『すべてがFになる』の印税6100万円。小説家って実際どのくらい儲かるのか

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自分の書いた小説が出版されて、文庫化されて、テレビドラマにもなったら大儲け! ……なんて妄想をしたことのある人は多いと思う。では実際にどのくらいの金額が「儲かる」のだろうか。

『作家の収支』では2014年にドラマ化され、現在アニメ放映中の『すべてがFになる』の著者である森博嗣がその金額を具体的に記している。


『すべてがFになる』の印税は6,100万


まずは印税だ。『すべてがFになる』は1996年に出版され、19年間かけてノベルス版と文庫版あわせて78万部になった。印税は6100万円である(電子書籍版の印税を除く)。

作家デビューの1996年から2014年まで、すべての書籍の印税の総額は12億円を超える(電子書籍版の印税を除く、電子書籍の印税著者が面倒で集計していないとのこと) 。本書では折れ線グラフで年ごとの収入の推移が語られている。

パチンコ台に使われると500万


これだけでもすごいのだが、小説がヒットすると周辺に様々な権利が発生してくる。テレビドラマ『すべてがFになる』の放映料は500万円。1時間につき50万円程度と時間で相場が決まっているそうだ。

押井守監督で劇場アニメ化された『スカイクロラ』にパチンコ台制作の話があった、なんてことも書いてある。原作者に払われるロイヤリティとして500万円を提示されたものの、実現はしていない。

原稿料だけで1,000万の案件も


広告の世界に行くとさらに条件はよくなってくる。日本コカ・コーラがスポンサーになって書かれた小説『カクレカラクリ』は原稿料だけで1,000万円。これは出版の印税とは別で、印税は820万円。

直筆の文章をテレビCMで500万円で使うオファーが来たこともあるという(実現はしていない)。

文庫の解説は10万


他にも細かい雑収入が付随してくる。文庫の解説文は文字数を問わず10万円が相場。小説の帯の短いキャッチコピーは2〜3万円。

現代文の試験に文章が使わるのはタダだが、その試験を問題集にすると、売上げに応じて印税が支払われる。現代文の教科書に使われるのも、もちろん印税が入ってくる。教科書に載ると、教師が使う指導教本にも文章が載ることになり、こちらからも印税が入る。

海外に取材旅行にも連れて行ってもらえる。取材の成果がその後の小説に反映されなくても別にいいらしい。オリジナルのぬいぐるみも作ってもらえる。

読み進めるごと著作権のすごさを感じる。ちなみに後半には作家の「支出」について書かれているが、ハッキリいってほとんど無い。

経営者としての森博嗣


『すべてがFになる』を観て、主人公の犀川創平≒森博嗣のように考えていると、きっと驚くことになる。森博嗣はデビュー当時からセルフプロモーションを精力的に行っている。

デビュー作『すべてがFになる』(講談社ノベルス)の見返しのところには、次回作のタイトルがすでに4つ予告されていた。『封印再度 Who Inside』とかカッコよくて、ぼくは発売までの期間ずっとそそられていた。もちろんその間に刊行されていたやつもきちんと行儀よく買いそろえていた。推理小説としてはすべて別の話なのだが、主人公の恋愛がちょっとずつ進んでいくのだから読まないわけにはいかない。「多作であることで自分の著作が目に触れている期間を伸ばす」というのは著者の作戦なのだが、ぼくはその作戦にちゃんとひっかっている。

ウェブ日記が毎日更新されていた時期もある。新作の進捗状況がパーセントで明記されていた。「電子メールを送ると作家本人が返信を必ずくれる」なんてこともやっていた。今でこそSNSを使って似たようなことをみんなしているが、ものすごく先を行っている。

出版社に対して、印税や原稿料の交渉もガッチリやっている。その一方で印税ゼロで本を出版するなど、実験的なこともやっている。

最近の森博嗣は「もうお金はあるので、本当に自分の書きたい小説を書くようにしている」といっている。その結果ぼくはあまり小説を読まなくなったが、こういうエッセイはちょくちょく買って「今の森博嗣は何を考えているのかな」なんて様子をうかがってしまっている。

なんだかんだで今まで30冊以上は森博嗣の本を読んでいる。作家の巨大な印税収入にぼくも貢献しているのだ。悔しいような、うれしいような。

『作家の収支』は新書版が発売されており、kindle版は12/18から配信予定。
(斎藤充博)