煩わしい飲みの誘いの正しい断り方
【石原壮一郎の名言に訊け】〜蛭子能収の巻

Q:学生時代から仲良くしている友達がいます。そいつは酒が好きで、しょっちゅう「飲みに行こうぜ」と誘ってきて、まあ行けばそれなりに楽しいんですけど、たびたび会っていても話題は変わり映えしません。かといって断わるのも悪いし、これからも長く付き合っては行きたいし……。それとなく「あんまり誘ってほしくない」という気持ちを伝えたいんですが、どう言えばいいでしょうか?(滋賀県・26歳・公務員)

A:ああ、それは悩ましいですね。友達というのは、たしかにありがたいんですけど、時に煩わしいものです。今日の喫茶「いしはら」のカウンターには、自他ともに認める「人づきあい下手」で、自称漫画家の毘沙門天先生がいらっしゃってます。先生はいつも、「俺は友達なんて必要ない」と言ってらっしゃいますが、この相談、どう思いますか?

 そうだよ、友達なんて面倒臭いだけだよ。まして、本当は気が進まないけど無理に飲みに行かなきゃいけない相手と、どうして付き合わなきゃいけないんだ。まあ、あんたはいちおう相手のことを大事に思っているようだし、しょっちゅう誘ってくるってことは、向こうもあんたが好きなんだろうけどね。いや、もしかしたら単に暇つぶしの相手と思われてるのかもね。あんたじゃなくてもべつにいいのかもよ。

 おっと、もしかして言っちゃいけないことを言ったかな。だから俺は、友達がいないんだよな。それはいいんだけど、俺さあ、ひそかに漫画家の蛭子能収さんを尊敬してて、あの人、こんなこと言ってんだよね。

「友達の誘いだから断われないのはおかしい。誘いを断われないような間柄を友達というのなら、僕は友達なんていりません。積極的に友達をつくろうと思ったことは昔からほとんどありません」

 いいこと言うね、蛭子さん。あの顔で。いや、顔は関係ないか。いわんや「それとなく『誘ってほしくない』という気持ちを伝えなきゃいけないような相手」をや、だよ。あんたは誘いを断ることをやたら怖がってるけど、そんな関係、ちょっと変だぜ。無理が必要な友達なんていらない。断わって関係が切れたらそれまで。相手と本当に長い付き合いを続けたかったら、そして、いい友達を見つけたかったら、まずそう開き直ることだな。

 もしあんたが、気が進まないのにしょっちゅう誘われる自分を被害者だと思ってるとしたら、大間違いもいいとこだね。知らないあいだに恨まれてる相手にとっても、悪い感情をため込まれている自分自身にとっても、あんたは立派な加害者だよ。「自分はこんなにひどい目にあってます」って言って被害者ぶってるヤツの多くは、じつは自分が加害者だって気が付いてないんだよなあ。

 蛭子さんは、こうも言ってる。「みんな嫌われるんじゃないかとか友達だから嫌われたくないとか考えすぎです。他人にどう思われたっていいじゃないですか。僕は人から嫌われていると思ったことがない。だって人に迷惑をかけることをしていないもの。そう胸を張っていればいい」ってね。相談からはちょっと話がそれるかもしれないけど、いいんだよ、自分は自分だって胸を張って生きていれば。俺も胸を張って生きてるから、友達なんていなくてもへっちゃらさ。ちくしょー、今日はコーヒーの湯気がやけに目にしみやがるぜ。

◆【今回の大人メソッド】被害者のつもりがじつは加害者ということも

 たとえば足が臭い同僚に「臭いよ」と言えなくて、相手への恨みが募っていく――。足の臭さ以外でも、とくに会社ではよくある状況です。注意して逆ギレされたならともかく、勝手に恨みを募らせるのは、相手にとって災難以外何ものでもありません。自分自身も、無駄にモヤモヤイライラするだけ。被害者ぶった加害者にならないように気を付けましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)