藤田富 演技に魅せられた男は運命を信じて進む!
文字通り“芝居漬け”の1年となった――。東京医科歯科大学に通う現役大学生のメンズモデルとして絶大な人気を誇る藤田富ふじたとむ。6月の初舞台を皮切りに、わずか半年ほどの間に3本の舞台に出演した。その合間を縫って、TVドラマ、映画の撮影にも参加。そして年明けには舞台『獅子相承』で主演を務める。この1年で演技という新たなジャンルへと確実な一歩を踏み出し「少しずつ、この先の道が見えてきた」と語る23歳。意外性にあふれるこれまでの軌跡とその素顔に迫る!

撮影/平岩亨 ヘア&メーク/藤沢輝守
取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

小学校高学年で人生初の急降下



――つい最近、黒髪からまた茶髪にされたんですよね?

そうなんです。役のために染めて、戻して、また染めて…という繰り返しです(笑)。

――それだけ短期間でいくつもの作品に出演されているということですね。

去年の8月にいまの事務所に所属させていただいたんですが、4月に舞台出演が決まるまでは、仕事の中心はモデルでした。それ以前の仕事からステップアップしたと言えるような仕事はほとんどなくて結構、ヒマだったんです。

――それがいまでは、舞台、ドラマ、映画と次々とオファーが!

休みがなくて、体はつらかったりもするんですが、成長を実感できて楽しいです。

――どんな道をたどって“いま”に至ったのか、さかのぼって話を伺っていきます。

結構、乱高下が激しい23年になっていると思いますが(笑)、よろしくお願いします。

――まず、子どものころはどんなお子さんでしたか?

生まれは大阪です。母が教育熱心で、3〜4歳くらいから塾のような教室に通っていて、小学校受験もしました。その後、父の仕事の関係で上京したんですが、公立の小学校に通いながらずっと塾に通っていて、勉強はしっかりとやってましたね。

――真面目な優等生だったんですか?

それがそうでもなくて、勉強ばかりしてたせいか、周りを見下すような性格の子どもに育ってしまいまして…(苦笑)。4月生まれで体も大きかったので、みんなを引き連れて、気に入らない子はいじめるようなお山の大将でした。

――優等生タイプのいじめっ子。

そうです。表の顔は優等生で、いい気になって裏ではひどいことをしてました。小5、小6あたりでそれがピークに達して、学校で問題になって親が呼び出されたんです。結局、その事件のせいで、いままで積み重ねてきた優等生としての実績が全部ダメになって一気に転がり落ちました。

――最初の急降下ですね。

中学受験もうまくいかず、家の近くの中高一貫校に進学したんです。でも性格が悪いのはあいかわらずで、トップの成績で入学したので「おれはお前らとは違う」とか「おれは本当はこんなところにいるはずじゃない」とか思ってましたね…(苦笑)。



体重80キロ台! 意外な中学時代



――中学でもクラスで目立つタイプだったんですか?

いえ、小学校とは一転して地味でした。前の席のヤツと仲良くなって、その流れでたまたまパソコン部に入って、地味にRPGゲームとか作ってました。中学時代は体重が88キロあったんです。

――現在は60キロ台半ばですから、20キロくらい重かったんですね!

地味でデブで、名前が富(とむ)だから「豚(とん)」って呼ばれて、いじめられたりもしました。

――いじめっ子からいじめられっ子に…。

中3のとき、自分を変えたいと思って生徒会に立候補したんです。でも、相手の候補は人気者のサッカー部のキャプテンで…「どうしたら勝てるか?」と考えて、あちこちで街頭演説をしたり、いろいろ工夫しました。

――結果は?

残念ながらわずかな差で負けちゃったんですが、そんな選挙運動をするヤツはいなかったから「何だアイツ?」って感じですごくウケたんです。悔しかったけど、そこで注目浴びることが「気持ちいいな」と感じるようになってきて…。

――「目立ちたい」という気持ちが芽生えてきたんですね?

そこで、今度は体育祭の応援団に参加することにしたんです。うちの学校は、男女で校舎も分かれてるんですが、応援団では一緒に活動するんです。そこに期待もちょっとあって(笑)。

――目立つ上に女の子とも知り合えるチャンス!

でも周りを見渡したら、そんな風に女の子目当てで応援団に志望してきた問題児のチャラい男ばかりで、先生から「これじゃ、まとまらないからお前が団長やれ」と言われて、いきなり応援団長をやることになったんです。

――いきなりトップに?

そのころもまだ、88キロあったんですけど「デブが団長やってる!」って話題になって、「やせてやる!」とダイエットを始めて、体育祭までに8キロもやせたんですよ。そうしたら、それも「団長がやせた!」と注目を浴びて、なんだか嬉しくなっちゃって(笑)。

――すごく努力されたんですね。

とはいえ、まだ80キロもあったので、これを生かして何かしようと柔道部に入りました。ここでも、他の部は男女別々なのに、柔道だけは男女で合同練習するんです(笑)。そこで、厳しく叩き込まれて、すぐに区で2位になって表彰されました。

――入部してすぐ、区で2位ってすごいですね。

そのまま、エスカレーター式に高校に上がったんですが、柔道は、続けるには練習が厳しすぎて…。うちの高校はスポーツ強豪校だったんですが、その中でもあまり厳しさのない軟式テニス部に入りました。もちろん、男女混合です(笑)。そこで毎日、楽しくテニスしてたら、体重も60キロ台まで落ちました。

――そうなると、モテモテでしたか?

モテ始めたのは高2からですね。初めて彼女ができて、ザ・青春!という感じでした(笑)。部活して、恋愛して、勉強も自分で計画を立ててうまくやって、在学中はずっと一番上のクラスでトップ10前後をキープはしてましたね。

――やろうと思えば何でもソツなくできてしまうタイプ?

さぼり癖があって、わりと注意力散漫なんですけど、負けず嫌いなところもあるんですよね。何かといつも効率ばかりを考えますね。