融資額と条件を決める 銀行の「格付け」とは?

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 飲食業にかかわっている人であれば、一度は「いずれ独立して自分の店を持ちたい」と考えたことがあるはず。あるいは、すでに具体的な開業の計画をしている人も、実際に開業したばかりという人もいるはずだ。

 しかし、「10年もつ飲食店は全体の1割、残り9割は消える」というのは有名な話で、ほとんどのケースは失敗に終わる。その原因はまぎれもなく「資金難」だ。

 税理士・公認会計士の廣瀬好伸氏の著書で、飲食店経営に特化した経営指南書『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト/刊)は、飲食店経営者が順調に事業を成長させていくための資金繰りについて教えてくれる。

■希望の額を借りられない 融資にひそむ落とし穴
 「資金繰り」というと、キーワードになるのはやはり銀行。事業を進める過程で銀行からの融資が必要な局面は必ず訪れるが、必ずしも自分が必要とする額を融資してくれるとは限らないということは大前提として知っておきたい。これは開業をする時も、2号店、3号店を出す時も同じで、希望額の融資を受けられる前提で出店計画を立ててしまうと、いざ希望通りの融資が下りなかった時に、手元資金を使わなければいけないということも十分に考えられる。
 手持ち資金というのは、店が軌道に乗るまで持ちこたえるための原資でもある。それを出店の段階ですり減らしてしまうと、後々にしわ寄せが行ってしまうのだ。
 開業する時も、2号店、3号店を出店する時も、手持ち資金には十分にゆとりを持つこと。そして特に2号店以降の場合、1号店の業績が安定していることが新たな店舗を出せるかどうかの条件になると心得ておこう。
  
■銀行は企業を「格付け」している!
 では、銀行から希望通りの融資を受けられない理由にはどんなものがあるのだろうか。
 ここでは、民間の銀行の例を挙げておこう。
 あまり知られていないが、民間の銀行は経営状況によって企業を「格付け」している。この格付けはかなり細かく、12段階に分けられたランクによって融資の額や条件がまったく変わってくるのだが、そのランク付けの資料となるのは「決算書」だ。
 決算書とは「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュ・フロー計算書」を指すが、多くの経営者が重視するのは「1年間でどれくらいの利益を上げたか」を表す損益計算書だ。しかし、銀行が格付けをする際に最も重視するのは「貸借対照表」だということは覚えておいた方がいいだろう。
 損益計算書は企業の「収益性」と「成長性」を表し、貸借対照表は「体力」を表す。融資した資金を回収しなければならない銀行としては、後者をより重視するのだ。
 ただし、銀行に対して説得力を持つ貸借対照表を作成するのは素人には難しいはず。将来の事業拡大を睨んで銀行と良い関係を築くのであれば、決算書は専門家に任せるという選択肢も考慮すべきだろう。

■行き過ぎた税金対策が招くもの
 事業が順調に育ち、利益が大きくなってくると、経営者の心が向かいがちなのが「節税」。納める税金は少なければ少ないほどいいと考えるのが人情ではあるが、今後も店舗を増やそうと考えているなら安易な税金対策は自分の首を絞めてしまうことにつながるので注意が必要だ。
 税金対策の基本的なアプローチは「利益を抑える」こと。「ギリギリ黒字」というラインに近づけるほど、支払う税金は少なくて済むわけだが、これはいざ事業を拡大しようとした時に、「経営状態が良くない」と判断されて銀行から融資を受けにくくなってしまう恐れがある。前述の「格付け」にも悪影響が出やすいのだ。
 もちろん節税対策は必要に応じてやればいいのだが、事業自体の進み行きによって「このくらいの利益を計上しておいた方がいい」というラインはある。決算書作成を専門家に任せるにしても、人によっては節税ばかりすすめて格付けが上がらない決算書を作ることもあるので注意が必要だ。

 独立を計画し、開店させ、軌道に乗せて、そして多店舗展開という一連の流れの中に「資金難」に陥る分岐点は無数にある。そのたびに立ち止まり、正しい判断をするために、飲食店経営を志す人にとって、資金や融資の知識はいくら持っていても持ちすぎということはないだろう。
 経営者であれば、事業が「ヒト・モノ・カネ」の三要素で回っていることは心得ているはずだが、企業が倒産する要因であり、事業拡大のカギになる「カネ」、つまり「資金繰り」については、その重要性に反して苦手にしている経営者も多い。事業を推し進める過程で、どの状況、事業のどの段階にどのような資金面のリスクがあるのかという点について、『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』には実例を交えて解説されており、多くの示唆を得られるはずだ。
(新刊JP編集部)