経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」。その分析力は大新聞の経済記者がネタ元にしたり、プロの金融マンたちも愛読していることで実証済み。今回は当局が「何事もなかったように」終結させようとしていた「東芝不適切会計事件」に新たな展開。これでも当局は「不適切」で終わらせるのか!?

聖域の原子力発電事業がボロボロだった!

 東芝に新たな巨額「隠し」損失の可能性が急浮上してきました。

 東芝の米原子力子会社ウェスティングハウス(以下、WH社)を巡る1600億円の巨額減損が連結決算に意識的に反映されていなかった可能性を「日経ビジネス」が突き止め、11月16日号「時事深層 スクープ 東芝、米原発赤字も隠蔽」に掲載しました。

 東芝は各部門の「不適切会計」で、過去7年間総額2248億円(純損益では1552億円)もの決算修正に追い込まれ、2015年4〜9月決算では新たにPOS事業の巨額減損で905億円もの営業赤字となりました。

 それでも「WH社の事業は好調」と説明してきたのですが、実際には単体決算で2012年度に9億2600万ドル、2013年度に4億ドルと、邦貨換算合計で1600億円もの減損処理を行っていたのです。

 にもかかわらず東芝は「当社の連結決算には影響がなく会計ルール上も問題がない」と開示すらしていませんでした。

言い逃れのできない「減損処理隠し」

 東芝は2006年に5400億円を投じてWH社を買収し、その後の6600億円まで追加出資しています。うち4000億円以上が純資産価格を上回る「のれん」です。WH社の業績が悪化すれば「のれん」の減損は避けられません。

 実はこういった会計処理は珍しいことではなく、例えばソフトバンクも巨額赤字決算が続くスプリントの減損処理を全く行っていません。業績回復の見込みがあるとしているからです。

 しかし、東芝の場合、あれほど「不適切会計」問題で騒がれ、外部の第三者委員会が徹底的に調査した(ことになっていた)のです。その上で、過去7年間の決算修正と歴代3社長らの引責辞任、社外取締役を中心としたコンプライアンス重視体制への移行が完了したところでした。

 そこにまた、こうした問題が隠されていたとなると、ただでは済まされません。これは単なる見落としでも、会計上の考え方の違いでもありません。

第三者委員会、東証、SESCの面目丸潰れ

 東芝は歴代経団連会長や日本郵政社長らを輩出した名門企業であること、銀行借り入れなど有利子負債が1兆9000億円近くあり毀損させるわけにはいかないこと、国策事業である原子力事業で日本最大・世界有数企業であることなどから、東証も監理ポストにすら割り当てず、早々に「何事もなかったように終結」させる方向でした。

 その「大義名分」の一つであった原子力事業がボロボロだったとなると、事情は変わってきます。この事実を「徹底的に帳簿をひっくり返して調べた」という第三者委員会や役員責任調査委員会が発見できなかったはずがありません。

 それを裏付けるかのように、またも日経ビジネスが11月23日号で、第三者委員会が調査報告書で原子力事業を調査対象に加えるか否かについて「明らかな謀議があった」とする記事を掲載するようです。

東芝経営陣と第三者委員会は案の定ズブズブだった!

 内容を詳しく引用することは控えますが、東芝と関係各所にとって「最も出てほしくなかったこと」は次の5つに要約できます。

(1)第三者委員会の主要メンバーだった松井秀樹氏が、東芝側の弁護士に「原子力事業を調査対象に加えるか否かは東芝が判断するべき」であり、第三者委員会として「東芝の意向を確認したい」としていること。

(2)「原子力事業を調査対象に加えるか否かは東芝が判断するべき」とは松井委員が共同代表を務める丸の内総合法律事務所の意見であること。また丸の内総合法律事務所は第三者委員会設置の2日前に東芝連結子会社の顧問契約を解除していること。

(3)松井委員の「東芝の意向を確認したい」という申し出を受けた東芝の経営陣(当時)が「WH社の減損については第三者委員会に委嘱する可能性は全くない」と確認していること(その際のメールのやりとりを日経ビジネスが手に入れた模様)。

(4)その時点で東芝の経営陣(当時)は「第三者委員会は調査範囲外については本格調査を行っていない」との記載が加えられる可能性も認識しており、事実7月20日に(東芝に)提出された第三者委員会の調査報告書にはその旨の記載があること。

(5)一連の処分で社外取締役中心のコンプライアンス重視体制に生まれ変わったはずの東芝経営陣のもとで発表された2015年4〜9月期連結決算発表でも、WH社の減損については隠されたままだったこと。

不都合な事実のどこがもっともヤバいのか

 (1)と(2)については、そもそも「第三者委員会」とは会社(東芝)が設置するものであり、委員の選定や調査対象の委嘱も会社が決めるものです。委員は「その時点」で会社と利害関係がなければよく、第三者委員会がその調査対象について会社にお伺いを立てても問題はありません。

 しかし(3)と(4)については、東芝の経営陣(当時)にWH社の減損を隠す明確な意図があり、しかもバレる可能性についても認識していたことを示す重大な証拠です。この部分は十分に刑事事件に該当します。

 さらに室町社長(当時は会長)が「損失隠しの意図」を共有していた明確な証拠(メール)まで出てきたようです。

 この「損失隠しの意図」が現体制でも継続され(5)の11月7日の決算発表になります。東芝は日経ビジネスの記事が出た翌11月17日に「当社子会社であるWH社に係るのれんの減損について」と題するIRを出し、減損額を開示しましたが、依然として東芝本社の減損は不必要としています。

 これ自体は「会計上の考え方の相違」で済んでも、そこに至るまでに明確な「損失隠しの意図」があったとすれば、2015年4〜9月期決算こそ誤魔化しようのない「悪意をもった粉飾決算」になり刑事事件に該当するはずです。

それでも「名門企業だから刑事事件ではない」か!?

 日経ビジネスの証拠(メール)の入手方法によっては「証拠能力」がなくなりますが、捜査当局が改めて令状をとって入手すれば十分な証拠となるはずです。あくまで捜査当局が「そうすれば」の話ですが。

 第三者委員会や東京証券取引所や証券取引等監視委員会(SESC)らの責任問題まで飛び出してくれば、今度は東芝を「徹底的に悪者」に仕立て上げなければならなくなり、刑事事件化する可能性もなきにしもあらずです。

 しかし当局は予定通り、金融庁による73億円の課徴金処分だけで、何事もなかったように済ませようとするはずです。

 いつも本紙が指摘していることですが、経済事件は悪質な順に事件化するものではなく、事件にすらならないものも多くあります。今回の件も「加藤舛篭飽なので逮捕したが、東芝は名門企業なので刑事事件ではない」のでしょう。

[参考記事]

●ライブドアとどこが違う? 東芝の「不適切会計」
粉飾決算がなぜ「不適切会計」になったのか?


●「K氏銘柄」大物仕手筋・加藤岨瓩相場操縦で逮捕!
実は株価のすっ高値まで買い上げただけ!?