会見で社長が涙した旭化成、決算会見のついでに頭を下げた三井不動産、会見のたびに利益水増しが発覚した東芝、「部下は私の子供」と社長が常務を庇ったトヨタなど、2015年は有名企業の謝罪会見が相次いだ。今年続出した企業不祥事の特徴を、危機管理コンサルティング会社「リスクヘッジ」代表の田中辰巳氏はこう話す。

「東芝、三井不動産、トヨタ自動車といった日本を代表するトップ企業が信じがたい不祥事を起こし、その後の対応もお粗末なものが際立った。企業のコーポレートガバナンス(企業統治)が機能していないことが露呈した1年でした」

 各専門家が揃って指摘するのは、対応を誤れば会社の浮沈さえ左右しかねないという現実だ。それを象徴するのが、神奈川県横浜市の傾斜マンション問題だった。

「深く深く反省し、お詫び申し上げます」

 10月20日、旭化成の浅野敏雄・社長は謝罪会見の冒頭、約7秒間にわたって頭を下げた。子会社の旭化成建材による杭打ち工事のデータ改ざんが発覚してから5日後のことだった。会見途中、顧客への影響を問われた浅野社長は、「誠心誠意、説明したい」と言った後、ハンカチを取り出して涙をぬぐった。日米の企業組織論が専門の明治大学教授・小笠原泰氏が言う。

「突然の涙を“反省のポーズ”と感じた人もいるはず。アメリカでは原因究明と責任の所在が不明の段階で、企業トップが謝ることなどまずない。まして涙を見せるという情緒的な反応は“弱い経営者”として失格の烙印を押されかねない」

 泣きたいのはマンションを買った住人のほうだ。一方で「傾きマンション」の施工主の三井住友建設、販売元の三井不動産レジデンシャル、その親会社である三井不動産はいずれも謝罪会見を開いていない。

 11月6日、三井不動産は「多大な迷惑をかけ、大変申し訳なく思っている」と常務が陳謝したが、これは中間決算発表の場で、相次ぐ報道陣の質問に答える形で発言したものだ。三井住友建設の永本芳生・副社長はやはり決算会見の場で、

「(旭化成建材に対する)信頼を裏切られた」
「日々の管理で落ち度があったわけではない」

 と、責任転嫁とも居直りとも取れる発言を連発した。

「三井不動産レジデンシャルは住民説明会で“全棟建て替え”や“転居希望者へ新築想定価格での買い取り”などを提示しましたが、情報開示によって住民の不安を取り除く最低限の手続きを飛ばして、高額補償を持ちだした。泥棒が“カネを返せばいいだろう”と言っているようなものでした」(前出・田中氏)

※週刊ポスト2015年12月25日号