画像

写真拡大

 『クリエイティブを“科学”する動画マーケティング』の第四回。前回は、シェアされる動画のメカニズムについて解説しました。今回は、Star動画(バイラル動画)のKPIについて考えていきます。

■動画を何で評価するか?

 オンライン動画を用いたマーケティング施策は、どのような数値を基に評価するべきでしょうか。検索連動型広告やディスプレイ広告などのデジタル施策の文脈で考えると、広告の表示回数(インプレッション)や、クリックしてリンク先に遷移したことを示すクリックスルー率(CTR)、更に購入等のゴールアクションに繋がった際のコスト(CPA)などが思いつきます。

 一方、テレビ施策の世界から考えると、CMの延べ視聴率(GRP)のような指標も考えられます。

 しかし、私たちにもっとも馴染みがあるのは「視聴回数」ではないでしょうか。視聴回数はCost Per View(CPV)として、広告配信の入札単価の基準として使われることが多く、マーケターにとって必然的に重要となる指標です。

 また、視聴回数はYouTubeやFacebookで目立つ位置に表示されていて、管理画面をみなくても確認できるので、多くの人がまず視聴回数をみて、その動画の人気を判断しようとします。

 結果、他部署や世間一般へのみえ方という意味でも、重視したくなる指標になってきます。故に、オンライン動画施策を行う時のKPIとして、視聴回数を軸に据えているという方は多いと思います。

■Star動画はCPVが良い?

 しかし、視聴回数はオンライン動画施策を評価するのに十分な指標ではありません。前回ご紹介したStar動画を通じて解説していきたいと思います(Star動画以外のKPIについては次回ご紹介します)。

 Star動画に関するよくある誤解は、「Star動画はCPVが安いのではないか」というものです。シェアされ、バイラルしていくことによって、結果的に広告よりも安く視聴者にリーチすることができる。

 何百万、何千万回も再生されているバイラル動画の事例を見ると、これは真実のようにみえます。しかし、Star動画はクリエイティブの中身に凝っている分、制作費だけで何百万円〜何千万円もかかっているものが大半です。

 更に、PRや火付け役として、費用をかけメディアへの出稿を行っている例も多数あります。一方、通常の動画広告は安く抑えれば制作費30万円程度ですませることができるため、他の費用は全て広告配信費にまわすことが出来ます。

 すると、例えば1,000万円の予算があり、広告配信単価が10円とした場合、動画広告であれば制作費30万円を除いて97万回の視聴が実現できますので、Star動画はクリエイティブの力で97万回以上の視聴を実現しないといけない、ということになってしまいます。

 世の中の事例には、このラインを超えている例はいくつもあるものの、Star動画は当たり外れがあります。となると、動画広告の「手堅い97万回」と比較して、「視聴回数の獲得効率」目的のみで、Star動画に多額の費用をかける判断ができるかというと、これはなかなか現実的な話ではないでしょう。

■動画の価値を見落とす指標

 加えて、視聴回数は動画の重要な価値を見落とす可能性がある指標です。連載初回に述べたように、動画は構成要素が多いことによる表現力の高さが強みであり、言い換えれば「伝える力が強い」表現方法です。特に、Star動画は、バナーやリスティングには真似できない、動画ならではの伝達力を活かしたクリエイティブが強みです。

 ブランドに対する好感度を上げ、個別商品に限らずその事業全体への貢献が可能です。一方で、視聴回数は、ある秒数まで視聴された回数(基準はプラットフォームによって異なります)を示すものです。

 これでは、動画を知った人の数は示せても、Star動画の伝達力の価値を可視化することは出来ません。視聴回数では、Star動画で最も力を入れるべきクリエイティブの中身が、正しく評価されないのです。

小野敬明(株式会社Viibar)[著]