撮影/Toby Oxborrow
 世界初(!?)の痴漢冤罪保険が登場し話題となっている。満員電車で通勤する男性なら痴漢冤罪の恐怖は説明無用だろう。両手でつり革を持つ「バンザイ通勤」がもはや常識となっているなか、この保険は救いになるのか。

 ジャパン少額短期保険が売りだした「弁護士費用保険」。保険料は月額590円、年額6400円で、「痴漢冤罪ヘルプコール」という契約者特典がついてくる。痴漢を疑われたとき、事前に携帯(スマホ)に登録したボタンをプッシュすると、提携弁護士に緊急メールが一斉送信され、とるべき行動の指示を電話で受けられる仕組みだ。加えて事件発生後、48時間以内の弁護士相談料、接見費用は保険が適用される。

 事件発生直後に弁護士と電話で話すことの意味は? 高崎俊弁護士に話を聞いた。

「痴漢疑惑は非常に厄介で、最悪、逮捕・勾留された揚げ句の起訴も十分ありえます。起訴された場合は無罪を勝ち取るのはとても難しい。初動対応次第で、その後の展開が大きく変わる可能性があります」

 身に覚えのない痴漢を疑われ、冷静かつ適切に振る舞える人などほとんどいないだろう。窮地だからこそ専門家の知見が必要なのだ。

「駅員や警察官から適正な扱いがなされるとは限りません。電話であっても弁護士の介入で扱いが変わる可能性もあります」

 では、痴漢を疑われた場合どうすれば良いのか。

「冤罪ならば絶対に罪を認めないこと。一度認めた供述を覆すのは難しいです。逃げるのもダメ。逃げ切れなかった場合は心証が悪くなりますし、混雑の中逃げる際に人とぶつかってケガをさせたら傷害罪となる可能性があります。リスクが高いです。」

 ならば、具体的には、何をすべきなのか。

「まずは目撃者探し。電車から降りる前に周囲の助けを求めることが大事です。疑いをかけられたら、『冤罪です。このままだと大変なことになるので協力してください』と声をかけ、近くにいた人と一緒に降りるよう説得しましょう。それがダメでも『後でもいいから駅に電話してほしい』と伝えてください」

 だが味方を確保できないまま、ホームに降りざるを得ないケースもあるはずだ。そこでもうひとつの難題が「ひとまず駅員室で話をしよう」という誘い文句である。

「駅員室には行きたくないですね。その時点で私人逮捕が成立してしまうおそれがあります。強く言われても『必要ない』と申し立て粘ってください。ただ、粘っても逮捕を免れそうにない場合、証拠の保全に務めるのも手です。警察官や駅員に『相手の衣服の繊維片が出るのか検査してほしい。手をビニールで覆ってください』と申し立ててください。また、女性の衣服(特に下着)にも皮膚片が付着している可能性があるので、後日のDNA検査のため、それについても保全するよう警察官に交渉しましょう。もっとも、警察にそのような捜査義務はないので聞き入れられないかもしれませんが、その場合はせめて『そのような捜査をするよう申し入れたこと』を記録化してもらってください。証拠として使える可能性があります」

 一方で痴漢されたと訴える被害者にはどう対応したら良いのか。

「怒鳴ったりはせず、被害状況を細かく聞き出しましょう。触られた部位はどこか、触られた方向は上下左右どちらか、手の平か手の甲か、触った手は右手か左手か、いつからいつまで触られたのか……その後供述が変遷することもあるので、まずはしっかり言い分を確認したい。できれば録音したいところです」

 トラブルに巻き込まれたら、即座にスマートフォンの録音ソフトを起動させるのが、まずは鉄則と言えそうだ。ちなみにこの保険には「事件発生後48時間以内の弁護士相談料と接見費用料の無料」という契約者特典もついているが、この「48時間以内」というのはどういう意味をもつのか。