全面禁煙の病院は約5割…どうすれば受動喫煙を防げるのか?

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今月2日、厚生労働省の調査において、国内にある8493の病院(ベッド数20床以上)のうち、屋外を含む敷地内を全面禁煙にしている病院は約5割(51%)にとどまっていることが判明しました。また、屋外に喫煙所があり、建物内のみ全面禁煙という病院は約3割(32.5%)とのこと。国内では2020年の東京オリンピックを視野に、議員連盟などから公共の場所を全面禁煙にする条例を求める声があがっている状況ですが、今回の調査結果からは、医療機関という国民の健康に大きく関与する施設においてさえ「全面禁煙化」が難しいという実情が伺えます。

受動喫煙はなぜ防止の必要があるのか


日本で禁煙条例が求められている理由としては、1988年に国際オリンピック委員会が禁煙方針を採択したことから「タバコのないオリンピック」が推進され、近年のオリンピックが、会場だけでなく、レストランなどの屋内施設も全面禁煙という国や都市で開催されていることがあげられます。また、なぜオリンピックが「タバコの煙を排除」しようとしているかといえば、これは選手をはじめ開催地を訪れる人々が、「受動喫煙」による健康被害を受けるのを防ぐためです。

平成15年に施行された健康増進法において、受動喫煙とは「室内またはこれに準ずる環境において他人のたばこの煙を吸わされる」ことと定義されています。また、国立がん研究センターの研究では、受動喫煙による肺がんと虚血性心疾患によって年間6800人もの人が亡くなっていることが報告されており、こうした健康被害と受動喫煙の関係が解明されてきたことが、ここ数年で世界的に禁煙ムードが高まっている理由のひとつといえます。

ちなみに、タバコの煙には約4000種類の化学物質、約200種類の有害物質、60種類以上の発がん物質が含まれるといわれていますが、喫煙者がタバコから吸いこむ煙だけではなく、タバコから立ちのぼる煙や、タバコを吸った人が吐き出す煙にも、こうした物質が含まれていることが問題なのです。

入院してもタバコを吸いたくなる理由とは?


一方、大きな病院などに行くと、入院中の患者さんが、喫煙所でパジャマ姿のままスパスパとタバコを吸っている光景をよく見かけます。愛煙家にとっては、不自由な入院生活の中での数少ない気晴らしなのでしょうが、病気やケガで入院していてもタバコが手放せない人が多いという事実は、タバコの依存性の強さをあらわしているともいえます。

愛煙家の多くは「タバコを吸うことがストレスの解消になる」といいますが、そのほとんどはニコチン切れによるイライラなどの離脱症状が、タバコを吸うことによって一時的に緩和されているだけであり、ストレスが根本から解消されているわけではありません。これは、一日に吸うタバコの本数が多く、喫煙が習慣になっている人ほど、タバコを吸う→ニコチンが切れてイライラする→再びタバコを吸う、という循環を自ら作り出していることになるともいえるでしょう。

「吸う自由」と「吸わない権利」を両立させるためには、喫煙者には他人の健康被害を気にせずに思う存分タバコが吸える「喫煙者専用」のお店やスペースを、それ以外の人には受動喫煙がきちんと防止される環境を提供することが、国や行政、企業などには求められることになります。

しかし、世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組条約」において、受動喫煙を防止するためには「喫煙室や空気清浄機による対策は不適切」とされていることを考えると、子どもや高齢者、病人など、受動喫煙で健康被害を受ける可能性の高い人の多い病院や学校などの施設では、建物内だけでも全面禁煙にする以外に方法はないのかもしれません。

<参考>

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151202-00000090-fnn-soci
(全面禁煙の病院、全体の5割にとどまる フジテレビ)

参考資料
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/pdf/factsheet02.pdf
(受動喫煙防止対策 厚生労働省)
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-005.html
(受動喫煙 厚生労働省)
http://smokefree-giren.net/concept
(東京オリンピック・パラリンピックに向けて受動喫煙防止法を実現する議員連盟)
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-005.html
(たばことストレス 厚生労働省)