「海老名市立図書館 HP」より

写真拡大

「あのね、CCCってオバケなんだよ」
「みんな見えない。見たことがない」

 レンタルビデオチェーンTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長は、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/10月31日号)のインタビューで、自社の既成概念にとらわれない新規事業展開をそう表現している。

 同社が運営する公共図書館、通称「ツタヤ図書館」についても、いまだにその実態が一般市民には見えてこない。多くの人に見えているのは、公私混同のビジネスモデルだ。

 すなわち、居心地のいいオシャレな「公」の図書館で客寄せをし、その客が「私」の書店でお金を落とす。しかも、その客の行動データは、図書館の貸し出しにも公式採用(利用者が希望した場合)されたTカードによって、もれなく収集する(ただし図書館の貸し出しデータについては、返却後破棄されることになっている)。

 公共図書館の部門においては、開業時に改装費用を一部負担(武雄市の場合は総額7.5億円のうち3億円)するものの、公費によって運営する代行業のため、大きな赤字に陥るリスクはない。税金で商業施設レベルのハコモノをつくってもらい、「無料貸本屋」に客は殺到し、その周辺で儲けられるという皮算用だ。

 ツタヤ図書館の収益構造の秘密を知るうえで非常に興味深い資料が9月、ある市民の情報開示請求によって公開された。海老名市長からCCCに対して交付された海老名市立中央図書館建物の「使用許可書」である。

 それによれば、使用許可面積は541.67平米で、使用許可箇所は書籍販売及び喫茶の営業のために使用。つまり、中央図書館併設の蔦谷書店とスターバックスへの賃借許可といえるのだが、驚くのは賃料の安さだ。

「1平米当たり6458円」とされており、単純計算で年額約350万円。月にすればたった29万円だ。同館周辺の民間ビルの賃料相場から換算すると、この広さのテナントであれば、月500万円、年額6000万円は下らないとの試算もある(『疑惑の図書館建物使用許可・ナムラーのブログ』)。

 この試算に従えば、この賃料は世間相場の17分の1ということになる。使用許可書には、そのほかの費用負担の規定もあるため、実際にはもう少し出費は膨らむだろう。いずれにしろ、公共図書館併設という好条件で労せず集客できるうえ、破格の賃料で書店を経営できる“おいしい”ビジネスは、これまで誰も見たことがないオバケそのものである。

 増田社長は武雄市図書館に関して、「今は行政の方があちこちから毎日見学にいらしていて、『うちでもやってくれ』『見に来てくれ』と行列をつくっている状態だ。僕らがやるとコストが下がるというのもある。すべてセルフPOSだし、実際には本のレンタル屋だ。要するに『図書館なんてものはない』。名前は図書館だが、本のレンタル屋だ」発言している。つまり、公共図書館もあくまでレンタル業と同じで、ビジネス利用の一手段として取り込もうという狙いが透けて見える。

 それにしても、CCCに関する疑惑の多くは、マスコミ報道ではなく、ツタヤ図書館に強い違和感を抱いた一般市民らが行った情報開示請求によって表面化したものばかりだ。

 彼らの粘り強い追及によって、ツタヤ図書館の正体が徐々に暴かれているが、世間の厳しい批判すらも成長のための栄養にしているかのように、CCCのオバケは増殖力を強化している。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)