12月6日、今年も91回目となる関東大学ラグビー対抗戦の伝統の一戦、「早明戦」こと早稲田大(早大)対明治大(明大)が行なわれる。昨年は日本代表フルバック(FB)藤田慶和(4年・東福岡)、スタンドオフ(SO)横山陽介(2年・桐蔭学園)らが躍動し、早大が37−24で勝利。通算成績は早大の52勝36敗2分となった。

 2020年の東京オリンピックに向けて、国立競技場が建て替え中のため、昨年に引き続き、今年も東京・秩父宮ラグビー場で行なわれる。日本代表が先のワールドカップ(W杯)で活躍した影響もあり、19000枚のチケットは早々に売り切れたという。今シーズンのラグビーにおける集客人数の最多記録を更新することは間違いないと見られている。

 今年は明大が圧倒的に有利と予想されている。明大は、早大が15−92(11月1日・秩父宮)で敗れた「絶対王者」帝京大に、大接戦を演じた。32−49(11月15日・秩父宮)で敗戦したが、残り3分まで、32−35と3点差まで追い込んでいた。明大は他の大学には快勝しているため、早大に勝利すれば6勝1敗となり、帝京大と並んで対抗戦の優勝を飾る(なおこの場合、明大は帝京大に直接対決で敗れているため、大学選手権出場は2位扱いになる)。

 大学ラグビー界では、帝京大が食事・栄養面の摂取を含めたグラウンドや寮などの環境面、人材のリクルート、コーチング、ストレングス&コンディション(S&C=フィットネス、フィジカルトレーニングなどを含めた総合的なトレーニングとコンディショニング調整)をリードしており、大学選手権を6連覇中だ。「(S&Cに関して)帝京大はよくやっている。東海大はまあまあかな」と、かつてエディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ(HC)は言っていた。

 ただ、明大もまだ照明設備こそないものの、もともと高校日本代表が多数入部するリクルートには定評があり、人工芝のグラウンドと寮も完備されている。3年前に丹羽政彦監督が就任すると、寮に泊まり込み、よりいっそうの整備を進めた。グラウンドレベルではトップリーグ、キヤノンでのコーチ経験もあるOBの小村淳氏がヘッドコーチに就任し、ボールの動くラグビーを指向。ようやく管理栄養士も常勤となり、2年前からは元U‐20日本代表S&Cコーチの坂井裕介氏が選手たちを鍛え上げてきた。

 昨季も古豪復活の気配はあったが、大学選手権セカンドステージで筑波大に7−43の大敗。特に接点の部分での劣勢が響いた。「春に勝ちグセをつけることはよいことだと思いますが、もっと基本的なところからやらなければならない」。そう語っていたのは、FBとして後方からチームを引っ張る、日本代表センター(CTB)田村優の弟、田村熙(4年・国学院栃木)だ。その言葉を裏付ける通り、今年から、サントリーのFWコーチだった阮申騎(げん・しんき)氏を招聘。NO8松橋周平(4年・市立船橋)を筆頭に1対1のタックルの強さ、接点での激しさは目を見張るものがあり、大きくボールを動かすラグビーを支えている。

 高校時代にはエディー・ジャパンの合宿にも呼ばれた突破力のあるCTB梶村祐介(2年・報徳学園)はU-20日本代表での海外のチームとの対戦を経て、今年度はパフォーマンスが安定し、ミッドフィールドでの存在感はよりいっそう増した。また、高校日本代表経験者で、長短のパスでゲームをコントロールするSO堀米航平(2年・流通経済大柏)の成長も著しい。チームを先頭で引っ張るキャプテン、フッカー(HO)中村駿太(4年・桐蔭学園)、先述の田村、松橋を含め、センターラインに頼もしい選手がそろったことは心強い。

「打倒・帝京」を掲げて、あらゆる面で強化を継続してきたことが、丹羽体制3年目で、目に見える結果として現れてきたことは間違いない。昨シーズンは、大学選手権で明らかに調子は下降線だったが、今シーズンは、この早明戦に快勝し、大学選手権にピークを持ってきたい。

 一方の早大はどうだろうか。人工芝のグラウンド、寮、食事面などは従来から整備されていたが、コーチ陣の顔ぶれ、選手のリクルートにおいては、帝京大や明大に見劣りしてしまう。しかし、今年からようやく、エディー・ジャパンで3年間、S&Cコーチを務めた村上貴弘氏がフルタイムのコーチに就任。選手たちの肉体改造に取り組み始めた。

 32−31で勝利した慶応大戦(11月23日・秩父宮)で、SO横山が左肩のケガから復帰し、W杯でトライを挙げたFB藤田といった役者も先発に名を連ねた。「最後の早明戦ですし、負けたくない」と藤田が意気込むように、調子は上向きだ。明大有利の下馬評の中で、逆に白星を挙げることができれば、大学選手権に向けて大きな自信になるはずだ。

 2008年には対抗戦6位と低迷し大学選手権出場を逃した明大が、24−22で早大に勝利した例もあった。毎年、クロスゲームになることで知られる伝統の一戦は、最後まで何が起こるかわからない。

斉藤健仁●文 text by Saito Kenji