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原油価格が暴落している。1バレル100ドル以上だったのが、一年もたたず40ドル台に下降。落ち着いたかと思われたが、ここにきて遂に40ドルも割り込み36ドルまで再び急落。日本国内のガソリン価格も5年ぶりの安値だ。

私は、スイス銀行時代に「NYMEX」という原油取引所でトレーダーを体験していたので、さっそく現場の後輩たちと話しをした。結局、今回の原因は、ウイーンで開催されたOPEC(石油生産国の団体)総会で、価格が下がっているのに、減産で合意出来なかったことが引き金になっています。

それでも「イスラム国が、原油生産施設を狙う行動に出れば、さすがに生産に支障が生じて上がるかも」という声も聞かれる。ただ、米国はシェールという新たな原油生産が開発。いまや、ロシアと世界一を争うほどの生産国になった。中東の原油に依存する体質が劇的に変わっている。中東、ヴェネズエラ、ナイジェリアなどのOPEC加盟国は、内部分裂でそれぞれの国が勝手に増産に走っている。イラン、イラクが生産再開・増産という見通しも効いており、その結果、需要は景気がさほど良くないので伸び悩む中、生産量は増加の一途。当分、原油価格は高くならないだろう。

これは一見、主婦にとっては良いニュースだが、もし旦那さんが石油関連のお仕事だったりすると、お給料・ボーナスが減ったり、はてはリストラにもなりかねない。石油会社の大型合併の話も出始めている。原油の下げも100ドルが70ドルに下がる程度なら、良い影響のほうが優るが、とはいえ程度の問題で、30ドル台まで暴落すると、企業破たん・株価暴落などの悪影響も大きく出るだろう。主婦と言えど、必ずしも、喜べない状況になるのだ。特に、原油輸出が国家財政を支える中東諸国では、原油販売収入が減ると、ただちに社会保障費も削減ということになる。社会不安・失業問題も悪化して、怖いのは、それがテロを生む土壌になってしまうことだ。

金の価格も原油が下がると影響を受ける。ただ、金と原油の決定的な違いは、金は産業用素材とおカネと言う二面性があるが、原油にはおカネの側面がないこと。景気が悪いときは原油の需要が減る一方、金は資産として、景気が悪く株が下がりそうな時に逆に買われる傾向がある。

更に、生産面では、原油は液体なので、海底油田でも、ドリルで穴をあければ、噴出してくれる。しかし、金鉱石は固体なので、1トンの鉱石を海底に穴を掘り、そこから陸揚げするだけでも、とほうもないコストがかかる。しかも金鉱石1トンから採れる純金量は僅か3グラム! 原油に比べて、金は生産量が容易に増えないのだ。価格も原油は一年で100ドルが40ドルまで暴落するようなことがあるが、金は例えば一年で1000ドルが400ドルまで下がることは考えられない。そんなに下がったら、赤字操業になり、鉱山会社が生産減らすか、閉山してしまうからだ。

今回も原油価格急落の過程で、金は上がったり下がったり。それほど変わらず、原油より遥かに安定的に推移している。

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○著者プロフィール

●豊島逸夫
豊島逸夫事務所(2011年10月3日設立)代表。2011年9月末までワールド ゴールド カウンシル(WGC)日本代表を務めた。1948年東京生まれ。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。 三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラーとなる。豊富な相場体験をもとに金の第一人者として素人にも分かりやすく独立系の立場からポジショントーク無しで金市場に限らず国際金融、マクロ経済動向についても説く。またツイッターでも情報発信している。
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(豊島逸夫事務所)