オリンピックに向けて、いま東京が抱える課題とは──「都市ランキング」から読み解く

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オリンピックを契機に、世界中から人、モノ、金、情報をひきつけて、さらなるビジネスと経済の成長を遂げるべく東京はどう変わっていけばいいのか。森記念財団都市戦略研究所が毎年10月に発表している「世界の都市総合力ランキング」の発表内容のなかから、世界40都市の分野別、アクター別ランキングを考察し、「経営者」「アーティスト」「生活者」という東京の課題を紹介する。(雑誌『WIRED』VOL.20より転載)

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2008年から森記念財団都市戦略研究所が毎年発表している「世界の都市総合力ランキング」(GPCI)。これは世界中から人、モノ、金、情報をひきつける磁力ある都市には、どのような総合力があるのか、6分野70指標で比較・分析するものだ。

2012年のオリンピックを契機にロンドンはそれまで1位だったニューヨークと入れ替わって以降、総合力で首位をキープしている。この強さを支えているのがGPCIの初年度から1位を取り続けている「文化・交流」分野だ。オリンピックのための都市整備はもちろん、市民参加型の大型ダンスフェス「BIG DANCE」や観光名所を舞台にしたエクストリームパフォーマンス「SURPRISES: STREB」のように市民が参加し、都市を舞台に変えるようなアートイヴェントを開催しているロンドンは総合力を大きく伸ばしてきた。

また、オリンピック後にはオリンピックパーク周辺に3,000戸を超えるレジデンスや公園を建設し、かつて荒廃していた地域を質の高い居住地域やビジネスのハブへと生まれ変わらせている。つまり、ロンドンはオリンピックの「レガシー」を効果的に活用し、単にインフラを再利用するのではなく都市にアートとコミュニティを根付かせることで、カルチャーとクリエイティヴィティを成長のカタリストにしているのだ。

一方、東京はどうか。総合力で見ると初年度の08年からずっと4位のままだ。分野別の経済では1位、研究・開発で2位にあるにもかかわらず東京の総合順位を押し下げているのは「文化・交流、交通・アクセスの両分野だ」と森記念財団理事で都市計画を専門とする市川宏雄は説明する。確かに円安が続いて日本への観光客が今後も増えたり、都心の再開発が進み、羽田空港の発着枠が拡大されれば弱点は挽回できそうにも見える。しかし、いくらインフラを整備して観光客を呼び込んだとしても、魅力がなければ都市の活力はいずれ失われてしまう。

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後掲のアクター別ランキングでは経営者やアーティストは東京を8位と低くランク付けしているが、それは人と人とが気軽にビジネスでつながり、あるいはアートの刺激を得られる都市として東京が成熟していないことを示している。世界から人が集まるようなアートイヴェントやビジネスカンファレンスの「場」が東京に数多く生まれ、ビジネスとアートのインターセクションとして東京が世界に発信できること、それがオリンピックに向けた課題となるだろう。

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「世界の都市総合力ランキング」は、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野について、計70の指標を基にして作成されている。

経済

東京は昨年に続き1位の座をキープ。ロンドンは、GDP成長率、法人税率でスコアを上げ、今年は2位となった。北京はGDP、世界のトップ300企業の指標でスコアを伸ばし続けており、3位のニューヨークに肉薄している。

1. 東京
2. ロンドン
3. ニューヨーク
4. 北京
5. 香港
6. シンガポール
7. チューリッヒ
8. ソウル
9. 上海
10. ストックホルム

研究・開発

ニューヨークが突出している。4位のロサンゼルスは、カリフォルニア工科大学など世界有数の教育機関を有し、世界トップ200大学、主要科学技術賞受賞者数、研究者数、研究開発費で高い評価を得ている。

1. ニューヨーク
2. 東京
3. ロンドン
4. ロサンゼルス
5. パリ
6. ソウル
7. ボストン
8. シンガポール
9. サンフランシスコ
10. シカゴ

文化・交流

ロンドンは、すべての指標で高評価を得ており、2位以下の都市を大きく引き離している。東京は、海外からの訪問者数などで大きくスコアを伸ばし、昨年の6位から5位へと順位を上げた(2013年は東京は8位だった)。

1. ロンドン
2. ニューヨーク
3. パリ
4. シンガポール
5. 東京
6. 北京
7. ベルリン
8. シドニー
9. ウィーン
10. ロサンゼルス

交通・アクセス

2位のロンドンの評価が全体的に低下したことでパリが1位に。ただしロンドンは国際線直行便就航都市数と国際線旅客数の2指標では8年連続の首位。東京は微増してはいるが両指標ともロンドンの1/3以下の数値。

1. パリ
2. ロンドン
3. アムステルダム
4. シンガポール
5. 香港
6. フランクフルト
7. 上海
8. ニューヨーク
9. ソウル
10. イスタンブール
11. 東京

環境

1〜5位の欧州各都市はリサイクル率、再生可能エネルギー比率、CO2排出量で高く評価されており環境への意識の高さがうかがえる。東京は13位と全体では評価が低いが、エコロジーの指標では健闘している。

1. ジュネーヴ
2. フランクフルト
3. ストックホルム
4. チューリッヒ
5. ウィーン
6. シンガポール
7. ヴァンクーヴァー
8. ロンドン
9. ベルリン
10. コペンハーゲン
13. 東京

居住

パリは居住コストが相対的に低く、総労働時間の短さが評価されて昨年同様1位となった。経済や文化・交流で上位のロンドン、ニューヨークはそれぞれ19位、23位。東京は生活利便性や飲食店の充実度が高い。

1. パリ
2. ベルリン
3. ヴァンクーヴァー
4. ウィーン
5. バルセロナ
6. ジュネーヴ
7. トロント
8. チューリッヒ
9. アムステルダム
10. マドリード
15. 東京

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現代の都市活動をリードする5種の人材(経営者、研究者、アーティスト、観光客、生活者)それぞれの異なる視点から、都市の総合力を比較・分析している。

研究者

ニューヨークは「質の高い研究機関・研究者・指導者の存在」が抜きん出ている。一方、東京はその要素は弱いものの、「研究機関や研究者の集積」と「自らの研究分野における就業機会」に秀でて3位となっている。

1. ニューヨーク
2. ロンドン
3. 東京
4. パリ
5. ロサンゼルス
6. サンフランシスコ
7. ボストン
8. シンガポール
9. シカゴ
10. ソウル

観光客

1〜3位と比べると、東京は「観光の対象の存在」「一定水準以上の宿泊施設」「目的地までの移動の利便性」で力不足。シンガポールは昨年9位だったが宿泊施設と観光対象の存在で大きくランクアップした。

1. ロンドン
2. パリ
3. ニューヨーク
4. イスタンブール
5. シンガポール
6. 東京
7. 北京
8. 上海
9. バンコク
10. ベルリン

経営者

3位までは昨年と同じ順位。ニューヨーク、パリ、東京の3都市は「ビジネスの成長性」「ビジネスの容易性」に難がある。東京は8位だが「企業や商取引等の一定以上の集積」では、ほかを大きく引き離している。

1. ロンドン
2. シンガポール
3. 香港
4. ニューヨーク
5. 北京
6. パリ
7. 上海
8. 東京
9. ソウル
10. クアラルンプール

アーティスト

北京が「アーティストの集積」で躍進し、10位から6位にランクアップした。パリ、ニューヨーク、ロンドンが上位を占め、東京は「文化的刺激」「アーティストの集積」「マーケットの存在」で水をあけられている。

1. パリ
2. ニューヨーク
3. ロンドン
4. ベルリン
5. ウィーン
6. 北京
7. ロサンゼルス
8. 東京
9. アムステルダム
10. バルセロナ

生活者

パリはどの要素も強いが、特に「医療水準」が極めて高い。また、上位の都市の特徴としては「就業環境」と「医療水準」に強いが、東京は前者は優れているものの、それ以外のスコアが伸ばせず前年の5位から8位に下がった。

1. パリ
2. ロンドン
3. ニューヨーク
4. チューリッヒ
5. フランクフルト
6. ベルリン
7. ウィーン
8. 東京
9. ストックホルム
10. アムステルダム

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