明大が変わった。伝統のスクラムのこだわりは引き継ぎながらも、日本代表のごとく、ボールを大きく動かしていく。新たな『メイジウェイ(明治流)』。持ち味を出しての早明戦勝利に明大の丹羽政彦監督が笑う。

「練習もそうですけど、明治の趣をすべて、変えました。FW偏重型をやめた。メイジのDNAとして屋台骨(スクラム)は残して、FW、BKのトータル的なラグビーをやろうとしています」

 6日の伝統の早明戦。満員2万2千余の観客で埋まった秩父宮ラグビー場のスタンドが大きく揺れたのが、前半終了間際の攻防だった。早大がPGを蹴らず、逆転トライを狙う強硬策を失敗した直後だった。

 才能ある明大BKが躍動した。明大のウイング成田秀平が相手のボールをタックルで弾き落とし、これをセンター梶村祐介が鋭いランでゲインする。ラックを作って左オープンに展開し、さらにタテ突破を交えながら、右、左、そして右に。

 最後は、梶村からロングパスを受けた成田が日本代表のフルバック藤田慶和のタックルを弾き飛ばし、相手ウイングを引きずりながら右隅に飛び込んだ。これで22−12。明大黄金期のバックスの力強さと勢いを彷彿させる攻めだった。

 早大戦初勝利の3年生、成田が顔をくしゃくしゃにする。「いっぱいボールをもらって走ろうという意識が出ていたと思います。日本代表を抜いてのトライ? そりゃ、うれしいですよ。やっぱりウイングはトライを取るのが仕事ですから」

 試合後、控え部員たちから「ヒーロー」「ヒーロー」との喝采を浴びた。そのヒーローが言葉を足す。

「速い球出し、ワイドな展開。今年はバックスでも勝負しようと思っています」

 もちろん明大といえば、重戦車の『前へ』である。看板がスクラム。後半の序盤、早大ボールのスクラムをめくり上げて、コラプシング(スクラムを故意に崩す行為)の反則をもらった。スクラムの核、フッカーの中村駿太主将はスクラムを組む前、「猛プッシュ、いくぞ!」と声をかけたそうだ。

「スクラムが自分たちの強みであり、相手も自信を持っているところだった。そこでしっかり勝負をしたかった。あれでチーム全体が盛り上がったかなと思います」

 このPKのラインアウトから、明大は効果的なトライを加えた。さらに、その成長ぶりが見えたのが、ラスト10分間の自陣ゴール前のディフェンスだった。相手の再三のモール攻撃にも耐え、反応の速さと確実なタックル、連携でしのぎ切った。

 32−24。明大選手が両こぶしを冬空に突き上げる。すでに5連覇を決めている帝京大と6勝1敗で並んでの関東大学・対抗戦グループの同時優勝を決めた。3季ぶりだ。

 中村主将が胸を張る。「絶対、ここでトライをとられるな。それが"自分たちのプライドだ"と言い続けていました」

 最後まで守ることができたというのは、ハードワーク(努力)の成果である。濃密、かつ過酷な練習があったからだ。ディシプリン(規律)も加わった。中村主将によると、練習で走る量は「昨年の2倍から3倍」という。10月までは1日3度の練習も行なっていた。

 シーズンに入っても、走る量はさほど落ちてはいない。明大はGPSを活用している。中村主将が説明する。

「去年は練習で走っても5000mぐらい。ことしは6000、7000m走っていますから。帝京大戦では、僕は6600m走っていました。今年の練習量は今までの明治には負けません」

 また昨季から専任のストレングス&コンディショニング(S&C)コーチが就いていることで、個々のフィジカルがアップした。この日のブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)の優位さは、動きの精度と体力、フィジカルゆえである。

 実は昨年との大きな違いが、シーズンに入ったら、朝6時半からの早朝練習をやめ、午後練習に変わったことである。中村主将は「(午後は早朝に比べ)体が動くので、プレーの精度が高まっています」と効果を強調するのだった。

 丹羽監督は就任3年目。選手寮に住み込み、私生活から学生を指導し、強い明大復活にかけている。やはり大学スポーツ、規律なきところに勝利はないのである。

 昨季までは、寮生活の規律を守るため、門限や禁煙、「食事中は携帯禁止」などの規則を破ると、丸坊主になるなどの罰を科していたが、今年はあえて罰則をなくした。「自律」「自主性」を高めるためである。

 中村主将の説明。

「規律を守らせるのではなく、自ら守るのです。(試合に)出ているメンバーも、出ていないメンバーも、引退(卒業)するまで一生懸命、明治のラグビーをやり切るのです」

 王者帝京大と比べても、学生の才能では引けをとらない。伝統的に自律と自信があるときの明大は怖いのである。

 明大は一昨年度、昨年度と早明戦に敗れて失速した。昨年度は対抗戦で快勝していた筑波大に大敗し、大学選手権ベスト4への道を断たれた。もう同じ轍(てつ)は踏まない。

 故・北島忠治監督の遺した『北島イズム』が背骨を貫く丹羽監督が、のどかなユーモアを漂わせながら言った。

「今日でまたチームは成長したと思います。失速明治と言われていたことを払拭したい。"今年は全部勝っていけ"と(天国の)北島先生は言われていると思うので。必ず1月2日(準決勝)、ここに戻ってきます」

 今季のスローガンが『リバイブ(復活する)』。"走る重戦車"が1996年度以来、19季ぶりの大学日本一へ突き進む。大学ラグビーファン待望の『明大復活』の兆しがようやく見えてきた。

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu