SoundCloud、無音曲『4分33秒』のDJリミックスを著作権侵害で削除。理由はジャスティン・ビーバーの曲を侵害したため

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11月22日、音楽共有プラットフォーム SoundCloud が、ユーザーである DJ Detweiler がアップロードしたジョン・ケージの無音曲『4分33秒』のリミックスと称する音源を著作権違反と判断、削除しました。すぐにネット上では「ただの無音に著作権があるのか」といった議論が巻き起こりましたが、SoundCloud は削除した理由を「ジャスティン・ビーバーの楽曲への著作権侵害」と説明しています。

『4分33秒』とは、前衛音楽家ジョン・ケージが1952年に発表した曲で、その特徴は終始無音ということ。劇場での演奏ではオーケストラからヴァイオリンやサクソフォーンなどの独奏まで様々な形でカバーされていますが、一般にはピアノ曲ということになっています。
SoundCloud に著作権違反として削除されたのはアーティストユニット DJ Detweiler がアップロードした『John Cage - 4'33 (DJ DETWEILER REMIX)』という楽曲。もともと無音の楽曲をリミックスしたものなので、多くの人はこれも当然無音だろうと思いこみ、SoundCloudの判断を批判し始めました。

ところが、その後 SoundCloud が発表した削除の理由は「このリミックスは無音ではなく、ジャスティン・ビーバーの楽曲『What Do You Mean』を含んでいた」という意外なものでした。

The upload referenced in the screenshot was not a track of silence and was taken down because it included Justin Bieber's What Do You Mean without the rightsholder's permission. The respective user uploaded the track under the title "4'33"," which is also the name of John Cage's famous piece of silence but it was not, in fact, silence. We're happy to host any content on the platform as long as it's properly authorized. If we're told that any content has been posted without permission, we need to remove that content in accordance with applicable law.



サービス開始当初の SoundCloud は誰でも自由に自作の楽曲を共有できるのが売りでした。そこにはたくさんのリミックスがあり、秀逸なものをアップロードすれば注目もされました。ところが、SoundCloud はレコードレーベルやアーティストに対してロイヤルティを支払わない方針だったため、リミックス素材として使われる原曲が著作権違反だとしてたびたびレーベルやアーティストから訴えられるようになりました。その後、SoundCloud は方針を転換、アップロードされた楽曲を審査する著作権管理システムを導入し、現在ではかなり厳しい管理体制を敷き始めています。

著作権管理の強化はちょっとした混乱も招いています。たとえばある音楽グループのメンバーが、個人アカウントでグループの楽曲をアップロードしたところ、自分が作曲者であるにもかかわらずグループの著作権を侵害しているとして楽曲を削除されるといった話が、現在でもときおり聞かれます。

DJ Detweiler は『4分33秒』のリミックスが削除されたことに対して、原曲は録音物にはなっておらず、これまでに多数の楽団がパフォーマンスで再現してきたと話します。そして自分たちがリミックスしたのは自分たちが生み出したもので、これはインターネット上でのパフォーマンスだ、などと主張しています。

そして、実際ただの静寂でしかないものに著作権が存在するのか、だとすると心臓が刻むリズムにも著作権があるのかと問いかけ、著作権の規定は時代遅れで、新たに作り直す必要があるとも主張します。

DJ Detweiler はこれまでもこうした著作権管理のありかたについて SoundCloud を批判してきたとしています。しかし、 SoundCloud が削除の根拠としたジャスティン・ビーバーの楽曲の使用に関しては明確に回答していません。

うがった見方をすれば、この騒ぎすべてが DJ Detweiler のパフォーマンスだと言えなくもありません。しかし目立つために何かするのなら、全曲無音のアルバムを連続再生してもらいその収入をツアー資金に充てようとした VULFPECK のような、思わず応援したくなるようなやり方にしてほしいと思わずにはいられません。

ちなみに、ジョン・ケージの『4分33秒』については、実際に著作権違反だとして訴訟問題になった例があります。

2002年、英国の音楽プロデューサーマイク・バット が、The Planets というグループのアルバムをプロデュースした際、13曲目に挿入した1分少々の『A One Minute Silence』という無音トラックに、作者として(バット / ケージ)と連名でクレジットしました。するとジョン・ケージの譜面の権利を管理する企業が著作権侵害だとしてバットを相手取り、訴訟を起こしました。バットは当初、このケージという人物はジョン・ケージとは別人だと苦し紛れの主張を展開したものの、結局は多額の和解金を支払うはめになっています。

なお、DJ Detweiler は、今回の件について多数の記者に質問された後、以下のようなツイートを残しています。



下はジョン・ケージの『4分33秒』。