現地時間11月29日、コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ/SG)が今季限りでの引退を表明し、世界中のNBAファンに衝撃を与えている。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 スター選手がまたひとり、リーグを去るのは寂しい限りだ。ただし、去る者がいれば、新たなスターも生まれる。吉報がある――。今季のルーキーたちの活躍を見ていると、今年のドラフトが数年後には、「伝説のドラフト」として語られる可能性が高いからだ。

 まずは、フィラデルフィア・76ersからドラフト全体3位指名を受けたジャリル・オカフォー(C)。10月28日、今シーズン開幕戦のボストン・セルティックス戦でオカフォーは26得点、7リバウンド、2ブロックとセンセーショナルなデビューを飾った。

 デビュー戦で挙げた26得点は、1963−64シーズン以降におけるセンターのデビュー戦での得点としては、29得点のカリーム・アブドゥル=ジャバー(1969年/当時ミルウォーキー・バックス)に次ぐ記録。過去30年でいえば最多で、24得点のアキーム・オラジュワン(1984年/当時ヒューストン・ロケッツ)や、23得点のデビッド・ロビンソン(1989年/当時サンアントニオ・スパーズ)のデビュー戦をも上回っているのだ。

 しかも、オカフォーは現在19歳――。10代のルーキーがデビュー戦で20得点以上を獲得したのは、ラマー・オドム(1999年/当時ロサンゼルス・クリッパーズ/PF)、レブロン・ジェームズ(2003年/当時クリーブランド・キャバリアーズ/SF)、アンソニー・デイビス(2012年/当時ニューオーリンズ・ホーネッツ/PF)に続き、史上4人目の快挙である。

 現在、オカフォーはルーキー1位、チーム1位、リーグ全体でも33位タイの平均17.2得点を記録している。ポストムーブは柔軟でフィニッシュも多彩。さらにシュートレンジも広い。現時点では間違いなく、今シーズンの新人王候補ナンバー1だろう。

 しかし、コート外となると、その評価は一変する。11月25日に76ersがセルティックスに敗れた夜、オカフォーはボストン市内のナイトクラブを訪れ、路上で一般人と言い争いとなって相手を殴ってしまった。しかも、そのシーンの動画がゴシップサイトにアップされてしまったのである。

「76ersはクソだ! 負け犬だ! 試合に勝てやしない!」と一般人に罵られたことがケンカの発端なのだが、76ersが開幕から18連敗を喫しているのは紛れもない事実。しかもオカフォーは、「俺たちは金を持ってんだ、この貧乏人が!」と言いながら殴り返しており、プロとして失格の行為である。また、オカフォーは10月にも一般人と暴力沙汰を起こしていたことが発覚している。バスケット選手としての実力は疑う余地はないのだが、正統派のスターとなるのか、デニス・ロッドマン的なヒールに成長するのかは、今後の行ない次第だろう。

 一方、ミネソタ・ティンバーウルブズからドラフト全体1位指名されたカール=アンソニー・タウンズ(C)は、順調にスターの階段を登りつつある。NBAデビュー戦となったロサンゼルス・レイカーズ戦では14得点、12リバウンドの「ダブルダブル」を達成。さらに、デビュー2戦目のデンバー・ナゲッツ戦でも28得点、14リバウンド、4ブロックの大活躍を見せ、NBAデビュー最初の2試合で「ダブルダブル」を記録した史上最年少(19歳11ヶ月)の選手となった。

 タウンズは現在、ルーキー2位の平均13.9得点をマーク。平均9.2リバウンドはルーキー2位、リーグ全体でも18位の好成績だ。今年のドラフト時点では、「即戦力のオカフォー、ポテンシャルのタウンズ」という評価がなされていた。しかし、今シーズン早くもタウンズは、そのポテンシャルを開花させそうな勢いである。

 また、オカフォーになくてタウンズにあるのが、偉大なチームメイトの存在だ。ティンバーウルブズにはケビン・ガーネット(PF)、アンドレ・ミラー(PG)といった大ベテランがいる。彼らとともにプレーすることは、間違いなくタウンズの将来に好影響を与えるだろう。

 そんな前評判どおりの活躍を見せるふたりとは対照的に、開幕してからファンの評価を一変させたのが、ドラフト全体4位でニューヨーク・ニックスが指名したラトビア出身の20歳、クリスタプス・ポルジンギス(PF)だ。

 ブルックリンのバークレイズ・センターで行なわれた2015年ドラフト――。ニックスがポルジンギスを指名すると、会場にいたニックスファンからはブーイングが巻き起こった。昨季のニックスは17勝65敗とフランチャイズ史上最悪の惨敗を喫し、気の短いニューヨーカーが欲したのは「即戦力」だったからだ。

 ポルジンギスは身長221センチ、ウィングスパン230センチと、ポテンシャルの高さは間違いないものの、体重が109キロしかなく、「その細すぎる体躯ではNBAに慣れるまで数年を要し、特にディフェンス面で苦戦する」と評されていた。また、エースのカーメロ・アンソニー(SF)も、「ポルジンギスがモノになるまで、2〜3年待てって言うのか!」と関係者にグチをこぼしたと伝えられている。

 しかし、ニックス球団社長のフィル・ジャクソンは、「パウ・ガソル(シカゴ・ブルズ/PF)と共通点が多い。シュートレンジはパウより広いかもしれない」と高く評価し、かつてニックスでスター選手だった解説者のチャールズ・バークレーも、「ニックスはサプライズを起こしそうなチームのひとつ。ポルジンギスは大きな将来性を持った若者だ」と語っていた。

 実際、シーズンが開幕すると、ポルジンギスはルーキー3位の平均13.8得点、ルーキー1位の9.3リバウンドをマーク。また、数字以上にニックスファンを熱狂させているのが、ポルジンギスのプレースタイルだ。果敢にオフェンスリバウンドに飛び込み、ディフェンスでは高さで相手を圧倒し、リングにねじ込むダンクは観るものを興奮させている。

 開幕直後からニックスファンはハートを鷲づかみされ、多くの店舗でポルジンギスの背番号「No.6」のジャージが早々に売り切れた。チームはこの事態を受けて早くも増産態勢を整え、今後は従来の4倍の枚数が店頭に並ぶと発表している。

 オカフォー、タウンズ、ポルジンギスの「三つ巴」になるであろう、今季の新人王争い。さらにその先、「リーグの顔」へと成長する選手は誰か――。3人のルーキーから、しばらく目が離せない。

※データは現地12月2日現在。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro