「パーメに300円を払わなくても59分までは取り締まりを受けない」ーーネット上でも大いに話題となった事の顛末は…

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事の発端は、あるライター氏によるSNSへの投稿だったーー。

パーキングメーターに300円を払わなくても59分までは取り締まりを受けない」との書き込みを受け、週刊プレイボーイ本誌でその裏付け記事を掲載したのが今年2月。ネット上でも大いに話題となった。(参照記事→「パーキングメーターは59分まで300円払わなくてOKだった?」)

その投稿をしたのは、ライターのジャンクハンター吉田氏。昨年9月、秋葉原のパーメに車を止めて、制限時間の1時間を15分ほど超えてクルマに戻ると、駐車監視員が違反ステッカーを貼ろうとしていた。

ところが、すぐ前に止めてあった料金未納のベンツには20分ほどが経過していたにもかかわらず何も処置をせず、そこから立ち去ったという。最初に300円は納めていた自分の車と比べ、「ステッカーを貼る順番はベンツが先のはず」と考えた吉田氏は後日、警視庁の放置駐車対策センターに説明を求めた。

だが、「ベンツの運転手は小銭がなくどこかに両替に行ったのかもしれない。戻ってきてお金を払うかもしれないから60分のパーキングスペースは59分まで300円を支払わなくても駐車できる。意図的に59分まで料金未納でクルマを止めても、我々には取り締まる権限がない」との意外な答えが…。

そこで、この問題をフェイスブックで指摘すると、1万人以上が拡散するなど瞬(またた)く間に広まった。それを元に、週プレが取材を進めると、確かに金を払わないと違反にはなるが、駐車監視員は少なくとも59分までは違反ステッカーを貼らないことが判明。ステッカーを貼られなければ、当然、放置違反金を払う必要もないーー。

しかし、そもそも、なぜ59分までは料金未納でも駐車監視員は捕まえないのだろうか。まず警視庁に、パーメに手数料を入れないとどうなるかを聞いてみた。

「パーキングメーターの利用については、駐車してパーキングメーターを直(ただ)ちに作動させない(手数料を投入しない)場合は違反になります」(広報課)とのことだが、その根拠法令は道交法49条の3第4項。そこには、こんな文言が書かれている。

「車両の運転者は時間制限駐車区間において車両を駐車したときは、パーキングメーターを直ちに作動させなければならない」ーーつまり、法律上ではパーメにクルマを止めたらすぐにお金を入れないと放置車両と見なされ駐車違反になるということだ。ところが先述した通り、実際には未納でも59分まで取り締まりは行なわれていない。

それは駐車監視員のバイブル的な存在である『駐車監視員資格者必携』(東京法令出版)にはっきりとこう書かれていることでもわかる。

「パーキングメーターを直ちに作動させない違反については、放置車両の対象となる違反に含まれておらず、駐車監視員がこれに確認標章(編集部注:違反ステッカー)を取り付けることはできません。ただし、標識で表示されている時間を超過して引き続き駐車している場合には時間超過違反が成立するので、放置車両として確認し、標章を取り付けることとなります」

この点を再び警視庁に聞くと、今度は「パーキングメーターを直ちに作動させない(不作動違反)は、『違法駐車と認められる場合』から除かれているため、駐車監視員が確認標章を取りつける対象とはなりません」との答え。パーメを直ちに作動させないと違反になると言いながら、パーメの不作動違反は違法駐車と認められる場合から除くって…?

なんだかワケがわからなくなってきたが、警視庁が「不作動違反は、違法駐車と認められる場合から除かれている」とする根拠である道交法51条の4第1項には、おおよそ次のような内容が書かれている。

「警察官等は、違法駐車と認められる車両がある場合、運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態にあるものを確認した上で、車両の使用者が放置違反金の納付を命ぜられることがあることを告知する標章を車両に取り付けることができる」ーーこれを読む限り、どうやら「運転者が車両を離れて直ちに運転できるかどうか」がポイントになるようだ。

つまり、パーメに料金を入れてないだけでは、両替などに行ったドライバーがすぐに戻るかもしれず、直ちに運転できないとは判断できないため、違法駐車と認められず駐車監視員は確認標章を取りつけないらしい。放置駐車対策センターの担当者が吉田氏に説明した内容と一致する。

しかし、一般的に考えれば両替なら10分程度もあれば十分なはず。それを59分まで認めるのは、警察にしては随分とゆるい感じがする。何か裏があるのだろうか。第一、59分まではタダで駐車できるのはドライバーにとっては嬉しいことだが、抜け道を知っている人だけ得をするような制度は不公平だ。

交通裁判に詳しい高山俊吉弁護士にこの疑問をぶつけると、「こういうのを立てつけの悪い法律というのです」と解説してくれた。

「2006年に放置違反金制度と、それに伴う駐車監視員制度ができて、警察は放置車両の取り締まりを民間に委託しました。しかし、警察の業務をなぜ民間にやらせるのかという議論がある手前、なんでもやらせるわけにはいかず、できることを限定的にしているのです。駐車監視員に59分まで確認標章を貼らせないようにしているのは、そうした面があるからでしょう」

つまり、警察官ではない駐車監視員がペタペタと違反ステッカーを貼りまくるとドライバーの反感を買いかねない。それに「直ちに運転することができるかどうか」の基準については、ドライバーと警察の間の裁判で、今まで何度も争われてきた。 警察は、取り締まりをしてスムーズに放置違反金を支払ってほしい。そのためにも、なるべく批判されないよう59分まではステッカーを貼らないことを決めたようだ。

もっとも、駐車監視員は59分まで違反ステッカーを貼らないが、パーメの不作動違反には罰則規定があり、10万円以下の罰金に処される(道交法119条)。ということは、パーメに金を払わない行為が悪質だと判断された場合、警察官がそのクルマに赤切符を切る可能性は残されているのだ。

つまり、違反ステッカーになるか罰金・赤切符になるかは、最後は警察の裁量に委ねられている。その点がドライバーとしては不安だが、高山氏は放置違反金制度にはさらに大きな問題点があると指摘する。

この続きは発売中の週刊プレイボーイ50号でお読みいただけます。放置違反金が裁判を受ける権利を奪っている? 現行制度が憲法違反にもなりかねない重大な問題とは…。

(取材・文/桐島 瞬 撮影/本田雄士)

■週刊プレイボーイ50号(11月29日発売)「検証!なぜパーキングメーターは『59分まで払わなくてOK』なのか!?」より