突然だが、あなたは”出産のリミット”について、真剣に考えたことがあるだろうか。そして自身が望んだタイミングで妊娠できる自信は……?

子どもは授かりものだから、と結婚後も仕事に邁進するうちに、妊娠に適した時期を過ぎてしまうこともある。手遅れになる前に気軽に妊活に取り組めるよう、コミュニケーションを重視した会員制妊活相談サービス「ファミワン」が11月15日の「家族の日」にリリースされた。


「ファミワン」の会員制サイトでの相談イメージ

月額2万円、10ヶ月限定の“短期・成果報酬型”妊活サイト

「ファミワン」では、“妊活は家族で取り組むもの”をテーマに、夫婦合わせて月額2万円で10ヶ月間の妊活サポートが受けられる。また、10ヶ月間で妊娠できなかった場合、これまで支払った20万円がかけた保険のように全額戻って来るところもポイントだ。サービスのメインは、夫婦に寄り添う専任コンシェルジュと専門家や妊活仲間と情報交換ができる掲示板で、今後ギフトボックスの送付や読み物記事、リアルイベントを増やしていくのだそう。

このサービスを作ったのは、日本最大級の医療従事者向け専門サイトを運営する企業にて新規サービスの立ち上げを行い、その後今年6月に独立した石川勇介さん。

妊活の現状をシビアに受け止める石川氏が考えた、これからの“妊活”を変えるかもしれない、画期的なサービスの背景に迫る。

「ファミワン」代表の石川勇介さん

自身の妊活を通して強くなった創立への思い

真摯な表情で取材を受けてくれた石川さんは、現在妊活で授かった0歳の息子がいる。

--「ファミワン」創業のきっかけを教えてください。

石川勇介さん(以下、石川):僕自身、夫婦で約1年間の妊活を行った末に、第一子を迎えることができ、その時の経験からこのサービスは生まれました。比較的長くはなかったこの1年間の妊活期間ですら、夫婦の中で頻繁にすれ違いが起こっていました。割と積極的に僕は妊活について調べるタイプだったのですが、妊活に関する情報を集めている僕の姿は、妻にとってはプレッシャーになっていたんです。「自分が産めないことを責められている気分だった」とのちに言われました。妊活期間中は、毎月生理が来るたびに家が暗くなっていき、お互いにどうしたらいいか分からないまま、自然と妊活の話題も出しにくくなっていました。

当人同士だからこそ、夫婦でも口にできないデリケートな部分があることを深く感じて、「もっと頼れる相談相手がいれば良かった」「もっとお互いに知識があれば良かった」と思ったことが大きなきっかけです。

ーー妊娠できなかったら全額返金というのは画期的ですが、採算はとれるのでしょうか?

石川:経営は大丈夫!? と心配していただくこともありますが、会員の方からお金をいただく他にも企業やクリニックとの連携などいくつか方法はあり、将来的には妊娠以降のサービス提供やサイト内での物販、カウンセリングの案内も行っていく予定です。全額返金があることにより、少しでも夫婦でこのサービスを始めるハードルが下がればいいなと考えています。

そしてなによりも、医療機関による本格的な検査や治療に踏み出すきっかけにして欲しい、という気持ちを返金制度に込めています。何年も夫婦で妊活したのちに医療機関にいくのではなく、少なくとも検査だけでも早期に行って欲しい。20万円あれば、不妊治療の初期段階の検査は受けることができますし、約30〜50万円と言われる体外受精を決意する後押しにもなります。

日本における不妊症の定義は、「2年間妊娠しなかったら」となっていましたが、その期間は2015年8月に日本産婦人科学会により「1年間」に変更されました。実際、この事実すら知らないカップルがほとんどです。

使用者の声を拾えたときには反映を心がけている

アイディアが書かれたポストイットで埋め尽くされている壁は、ベンチャーの熱気を感じる

正しい知識とコミュニティーを提供したい

ーーなぜ、前職から独立という道を選んだのですか?

石川: 妊活は、医療的な知識の問題と、夫婦仲というデリケートな問題が両方関わってくるものなので、専門領域を扱う企業として、そこに特化したフォローが必要だと感じたためです。そもそも検査に行くべきなのかを悩んでいる人も多く、検査や治療についてはカップル間でも温度差が生じやすくなっています。

不妊治療という次のステップに進むにしても、正しい知識がないせいでお互いにどうしたらいいかわからない。そんなとき、カップル同士が話し合え、アドバイザーからの支えも得られるシステムが作れないかと考え、今の形に落ち着きました。医療と共に、様々な角度から妊活に取り組むカップルを支えたいと思っています。

アドバイザーは多種多様な利用者のニーズにこたえるスペシャリスト

 

日経新聞にファミワンが取り上げられたのを見て、即座に連絡をとったという不妊カウンセラーの中村文さん

ーーどんな方がアドバイザーになるのでしょうか?

石川:専門家は量より質を重視しています。こればかりは、誰でもなれるというわけにはいきません。サイトを見て連絡いただいた方とはすべて直接話をし、その上で判断してアドバイザーとして登録をお願いしています。

また、専門家の方々とは別に、不妊治療の男女の経験者や、サイト使用者の立場に近い先輩夫婦たちにも、アドバイザーとして参加していただいています。

中村文さん(以下、中村):どんな年齢の人がいらしても、門は広くしておこうという石川社長の考えに賛同しました。

例えばかなり高齢でありながら初産を希望している女性がいらしたりした場合は、身体の中でなにが起きている可能性があるのかを丁寧に説明し、適切なアドバイスをします。

メンタルのケアもしつつ、カウンセリングを通じて、夫婦で自分達が本当にのぞんでいた居場所にランディングしていくお手伝いをします。養子縁組や夫婦二人の生活を充実させるという選択肢もあり、必ずしも出産だけがゴールではないかもしれません。

石川: 12月には、東京大学の哲学対話の研究室と共同で、『わかりあえないってどういうこと?―産む/生まれるをめぐる哲学対話―』というイベントを開催する予定です。

夫婦だからなにも言わなくてもわかる、なんてことはありませんよね。イベントに参加することで、学生やお子さんを持つ夫婦、高齢の方などの幅広い世代が一緒になり、さまざまな選択肢を考えるきっかけにしていただけたら幸いです。妊活に対する理解をちゃんと深めていき、未来を広く考えることが、実はとても大切なことなのです。

【後編はこちら】妊活補助が企業の福利厚生になる日が来る ベンチャー企業が考える未来の妊活

関連リンク:「ファミワン」公式サイト

12月に開催予定のセミナー

■「わかりあえないってどういうこと?―産む/生まれるをめぐる哲学対話―」@東京・東京大学駒場キャンパス 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)
2015年12月6日(日) 13:00〜16:00
申込はこちらから

(パツワルド敬子)