インドと金需要世界一を競う中国。金を外貨準備の重要な資産と捉える中国人民銀行は、7月に持ち分を公開して以降、保有量を毎月増やしている。民間需要とともにこの公的需要が金価格のサポート役となっている。

金価格のサポート役
となっている
人民元の国際化

今年8月に突如として通貨人民元の切り下げを発表した中国人民銀行。市場の受け止め方は、切り下げを余儀なくされるほど景気の悪化が進んでいるというもので、資源爆食い大国の失速懸念はコモディティ(商品)市場の売りに拍車をかけることとなった。春先に40ドル割れ寸前まで売られ、その後60ドル台まで買い戻されていたWTI原油は、瞬く間に30ドル台に急落。エネルギー関連株から崩れたニューヨーク株式市場も大幅調整を余儀なくされたことは記憶に新しい。結局、株安は世界中に広がり、それが世界経済への先行き懸念でフィードバックされる悪循環。この流れの中で米国FRB(連邦準備制度理事会)は、中国を中心とした不安定な新興国の状況を理由に利上げを見送ることになった。

こうした8月以降の動きは、金市場では価格の押し上げ要因となった。人民元切り下げ直前の1100ドル割れから、10月15日の高値1191・7ドルまでほぼ100ドル、約9%の上昇に。コモディティ安の流れの中で金が逆行高を演じたのは、まさに通貨的側面からFRBの政策見通しに左右されるからだ。米国利上げ観測の後退が、そのまま金の押し上げ要因となった。

さらにもうひとつ、この間の中国による積極的な買いがある。人民元の切り下げについては、確かに交易条件の改善という景気対策上の狙いは否めない。一方で、人民元の国際化を目指す経過措置として、市場実勢に人民元レートを合わせるという目的があった。国際化のひとつの象徴として、IMF(国際通貨基金)が加盟国に配分している合成通貨「SDR(特別引き出し権)」の相場を決める通貨バスケットの構成通貨となることがある。現在は米ドル、ユーロ、円、英ポンドの4通貨で構成されるが、そこに人民元を入れることを中国が要請しており、その要件としてIMFから自由化を求められているのだ。併せて外貨準備についての情報公開も始まり、金保有の実態も明らかになった。6月末時点で1658トンだったが、7月に19トン、8月に16・2トン、さらに9月は14・9トンと毎月持ち分を増やしていることが判明。9月末時点で1708・5トンとなり、過去3カ月間で50トン超増えたことになる。

同時に、9月の香港経由の金輸入量も10カ月ぶりの高水準となる97トンにも膨れ上がっている。人民元の切り下げに対し、民間レベルでも金購入が活発化している表れだろう。人民元改革は中国の金需要を刺激し、金価格のサポート役となっているとみられる。

マーケット・ストラテジィ・
インスティチュート代表
亀井幸一郎
中央大学法学部卒業。
山一證券に勤務後、
日本初のFP会社であるMMI、
金の国際広報機関であるWGCを経て
独立し、2002年より現職。
市場分析、執筆・講演など
幅広く活躍中。



※この記事は「ネットマネー2016年1月号」に掲載されたものです。