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東京大学(東大)は12月9日、溶媒として水を用いてあえて“溶けない”状態を作り出すことにより、触媒的不斉合成が円滑かつ高立体選択的に進行することを発見したと発表した。

同成果は、同大学大学院 理学系研究科 小林修 教授らの研究グループによるもので、12月8日付けの米科学誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報版に掲載された。

同研究グループは今回、水に溶けないキラル銅触媒を開発し、同触媒と脂溶性の基質を水中で攪拌することで、高い選択性を得る触媒的不斉合成を成功させた。従来、化学反応は、反応基質や触媒を溶解して行うのが常識とされており、多くの有機化学反応においては、反応基質を溶かすために有機溶媒が用いられてきたが、今回の研究では、溶媒として水ではなく有機溶媒を用いると反応は全く進行せず、アルコール中では反応が若干進行したものの立体選択性は発現しなかった。また溶媒を用いない条件でも反応の進行は見られなかった。

また、水-テトラヒドロフラン混合溶媒系を用いて水の量がどのように反応に影響するかを調べたところ、溶けている反応では立体選択性がほとんど発現していないのに対し、触媒や基質の不溶性が高まるにつれて鏡像異性体過剰率の増加傾向が確認された。

この触媒系はすでに報告されている触媒と比べて基質の適用範囲が広く、またグラムスケールでも問題なく進行する。反応後は遠心分離操作のみで生成物の単離と触媒の回収を達成することができ、触媒の再使用も可能であるという。

同大学によると、なぜこのような現象が起こるかについては不明であり、今後は詳細な反応機構の解明が必要であるとしている。