景気テコ入れに5兆円!?参院選前に現金給付の案も

 与党が年末に向けて補正予算案の編成作業を急いでいる。予算規模は3兆円台とみられるが、与党の一部では5兆円のかけ声も出ている。TPP(環太平洋経済連携協定)対策や景気テコ入れなどの名目はいくつもあるが、狙いは来夏の参院選である。
 安全保障関連法案の成立とTPPの大筋合意という大仕事を終えた安倍政権にとって、次の仕事は再び国内経済。安倍首相は株価の浮揚と企業業績の改善には大成功したが、物価上昇率は再びマイナスに転じる流れにあり、公約とする「脱デフレ」はまだ道半ばだ。
 10月には、さっそく「補正予算規模は3兆円超」と報じられた。ただ、3兆円は財務省にとって支出できる上限である一方、与党には最低ラインのようだ。
 国の財布といえば、2014年度の剰余金に加え、市場金利低下で国債の利払い費用が浮いたほか、法人税収が歳入見込みを超えている。この分を合計した3兆円台半ばまでなら、国債の追加発行なしで補正予算を組める。ただ、与党内では「最低でも前年度補正予算(3・1兆円)を上回る規模が必要だ」と大盤振る舞いを求める声が強い。
 積極財政論が勢いづくのは、今回の補正予算に複数の柱があるためだろう。最大の歳出項目はTPPで打撃が予想される国内農家向け対策。自民、公明両党の政調会長会談で真っ先に意見が一致した分野である。
 コメ備蓄枠増加に加え、農林族議員の間では農家への所得補償制度の拡充を求める声が強い。コメ輸入が解禁されたガット・ウルグアイ・ラウンド(関税貿易一般協定)後に大規模な農業対策予算を組んだ前例がある。野党からは「農業対策ではなく農家へのばらまきにならないよう注視したい」との声が上がる。 
 10月の関東・東北水害を受けて、被災地復興や大型河川の洪水対策も盛られる見込みだ。
 政府の掲げる「新・3本の矢」も当然、予算編成のキーワードになる。「人口1億人の大台維持」「介護離職ゼロ」の目標達成のため、子育て支援や介護施設の設置補助にも予算がつく可能性が高い。さらに、個人消費の伸び悩みを打開するため、低所得者への現金給付も検討されているもようだが、これには与党内でも懐疑的な見方もある。
 補正予算が際限なく膨らんでいく雰囲気に、財務省は「爍渦総活躍社会の実現のため〞と言われたら、何でも補正予算の対象になってしまう」と財政規律の維持を危ぶんでいる。参院選の投票は遅くとも来年7月24日である。



※この記事は「ネットマネー2016年1月号」に掲載されたものです。