不動産は人生最大の買い物だ。慎重になる買い手に対して、販売元は物件の「売り」をあの手この手で宣伝する。そのせいか、最近、折り込みチラシやネットなどで見かける高級マンションの広告コピーがすごいことになっている。

 現象にいち早く気づき、広告コピーを“収集”してネットなどで記事を配信しているカメラマンでライターの大山顕氏がいう。

「2000年代半ばから、高級マンションのキャッチコピーがポエムのような文体になりました。大げさでファンタジー感のある表現がとても面白くて、“マンションポエム”として収集を始めました」

 高級マンションを売るにはハイソなイメージ戦略が欠かせない。さらにマンション広告では「日本初」「最高級」など誤解を招きやすい表現が自己規制されるため、より抽象的でスケールが大きく、ファンタジー感あふれるポエムが求められるようになったという。

 百聞は一見に如かず。大山氏が選んだ珠玉のポエム集をお届けしよう。

●都心は真性ポエムゾーン

 マンションポエムの「聖地」が港区を中心とした都心エリアだ。超高級マンションの立ち並ぶ地域だけに、他とはレベルの違う高級感がひたすらに綴られる。

《ここでの暮らしは、どこかニューヨークのそれに似ている》(ミッドサザンレジデンス御殿山)
《ニューヨーカーがニューヨークを愛するように 東京を愛してるって照れずに言えたら 東京は変わりはじめる。きっと。》(THE TOKYO TOWERS)

 読んでいて恥ずかしくなるのは我々が高級物件に手が出せない庶民だからか。

●「歴史」「地形」推し

 昔からの住宅街では「歴史」や「地形」が格調高く強調される。

《モダニズムと風雅。大江戸の美意識がいま、甦る。》(クリオ浅草橋)
《その都心の『丘』は、美しい人生の叡智に充ちている。》(ブリリア東大前)
《悠久の高台邸宅街で、人生はいま、高みを目指す。》(ディアクオーレ文京目白台)

●臨海は「キラキラポエム」

 東京五輪を控えて人気のエリアだが、大部分が埋め立て地で歴史や伝統がない。かわりに「きらめき」「フロンティア」といったワードが多用され、「中学生の空想のようなキラキラポエム」(大山氏)があふれる。

《まるでフィクションのようなこの地を、私たちは『プラネット』と呼ぶことにした。》(ザ・タワーズ台場)
《ときめくために生まれた。》(ブリリア有明スカイタワー)

 ちなみに大山氏が「マンションポエムの最高傑作」とする作品がこちら。

《「無色の東京」が東京の中にあります。それはフロンティアの場所。フロンティアとは、未開地を意味するのではなく、「国境」を指す。東京の中の世界のフロンティア。東京ベイエリア、晴海のアドレスが有する進化ポテンシャル。世界へ挑む、あなたにふさわしい「私極」の空間が、そこに誕生します。》(ドゥ・トゥール)

 もう深すぎて意味がわからない!

(※コピーや物件情報は大山顕氏提供)

※週刊ポスト2015年12月25日号