ところで、前述したようにASOは、最悪の場合、脚の血行不良から壊死を起こして切断を余儀なくされる。近年、そんな厄介な病気の治療に、画期的なステント(詰まった血管をトンネルのように内張りして、血流を確保する医療機器)が承認されて注目されている。それが「Zilver PTX薬剤溶出型未消血管用ステント」だ。
 今までと何が違うのか。東京慈恵会医科大学血管外科の外来担当医に聞いた。
 「日本で医療機器が承認されるのは、欧米に比べて10〜20年遅れるのが一般的ですが、これは欧米に先駆けて承認されました。さらに、動きが激しい太ももに対処する初めてのステントで、耐久性と柔軟性に優れています。また、体に悪影響があるポリマーを使用していません」

 このステントが承認される以前は、血管内治療を実施する際、バルーンで詰まった部分を広げるか、再狭窄リスクが高いベアメタルという素材のステントを使っていた。
 だが、バルーンは3層からなる動脈壁のうち、最も内側の壁が裂けて動脈解離を起こし、手術が不成功に終わることが多かった。しかも、血管が再び詰まりやすいという難点があった。ベアメタルは、素材そのものに再狭窄を起こすデメリットがあり、その割合は約27.1%にも及んでいた。
 「このステントなら、手術が失敗したり、やりにくかったりする人でも再治療がしやすい。それが画期的と言われるゆえんです。ステントの内側に再狭窄を防ぐための薬剤を湿布してあるので、再狭窄率はベアメタルより圧倒的に低いのです」(前出・外来担当医)

 新しいステントで治療した人は、「歩けるようになって、行動範囲が広がったのがうれしい。皆に明るくなったと言われる」と話す。良い事ずくめのステントだが、問題点はないのか。
 「ステントを使用できる病変が、長さ14センチまでに限られることです。それより長い病変にはステント治療ではなく、血管が詰まったところで迂回路を作るバイパス手術を行います」(前出・外来担当医)

 今回のように、欧米より先に日本での使用が解禁になった医療機器は珍しい。これはFDA(アメリカ食品医薬品局)と日本の厚労省などが議論を重ね、同じ枠組みで臨床試験を実施した結果がもたらしたものだ。こうした制度がさらに使えるようになれば、日本の医療機器の承認が遅れることはない。
 厚労省は今回のステント承認だけで終わらぬよう、欧米の関係機関との連携を強めるべきである。