーはスマートフォン経由で即時にリアルタイム視聴へと移行する可能性が高いとの見方を示した。ニコニコ生放送やツイキャスもアプリからのプッシュ通知を行っているが、「ラインからのプッシュは効果が桁違いに高い(舛田氏)」という。

○収益化の根幹は広告収入

LIVEの収益化には、広告、課金、LIVEショッピングの3つの手法を用意する。収益化の根幹と位置づける広告については、動画に広告を差し込む方法やタイアップ番組の配信を想定。広告収入は配信者とLINEでシェアする。動画への課金については、ユーザーが配信者に「投げ銭」としてチップを払うような事業モデルを検討中。LINEは課金時に手数料を受け取る。ショッピングは配信者が動画で紹介した商品をLINEユーザーがアカウントを通じて購入する仕組み。来年スタートする一般ユーザーのライブ配信については、収益化するかどうかも含めて詳細を詰め、2016年早々にも方向性を打ち出す予定だという。

○LINEならではの動画配信事業に挑戦

コミュニケーションアプリとしての機能だけを必要とするユーザーも存在するため、LINEアカウントに紐付けられるサービスなら「何でも取り込もうというつもりはない(同社広報)」とするLINEだが、生放送にこだわる動画配信サービスへの参入は、豊富なスマートフォンユーザー基盤と、そのユーザーに対して番組開始をタイムリーに伝えられるプッシュ通知機能という仕組みを併せ持つLINEならではの決断と言えそうだ。ライブ配信に体験共有を望むユーザーを集客しつつ、情報発信の即時性を武器に広告クライアントを取り込めるか。LINEの新たな挑戦が始まった。

(藤田真吾)