10年で9割が廃業 飲食ビジネスが難しいワケ
 「10年生き残るのは1割」といわれ、競争と淘汰が激しい飲食業界。
 しかし、いつかは自分の店を持ちたいと思う人、すでに店を持っていて、もっと成功させたいと夢見る人は多いだろう。
 多くの起業と同様、飲食業も事業のカギを握るのは「資金繰り」だ。ただ、事業を育てていくための資金繰りにはそれ相応の知識と戦略が必要となるのは言うまでもない。では、飲食業で成功するための資金繰りとはどのようなものか。
 今回は『1店舗から多店舗展開飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト/刊)の著者で公認会計士・税理士の廣瀬好伸さんにお話を聞いた。

――『1店舗から多店舗展開飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』についてお話をうかがえればと思います。私の周りにも「いずれは飲食店をやりたい」という人がいますが、単なる起業ではなく「飲食店をやりたい」という人がこれだけ多くいる理由をどのようにお考えですか?

廣瀬:飲食業界はそもそもお店の数が多いし、産業分類でいっても働く人が多いんです。その中には独立願望がある人もたくさんいるということでしょう。
また、飲み食いは誰にとっても身近なものだということもあるでしょうね。20歳以上で居酒屋に行ったことがない人はほとんどいないはずで、そういった身近なところが「俺にもできるかも」と思わせるのかもしれません。

――でも、身近だからといって簡単なわけではありませんよね。

廣瀬:そうですね。開業1年以内に3割から4割が潰れて、10年生き残るのは1割という統計があるくらい、廃業率が高いんです。
人はたくさん入ってきますし、独立したいと考えている人も多いのですが、自分の店を持っても軌道に乗らなければ1年以内に潰れてしまう難しいビジネスだという認識は薄いように思いますね。

――大半の飲食店が生き残れずに潰れてしまう理由としてまっさきにくるのは「資金繰りの悪化」です。しかし、独立起業を考えるくらいですから、資金繰りについてはあらかじめ考え、計画していたはずです。失敗してしまった飲食店経営者には何が足りなかったのでしょうか。

廣瀬:ひとことで言ってしまえば、計画性が足りなかったと言わざるをえません。
飲食業のビジネスモデルは「ヒト・モノ・カネ」が全て必要なので、そもそも難しいんですよ。初期投資でかなりのお金がかかりますし、人員も必要です。
まずお金がないと始まらないわけですが、そのお金を自己資金だけでまかなえる人は少数で、ほとんどの人はどこかから借りるしかない。ただ、たとえば開店資金に3000万円必要で、3000万円満額借りれたとしても、1年で返済しないといけないという条件だったとしたらまず返済できないでしょう。じゃあどういう条件なら返済できるのか。5年なのか7年なのか。もちろんこれは長ければ長いほどいいわけです。
今のは極端な例ですが、融資を受けることが「目的」になってしまっていて、それをどういうプランで返していくのかということがあまり考えられていない人が多いです。また、事業を始めてみると、当初の計画通りに物事が進まないことの方が多いものです。その場合でも融資を返済していけるのか、というところまで突き詰めて考えておくべきなのですが、そこまでやっている人も多くありません。

――今おっしゃったように、開業するにあたって融資は避けて通れないものですが、希望通りの額の融資を受けられる人もいればそうでない人もいます。この違いはどこで生まれるのでしょうか。

廣瀬:開業をする時に融資を受けられるところはほとんど決まっていて、基本的には日本政策金融公庫からしか借りられないと考えていいのですが、そこの条件として「希望融資額の10分の1は自己資金を用意してくださいね」というものがあります。1000万円必要であれば100万円は自己資金を持っていないといけない。
これを知らないと希望する額を借りられずに開業できなかったり、計画が遅れてしまったりということが起こります。担保があるとか強力な保証人がいるなら別ですが、ほとんどの人はそうではないでしょう。
「事前準備としてどのくらい貯金してきたか」というのは融資する側が開業を目指す人の信用度を評価する一つの尺度だということはわかっておくべきです。

――開業時に希望通りの融資を受けられる人の割合というのはどのくらいなのでしょうか。

廣瀬:半々くらいだと思います。ただ、僕のところに相談に来られる方は、比較的きちんと計画している方が多いので、一般的な割合はもっと低いと思います。

――新しい飲食店が軌道に乗るまでにどれくらいの期間が必要なのでしょうか。このあたりは計画時に甘く見積もられがちな気がします。

廣瀬:日本政策金融公庫の統計によると、軌道に乗るまでに約半年かかるというケースが一番多いようです。
ただ、「軌道に乗る」という表現は曖昧ですよね。継続的に「黒字」を出せるようになったら「軌道に乗った」と判断しがちなのですが、店舗の利益が黒字になることと収支が黒字になることは違います。
店舗の利益が100万円あっても、開業時に受けた融資の返済が150万あるなら、収支は赤字です。これが継続的に黒字になって初めて「軌道に乗った」と判断できるのですが、大方の人は「100万円利益が出ているからいいか」となってしまい、知らぬ間にお金がどんどんなくなって資金繰りが厳しくなってしまう。「何をもって“軌道に乗った”とするか」についてはとかく甘く見積もられがちです。(後編に続く)
(新刊JP編集部)