「アムスラーチャート」ゆがんでいたり、欠けて見えたりしたら要注意。片目ずつチェックしてみよう

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iPS細胞を使った世界初の移植手術が2014年9月に行われ、注目を集めた「加齢黄斑変性」。手術を実施した理化学研究所などのグループは2015年10月2日の会見で、1年後の経過は良好で、患者の視力の悪化が抑えられていると報告した。

放っておくと失明することもある「加齢黄斑変性」とはどんな病気なのか。その最新の治療法は?

日本人に多い「滲出型」は急速に視力低下

加齢黄斑変性とは、目の網膜の中心部にある「黄斑」と呼ばれる部位の機能が低下し、視野の中心部のゆがみや黒ずみ、視力の低下を引き起こす目の病気だ。進行すると失明の危険もある。焦点を合わせた部分が欠けたりゆがんだりするので「見たいものが見えない」状態に陥る。

加齢黄斑変性には網膜のすぐ下にできた新しい血管(新生血管)が黄斑を障害する「滲出(しんしゅつ)型」と、黄斑の組織が加齢とともに萎縮する「萎縮型」の2種類があり、日本人患者の9割は滲出型だ。網膜にできた新生血管は非常にもろく、水分や血液がしみ出しやすい。これらの液体は黄斑の組織にダメージを与えて視覚障害を引き起こす。萎縮型と比べて病状の進行が早く、急激な視力低下を招くため、早期の検査と治療が必要だ。

長い間、加齢黄斑変性には有効な治療法がなかったが、光に反応する薬剤を使って病変部にレーザーを照射することで新生血管を閉塞させる「光線力学的療法」に続き、数年前から新生血管を成長させるVEGFという物質の働きを抑える薬剤を目に注射する「抗VEGF治療法」が開発され、早期発見で病状の進行や視力の低下を抑えることができるようになった。

「見えないのは老眼のせい」が7割

病名の「加齢」という言葉が表すように、加齢黄斑変性は50歳以上、とくに70歳以上の人に多い病気だ。「滲出型」は男性に多く、女性の3倍の頻度でみられるという。1998年には約38万人だった推定患者数は、2007年には69万人へと10年で2倍近くに急増。高齢化により、患者数はその後も増え続けているとみられる。

製薬大手バイエル薬品が2014年7、8月に50〜70代の男女約2000人に対して行った調査では、加齢黄斑変性の認知率は7割以上と高かったものの、症状まで理解している人は3割程度と、緑内障や白内障に比べて低かった。また、2015年6月末から7月初旬に20〜40代で、親や祖父母(50代以上)と同居、または年1回以上顔を合わせている1000人を対象に行った調査によると、加齢黄斑変性の認知率は48.6%で、症状を含めて知っていると回答した人は1割程度だった。また、いずれの年代でも「見えにくいのは年齢または老眼のせい」と思っている人が7割以上で病気を疑う人は少なく、危機感がないことが浮き彫りになった。

加齢黄斑変性の治療には早期発見が鍵となるが、両目とも同時にかかることは少ないため、両目で見ていると気づきにくい。50歳を過ぎたら、日ごろから片目ずつ見え方をチェックすることが大切だ。「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の表を用いれば簡単に自己チェックすることができる。また、目の病気は外見からはわからない。親や祖父母が「字が読みづらい」「料理がしにくい」などとこぼしたり、人とぶつかることが増えたりするなどの変化が見られたら、自己チェックや眼科検査を勧めよう。[監修:市邉義章 神奈川歯科大学附属横浜クリニック眼科教授・診療科長]

(Aging Style)