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「為替相場は1勝9敗でも勝てる」という言葉があります。ただ、2015年8月24日、ほんの数時間でNYダウが1000ドル超も暴落するなか、ドル/円もクロス/円も軒並み大暴落となった「8・24ショック」の後は、「9勝1敗でも負け」と感じた人も少なくなかったかもしれません。

 アベノミクス円安のなかでコンスタントに運用資産を増やしてきたものの、8月24日の一夜にしてそれが一気に吹き飛んでしまった――。では、この「9勝1敗でも負け」を回避するためにはどうしたらよかったのでしょうか。「8・24ショック」を事前に察知する以外、手段はなかったのでしょうか。

 この「8・24ショック」もしっかり乗り越え、アベノミクス円安に変化の兆しが出てきた2015年の荒れ相場のなかでも、運用資産を増やした投資家も存在しました。彼らが「勝った理由」は何か。

 個人投資家のAさんは2015年の荒れ相場のなかで、9月末までにFXの運用資産を5割も大幅に増やしました。この方の取引の中心はユーロでした。ご本人は、「何となくユーロが好きになったから」とおっしゃるだけですが、果たしてそれだけでもなさそうです。
 クロス/円の多くは金利差での優位性がありました。にもかかわらず、なぜ上述のAさんなどはそれに対する取り組みに慎重になっていたのでしょうか。「ショック」を事前に予感していたからでしょうか。

 金利差で優位性のあるクロス/円ではありましたが、一方で価格面では割高への警戒がありました。その本質はドル高・円安が長く続いたということでしょう。ドル/円は2011年11月75円から、2015年には一時125円まで、すでに約4年、そして最大50円もドル高・円安となりました。それが多くの金利差のあるクロス/円でも円安を支えてきたわけです。
 逆にいえば、そんなドル高・円安が反転すると、金利差のあるクロス/円もある程度の連動が不可避ということは想像できることだったでしょう。そしてそれが現実になったのが、まさに「8・24ショック」だったわけです。

 以上のように見ると、勝敗を分けた一因は、「ショック」の予感というより、価格面での割高観への警戒だったのではないでしょうか。

 ショックを回避し、荒れ相場でもしっかり運用資産を増やした理由は、価格の割高に対する警戒感があったのではないかと考えてきました。仮にそうだとしたら、それをどんな理由で感じたのか。「もう50円もドル高・円安になったのだから」といった「何となく」だったのか。

 私は通貨の中長期的な割高、割安を考えるうえで参考にする指標として、「FX投資判断I(インディケーター)」では主に5年MA(移動平均線)からのかい離率や購買力平価との関係を使ってきました。ではこの2つで、約4年で50円進んだドル高・円安について確認してみましょう。

 ドル/円の5年MAからのかい離率は記録的なドル割高の状況が続いています<資料参照>。また、過去のドル高・円安は、日米生産者物価の購買力平価前後で一巡していたのに対し、今回はそれを大きく上回っているといった意味では、こちらもかなり記録的なドル割高になっているようです。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=70054

 米国は先進国でも例外的に利上げを目指しています。だから、これほどドルは円に対して記録的な割高になったのでしょう。そして、その割高はさらに拡大するのかもしれません。でも、5年MAからのかい離率や購買力平価との関係を見ると、過去の実績ではすでにかなり限界を超えた動きになっているようです。

 それに対して警戒感を感じる人が出てきたことは当然でしょう。そして、そんな記録的なドル割高・円割安に、金利差では優位性のあるものの多くのクロス/円も「運命共同体」になっていたわけです。