忘年会シーズンで酒量も増え気味!? (shutterstock.com)

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 ワインやビールなどの酒のルーツは、紀元前4000〜5000年ごろに遡る。錬金術師たちの蒸留技術が酒に生命力を授け、古今東西、アクア・ビテ(生命の水)と珍重されてきた。

 酒に十徳あり、酒は天の美禄。上戸に好都合な方便がまかり通れば、呑みすけの喉を潤すのも酒。酔っぱらいの胃袋を満たせば、酒豪の傍若無人を許すのも酒。酒は消化を促し、代謝を高める! 酒は心の特効薬になる! 善玉コレステロールを増やすから血が固まりにくい! 赤ワインのポリフェノールは動脈硬化や心筋梗塞のストッパーになる! 酒は喜びを倍にする! 悲しみを半分にする!......

 ナルホド! 酒を援護射撃する飲んべえは尽きない。酒場に押し掛ける酔いどれの隊列は乱れたためしがない。だが、待て!「女と酒は二ごうまで」、「酒はほろ酔い、花は半開きひとつぼみがよい」とも言うではないか。酒は百薬の長なのか? 酒の適量はあるのか?

酒飲みの死亡リスクは1.5〜1.8倍も高い

 酒の「Jカーブ効果」というグラフがある。タテ軸に死亡率、ヨコ軸に1日の飲酒量をとると、J 型のカーブを描く。つまり、適量の酒を飲む人は、まったく飲まない人と比べると、死亡率が低くなる傾向がある。適量とは、どれくらいの量なのか?

 1990年と1993年に厚労省が行った死亡率調査(2007年多目的コホート研究)を見てみよう。この調査は、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5県に住む40〜69歳の男性約4万2000人を対象に、1週間当りの飲酒量、飲酒習慣、疾患の発症率などを9年間追跡したもの。対象者のうち、飲酒習慣のある人は約3万2000(76%)人。週に3日以上の休肝日を取る人は40%、週に5〜7日飲む人は60%である。

 週1〜2日しか飲まない人との死亡リスク(日本酒換算)を比べると、週5日〜毎日(13〜19.5合)飲む人の死亡リスクは1.5倍、それ以上飲む人は1.8倍も高い。しかも、飲酒量が極端に多い人は、休肝日を取っても、死亡リスクが高まる。

 飲酒量と死亡率を見ると、死亡率が最も低いのは、時々飲む、または1週間のアルコール量が50g以下の人。アルコール量50gは、ビール中瓶(500㎖)で約2.5本だ。疾患の発症リスクを見ると、1日当たりのアルコール量が20g(ビール中瓶で約1本)を越えると、がんの死亡リスクが上昇する。

 また、9年間に心筋梗塞に罹った人は170人。酒を飲まない人の心筋梗塞の発症リスクを1とすると、1日当たりの飲酒量が1合未満の人や、1〜2合の人の発症リスクは、顔が赤くなるかどうかに関係なく0.5と低い。つまり、適度な飲酒を続ければ、心筋梗塞の発症リスクが減る。

1日当たり、清酒なら1合、ビールなら大瓶1本が日本人の適量?

 これらのデータから、過度な飲酒をしない人の発症率は低い、飲酒量が増えれば増えるほど、死亡率が高まる事実が分かるだろう。

 調査に当たった丸亀知美研究員(国立がん研究センターがん情報統計部)は「この研究結果から、1日平均2合以上の過度の飲酒は、死亡リスクを高める。総飲酒量を減らすために休肝日を作り、1日平均1〜2合程度に抑えるのがベター」と話す。ちなみに、女性も同様の傾向があることを示すデータもあるので、女性も安心できない。

 「百薬の長とは言えど、よろずの病は酒より起これり」。吉田兼好に言われるまでもない。

 適量を楽しんでこそ、百薬の長。度を超せば万病の元! 適量は個人差があるものの、1日当たり清酒なら1合、ビールなら大瓶1本! それくらいの慎ましさが、われら日本人の適量になりそうだ。冷酒と親の言う事は後で効く! では、ご同輩、今夜も美酒に乾杯!
(文=編集部)


参考:「おもしろサイエンス お酒の科学」(日刊工業新聞)、国立がん研究センターHP、e-ヘルスネットHP(厚労省)、「からだのしくみ辞典」(日本実業出版社)、「アルコールと健康NEWS&REPORTS」(アルコール健康医学協会)、独立行政法人酒類総合研究所HP