画像はNHK放送センター(「Wikipedia」より)

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 9月30日に施行された労働者派遣法の改正に伴い、全国各地で雇い止めに遭う派遣社員が続出している。改正の大きなポイントとなっているのは、「派遣先の同一組織単位(課)における同一の派遣労働者の受け入れは3年を上限とする」という条文だ。

 言い換えると、「同じ部署で、同じ派遣社員は3年以上働き続けることはできない」という意味だ。

 これを受けて、NHKでもご多聞に漏れずハケン切りの嵐が吹き荒れているという。

 Aさんは、NHKの報道関係の部署で10年以上派遣社員として働いてきた。しかし、来年の3月末日をもって退職せざるを得ないという。

 Aさんは当初、大手人材派遣会社パソナから現在の部署に派遣されたが、3年の契約期間満了に際して、NHKのOBが経営する派遣会社に転職し、そこから同じ部署へ派遣された。実は、NHKの元職員が退職後に、NHK専用の派遣会社を立ち上げるケースは多い。Aさんは、3年ごとにそのような派遣会社へ移転を繰り返しながら同じ部署で働き続けるという、極めて異例な労働形態だった。

 だが今春、来年3月の契約満了をもって更新しないと通告された。契約打ち切りはNHK本体からの指示らしく、従来の部署は元より、ほかの部署でも受け入れないという。

 それどころか、8月には「9月いっぱいで辞めてほしい」と突然の通告があり、驚いたAさんはNHK関連労働者合同労働組合(NHKユニオン)に相談、交渉の末に契約満了の来年3月まで勤務できることになった。

●非正規雇用者が多いNHK

 NHKユニオンの関係者によると、同様の ハケン切りは多数発生しているという。

「1980年代以降、NHKは契約社員や派遣社員などの非正規雇用者を増やしてきました。非正規雇用であっても、さまざまなかたちをとってNHK内部で働き続けることができていましたが、派遣法の改正案成立が濃厚になった昨年以来、契約を更新しない“雇い止め”が多発しています」(NHKユニオン関係者)

 NHKの国際部に派遣されていたBさんも、今年3月末日をもって雇い止めに遭った。Aさんと同じくOBが設立した派遣会社を渡り歩くかたちで、15年ほど同じ部署に派遣され続けたが、昨年末に「もう更新することはできない」と通達を受けた。ほかの道を探したが、40歳を越えたBさんは再雇用先を見つけることはできず、両親のいる故郷へ帰ることを決めたという。

 情報番組の制作に携わっていたCさんは、7年ほど前からNHKに派遣されていたが、昨年上司から退職するように迫られ、契約満了までは退職しない旨を告げたところ、毎日のように嫌がらせを受け、うつ病を発症して今春自ら退職を申し出た。うつ病の原因がパワハラにあるとしてNHKユニオンや弁護士に相談しており、提訴を検討しているという。

 政府は非正規雇用労働者の雇用安定を図る目的で派遣法を改正したが、結果として派遣社員の雇い止めを増加させるという皮肉な事態に陥っている。

 同じ派遣社員を雇い続けるためには、労働組合等の意見を聞く機会を設けるなどの手順を踏み、場合によっては正社員にするなど人件費の増加が必要となってくる。だが、3年ごとに派遣社員を入れ替えれば、人件費を増やさずに労働力を安定的に確保できるため、企業としては当然のごとく雇い止めを選択することになる。

 以前から多くの識者たちによって指摘されていたことであり、政府は派遣法改正によって雇い止めが増えることを想定していないとは考えられないが、雇い止めに遭った労働者をどのように救済するかについての法整備はされていないようにみられる。一刻も早い立法による制度づくりを期待したい。
(文=編集部)