気分の波だと軽く見ていたら離婚に発展することも!「産後うつ」や「産後クライシス」とは?

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産後の女性の心身の変化は、本人にも家族にもさまざまな影響を与えます。見た目は妊娠前の状態に戻ったようでも、母親の体内のホルモンバランスは以前とは大きく異なります。加えて育児が大変だと、いわゆる「産後うつ」や「産後クライシス」といった危機的な事態が起こる場合があります。

産後うつは何が原因で起こる?


産後の女性の身体はホルモンバランスが乱れているため、情緒不安定になっています。そのうえ赤ちゃんに1日24時間態勢でつきっきりで世話をして、夜も十分な睡眠が取れません。また、家にこもりがちになるため、気分転換もままなりません。

母親になったら社会から取り残されたようで、孤独感が強まっていきます。また、育児が思い通りにいかないことや、そんな大変さを理解してくれない夫の言動もストレスになります。産後うつになる人の多くが、勉強熱心で完璧主義で一生懸命なタイプです。

こんな症状が見られたら産後うつの疑い


一般に、産後うつは出産後3か月以内に発症し、1〜2年ほど続くと言われています。時間とともに症状がなくなる場合もありますが、長期化、重症化するとうつ病に移行することもあるので注意が必要です。下記の項目の複数に当てはまり、かつその状態が長く続いているようなら心療内科や精神科を受診しましょう。

□気分がひどく落ち込む

□いつも疲れている気がする

□うまく眠れない(寝つきが悪い、早朝に目覚める、眠りが浅い)

□将来のことを考えて不安になる

□イライラや焦りを感じる

□倦怠感がある

□食欲がない

□よく泣いてしまう

□好きなことにも興味が持てない

□物事に集中できない・考えがまとまらない

□自分を責めてしまう

□死にたいと思うことがある

□身なりに気を使わなくなった

□子供を産まなければうかったと思う

□子供や夫への愛情を感じられない

産後うつの治療


産後うつが重症の場合は、抗うつ薬を使う場合があります。抗うつ薬にはいくつか種類がありますが、それぞれ副作用もあります。授乳中に薬を飲んでいいのか、心配なお母さんもいるでしょう。

授乳中でも飲める、より安全性の高い抗うつ薬があります。医師に授乳中であることを告げ、相談しましょう。なお、抗うつ薬は効き始めるのに2週間ほどかかります。また、症状が軽くなっても4〜6か月くらいは服薬する必要があります。

また、最近では薬を使わないTMS(経頭蓋磁気刺激法)と呼ばれる治療法もあります。磁気を用いて脳の特定の部位に働きかけ、血流を増加させることによって、低下した機能を回復させるものです。

いずれの治療法でも、複数回の通院が必要で、回復までには一定の時間がかかります。しかし、悪化して本格的なうつ病になってしまうと治療はさらに長引きます。なるべく早期に、かつ焦らずにじっくりと取り組むことが、調子を取り戻すための早道と言えるでしょう。

産後クライシスとは何か


産後うつが母親自身の精神的な不調であるのに対し、産後クライシスは「夫婦の関係」が不調(危機)に陥ることを指します。具体的には、出産後2年以内に急激に夫婦の愛情が冷める現象で、離婚に発展するケースも増えていると言われています。

産後クライシスへの対策


産後クライシスでは、特に妻から夫への愛情の減少が顕著です。その原因として「家事育児への非協力」「育児の労力に対する理解不足」「ねぎらいの言葉不足」が上がっています。当然ながら、産後うつの症状に対する夫の無理解も、その要因となり得ます。

服薬などの治療が必要な産後うつとは異なり、産後クライシスを防ぐための最も大切な処方箋は、「夫婦間の話し合い」と「家事・育児の共同作業」です。お腹の中で赤ちゃんを育み、出産する女性と違って、男性は父親になるという実感が湧きにくいものです。出産について、赤ちゃんのこと、また女性の体の変化について、きちんと話す機会を設け、具体的に理解してもらいましょう。

また、子供ができたことによって家事の負担が大きくなることも、しっかり伝えます。食事や洗濯、掃除といった日常の作業も、新たに分担を決め直しましょう。直接赤ちゃんのケアをしなくても、そうした負担の軽減がお母さんの気持ちを楽にすることを改めて話すことが大事です。

可能であれば、実家の両親の手を借りることも有効です。とにかく、育児は母親だけではできません。家族ぐるみで前向きに子育てに取り組んで、産後クライシスを回避してください。

執筆:南部 洋子(看護師、助産師)
監修:川口 佑(医師、新宿ストレスクリニック院長)