コンドームだけでは梅毒の予防は不完全(shutterstock.com)

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 突然だが、「梅毒」に対して、どんなイメージをお持ちだろうか?

 かつては、不治の病として恐れられ、売春婦を媒介に大流行し、シューベルト、ベートーベン、ニーチェなど、多くの歴史上の人物も苦しんだ。ペニシリンの大発見で過去の病気となり、「今はもう梅毒は怖くないし、感染する人も少ないのでは?」という認識の人も多いだろう。

 ところが近年、日本では梅毒の流行が加速している。

女性の梅毒は5年で5倍に急増!

 日本の梅毒患者は、1967年の1万1000人をピークに減少を続け、2001〜2005年までは500人前後で推移していた。だが、2013年に再び1000人台に増加。さらに今年に入ってから患者数は2100人(11月1日まで)に達し、1999年4月に感染症法による届け出が義務づけられて以来、初めて2000人を超えた。2013年からわずか2年で倍増する勢いにある。

 性感染症の専門家らによると、最近は特徴的なのが女性患者が増えている点だという。女性感染者は、2010年からの5年間で5倍に増えた。患者全体におけるその割合は、2013年は19%、2014年は23%。今年は28%を超えて、実に3割に迫っている。今年の女性患者の76%は15〜35歳。なかでも20〜24歳の女性は、前年の同期と比べて2.7倍という急増ぶりだ。

 感染ルートを見ると、2014年は「男性同士の性的接触」によるものが増えたが、2015年は男女ともに「異性間の性的接触」による感染率が上昇している。

 これまでは梅毒患者の8割は男性で、女性患者は男性との性行為によって感染したケースがほとんどだった。ところがここ数年は、女性との性的接触によって男性が感染するケースが増えている。男性から女性へ、そして女性から男性へという悪循環に陥っているようなのだ。

潜伏期の隠れた患者がいる可能性も

 梅毒はトレポネーマという病原菌によって引き起こされる性病だ。感染すると、約3週間後には感染個所に痛みのないしこりが現れ、約3カ月後には全身にピンクのブツブツが発生する。それらが自然に治まると、その後は潜伏期に入る。

 治療をせずに放置してしまうと、3年後ぐらいから全身の臓器に腫瘍が現れ、心臓、血管、神経、脳などに障害が出て、最悪の場合は死に至ることがある。妊娠している人が梅毒に感染した場合、死産や障害の原因になることもある。

 国立感染症研究所によると、感染後にしこりやブツブツが出る症状を見過ごしてしまい、治療をしないまま潜伏期に入ってしまった患者も多いと見ている。

 そうしたことから、実際の新規梅毒感染者は統計よりもずっと多く、年間に少なくとも3000人は超えるのではと予想する専門家もいる。梅毒は、早期発見で治療を開始すれば1カ月以内に完治するケースがほとんど。しかし、放置して治療が遅れると、悪化して長期化する恐れが高い。

 厚生労働省では最近の女性患者急増を受けて、急遽「女子の梅毒、増加中!」というリーフレットを作成。「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」などと呼びかけている。

梅毒はコンドームだけでは防げない

 ところが、梅毒は皮膚や粘膜の接触により感染するため、コンドームだけでは100%予防できない。オーラルセックスやアナルセックスはむろん、ディープキスだけでも感染する可能性がある。何しろ1回あたりの性行為による感染確率は15〜30%と、非常に高いから厄介だ。

 ここ数年の患者増の原因は、まだ明らかにされてはいない。しかし「梅毒は過去の病気」と軽視されるあまり、感染経路や症状に関する知識が一般に浸透していないとしたら問題だ。

 不特定多数の相手との性交渉は避け、コンドームはきちんと使用すること。また思い当たる症状があれば、すぐに検査を受けること。流行を拡大させないためには、それぞれが正しい知識をもって自衛していくしかないだろう。
(文=編集部)