■オフィシャル誌編集長のミラン便り2015〜2016(14)

 先週半ばのコッパ・イタリア戦では90分と延長30分をプレーした本田圭佑だったが、今節はまたベンチに戻ってしまった。途中交代もなく、最後までベンチのままだった。

 一方ミランは、コッパ・イタリアではセリエBのクロトーネに辛勝したものの、リーグ戦では現在最下位から2番目のカルピと引き分け、順位を上げるチャンスをまたも逃してしまった。本田にとってもミランにとっても厳しい季節は続いている。

 本田は後半の大部分をウォームアップに費やしていたが、結局使われることはなく、巷ではまたもや本田のミラン残留に疑問を投げかける声が大きくなってきている。この日に限らず最近は出番が非常に少なくなっているし、本田を欲しがるチームは少なくないからだ。

 特にプレミアのいくつかのチームが本田に興味を示しているのは有名な話で、本田のイングランド行きもまことしやかに囁かれている。本田の未来がどうなるかは、彼自身とチームだけしか知らない。今のところのコメントでは、両者とも1月の移籍を否定し、契約期限を尊重すると言っている。しかしサッカーの世界では、こうした発言は簡単に覆されるものだ。数週間後にはまったく違うものになっている可能性も大いにある。

 しかし同時に、反対の見方をする声も聞かれるのだ。ここまでミランがなかなか得点できなかったのを見て、ミハイロビッチはルイス・アドリアーノ、バッカ、ニアングからなる攻撃陣により重きを置くようになった。しかしあまり攻撃ばかりに偏ってもならないので、うまくバランスを保つために試合の最後に本田を使っているという意見だ。つまり出場時間は短いものの本田は重要な役割を果たしていて、手放すことはないというのである。

 カルピ戦でミランが目指していた結果はただひとつ、勝利だった。ミランにとっては順位を上げるまたとないチャンスだったし、首位だったナポリが下位のボローニャに敗れるというハプニングで、多くのチームにチャンピオンズリーグ圏内入りのチャンスが訪れたからだ。しかし結果は0−0の引き分け。試合後のミハイロビッチのコメントは明確で直接的だった。

「我々はあらゆる方法で勝利をモノにしようとした。しかし結果的には2ポイントをむざむざ捨てることとなってしまった。勝たなければいけない試合で勝つことができなかった。しかし今は次の試合に向けて集中すべきだ。そうでなければもっとひどいことになる。私は怒ってはいない。ただ残念なだけだ。ミランには勝つために必要な悪辣さ、何が何でも勝つという気持ちが欠けていた」

 チーム全体のモチベーションの他にも、この試合では攻撃に問題があったようだ。ニアングはケガから復帰後、またたく間に重要なポストを勝ち取った。ルイス・アドリアーノもピッチに入ればチームに活気を与え、敵を危険に陥れる。しかしもう一人のストライカーの活躍が見られない。そう、この夏最も高い金額を払ってミランが手に入れたコロンビア人のカルロス・バッカだ。

 11月1日のラツィオ戦を最後に、彼のゴールは1ヶ月以上ない。このことはミランの不調と直結している。ラツィオ戦以降、ミランは4試合でたった勝ち点5しかあげていない。

 バッカはカルピ戦でも調子が悪く、90分間でたった28回しかボールを触らなかった。彼よりもGKのドンナルンマの方が35回とボールタッチの回数が多かったぐらいだ。つまりバッカはゴールができず、プレーにも参加できないストライカーと言わざるを得ない。

 しかし彼が活躍できないのはチーム全体の責任でもある。どんな優秀なストライカーでも、チームがそれを支えてくれなければゴールはできない。ストライカーがボールを持てば必ずゴールできるような、そんなシーズンもある。それはオフェンス全体がいい動きができている時だ。データは今のミランが危険な状態にあることを示している。ここまでの15試合中、ミランは7試合で無得点である。これは今シーズンのセリエAの中でも最低の数字だ。

 この夏のもう一人の重要な補強だったDFのアレッシオ・ロマニョーリはいい仕事を見せていて、かなり壊滅的だった守備の問題は解決した。ただ、サッカーはゴールしなければ勝つことのできないスポーツだ。今は攻撃陣をもっとうまく機能させることが最優先事項である。そのためには中盤からのプッシュが必要だが、この夏2000万ユーロ(約27億円)で獲得したベルトラッチはケガが多く、なかなか使うことができない。これもミランの不調の要因の一つである。

 ミランの次の対戦相手はヴェローナだ。現在最下位のチームであり、今度こそ順位を上げるチャンスだ。何がなんでもこのチャンスを逃してはならない。

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari  
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko