錦織圭が、12月2〜4日に神戸で開催されたインターナショナルプレミアテニスリーグ(以下IPTL)に初参戦した。IPTLは、公式戦にはない男女混合の団体戦で、しかも現役選手と引退した「レジェンド」といわれる名選手が一緒にプレーをするという、昨年から始まった新しいフォーマットだ。

 日本でテニスを披露する機会が少ない錦織は、ジャパン・ウォリアーズの一員として参加し、奈良くるみらチームメイトと笑顔を交えながらプレーした。

「いい時期にエキシビションがあったので、自分にとってもいい練習になりますし、こういったチーム戦の機会はあまりないので、自分自身も楽しめた部分もあった。特にこれだけの選手が一斉に来て、プレーするのはファンの方にもよかったと思いますし、自分自身のモチベーションもまたさらに高くなり、プラスいいテニスもできて、すごく満足な3日間でした」

 錦織が「これだけの選手」と表現し、最も豪華だったのが、歴代のグランドスラムチャンピオンや元世界ナンバーワンなどの肩書を持ち、かつてワールドテニスツアーで大活躍したレジェンド選手たちだ。テニスを極めた彼らが、錦織について次のように語ってくれた。

 ゴラン・イワニセビッチ(44歳・クロアチア)は、左利きの高速サーブで、通算10,183本のサービスエースを放った記録(歴代1位)を持ち、2001年に悲願のウインブルドン優勝を果たした。その経験を活かして、現在は母国の後輩にあたるマリン・チリッチのツアーコーチを務めている。先月末に行なわれたドリームテニス有明では、錦織と一緒にプレーをした。

「(錦織は)才能があり、世界のベストプレーヤーの1人です。その才能を、昨年、そして今年証明してきました。将来、グランドスラムを取る可能性があります。日本だけでなくアジアにとって、大きな存在です」

 マラト・サフィン(35歳・ロシア)は、2000年US(全米)オープンと05年オーストラリアン(全豪)オープンで優勝した元世界ナンバーワン。豪快なパワープレーで、フェデラーを倒したことがある。サフィンは神戸で錦織のプレーを初めて実際に目にした。

「間違いなく素晴らしい才能の持ち主です。ストロークがいいね。特にフォアハンド。コートでは動きが速く、柔軟性もある。(錦織は昨年の)USオープンの決勝を戦っていますが、進化していければ、将来グランドスラムで優勝できるチャンスが訪れるでしょう。まだ若く、向上の余地がある。彼は背が高い選手ではないけど、サーブは改善できると思うし、ボレーも向上できるのではないでしょうか。マイケル・チャンコーチと取り組んで、ゲームも上達している。彼には明るい未来がある」

 カルロス・モヤ(39歳・スペイン)は、1998年のローランギャロスで優勝した元世界ナンバーワン。ジュニア時代のラファエル・ナダルの才能にいち早く気づき、同郷のマヨルカ島で一緒に練習したという慧眼(けいがん)の持ち主だ。

「紛れもなく素晴らしい選手で、彼のテニスを見るのは楽しい。才能があるし、2年連続でトップ10をキープした。まだ若いので、これから数年はトップ10選手でいられるだろうし、昨年はグランドスラム優勝まであと少しだったけど、優勝できるチャンスがあると思う。動きがいいし、武器もある」

 ファブリス・サントロ(43歳・フランス)は、フォアもバックもダブルハンドで打ち、グランドスラムのシングルスには史上最多となる70回出場した。"魔術師"と呼ばれた彼のトリッキーなテクニックは、あのロジャー・フェデラーも一目置いている。

「まず圭は謙虚でスマートで、とてもいいキャラクターです。まだ若いが、素晴らしいキャリアの持ち主です。ハードに練習してロンドンでのATPワールドツアーファイナルズにも出場した。そして、スポーツやテニスを日本にアピールする素晴らしい大使でもありますね。数年後にグランドスラムで優勝できることを願っています」

 4人のレジェンド選手が口をそろえるのは、錦織は才能に恵まれ、そして、近い将来グランドスラムチャンピオンになれる可能性があるということだ。ここまで高評価された日本人プロテニスプレーヤーは過去にいなかっただろう。実績を残してきた彼らの言葉だからこそ、説得力があり価値がある。当然ながらサフィンが語るように、錦織がこの先も向上していかなければならない点があるのも間違いない。

 多くの期待を担う錦織は、12月にチャンコーチのいるカリフォルニアやフロリダのIMGアカデミーで練習をして、2016年シーズンは、1月3日から開幕するATPブリスベン大会から始動する予定だ。来シーズンに向けて決意を新たに語る。

「常にトップ5に入れるような位置になるべくいたいですね。トップ4がまた強くなって、またさらにレベルを上げてきたので、そこに食い込んでいけるように。(ミロシュ・)ラオニッチをはじめ、10位台、20位台の選手も強くなっているので、簡単なことではないでしょうけど、これからもっと大きなタイトルが確実に必要になってくる。大きな自信をつけるためにもマスターズ(1000大会)やグランドスラムで、もっと活躍することが必要になるかなと思う」

 現役時代からユーモアにあふれ、ウィットに富んだコメントをするサフィンが、「まもなくフェデラーが引退するでしょうし、(ノバク・)ジョコビッチも引退したら、圭がナンバーワンになるよ(笑)」と冗談交じりに話した。もちろん、それはリップサービスで、実際にはATPランキング1位のジョコビッチの独走状態を踏まえると、錦織の世界1位をイメージするのは難しい。

 錦織が将来、世界ナンバーワンになれるかどうか、26歳で迎える2016年シーズンでの活躍にかかっているといっても過言ではないだろう。そして、悲願であるグランドスラム初制覇に向けて戦う場面で、レジェンドたちが語った彼の才能が発揮できるかが、問われていくことになる。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi