今週はタイガーのホスト大会 ヒーロー・ワールド・チャレンジに出場するスコット(Photo by Matt KingGetty Images)

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 先週のオーストラリアン・オープンは終盤の大混戦を1打差で制したマット・ジョーンズの勝利で幕を閉じた。2位タイになったジョーダン・スピースとアダム・スコットのプレーはどちらも見事だったが、ジョーンズから9打差で最終日を迎えたスコットの猛追には惚れ惚れさせられた。
アダム・スコットは日本オープンでもギャラリーを魅了
 とはいえ、「肝心のところでパットが入らなければ勝つことはできない」と、スコットの自己評価は手厳しい。来年からアンカリングが禁止になるため、それに備えてスコットは使い慣れたロングパターをレギュラーパターに持ち替えたばかりだ。
 そのパターチェンジはスコットのゴルフにどんな影響を及ぼしているのか。スコット自身は「ひどいね」と、これまた厳しい自己評価。そして「レギュラーパターに持ち替える以前から僕のパッティングはひどかった」と、どこまでも自分に厳しい。
 しかし、スコットの良さは、手厳しい評価を下した自分の現状をモチベーションに変えようとする姿勢にある。「パットがひどいからこそ、パターを持ち替えたからこそ、今こそ新しいことをやろうと思える。いいタイミングで得た、いい刺激だ」
 2009年に絶不調に陥ったときもスコットは「何かを変えよう」と考え、スイングコーチをブッチ・ハーモンからブラッド・マローンに変えて見事に復活した。
 「自分の何かを変えていく気がないのなら、ゴルフをするべきじゃない。チェンジする気がないのなら、僕は試合会場にいるべき人間じゃない」あのときも、スコットは、そう言っていた。
 ところで、そんなアダム・スコットの周囲が、このところ妙に喧しい。先日は彼のキャディ、スティーブ・ウイリアムスが以前の長年のボスだったタイガー・ウッズに関する暴露本を出版して世間を騒がせたばかりだ。
 すでにウイリアムスはキャディとして半引退の身ではある。だが、かつてウッズの戦線離脱中にウッズからウイリアムスを「借りる」形でバッグを担がせ、そのまま自分のキャディに据えたという経緯があるだけに、スコットはウイリアムスの暴露本出版に対して、事前にもう少し何かしらの策を練るべきだったのではないか。それが少々残念に感じられる。
 そうかと思えば、来年のリオ五輪に対しては、スコットは率先して否定的な発言をした。「チーム戦ではなく72ホール・ストロークプレーの個人戦。“五輪でやる”というだけで、それがゴルフの拡大・成長につながるとは思えない」という意見のスコットは、来年のスケジュールを組む際、「リオ五輪を優先しない」と明言した。
 どちらも、日頃は思慮深いスコットらしからぬ出来事だ。そうやってスコットらしさが損なわれつつあるのは、未勝利に終わりそうになっている今季の不調のせいではないか。そんな声も強まりつつある。
 スコットは2001年以来、この14年間、毎年最低1勝以上を世界のどこかで挙げてきた。だが今年は米ツアーでも母国でも勝利を挙げられていない。
 米メディアはその原因を「2月に娘が生まれ、初めて父親になって私生活面やメンタル面に変化が生じたこと」と「ロングパターをついにレギュラーパターに変えざるを得なくなったこと」の2つだと指摘している。
 「不調を娘のせいと決めつけるのは、あまりにも時期尚早だし、そうはしたくない」スコットは、にっこり笑顔で言い返す余裕を見せている。
 しかし、それならば、五輪に対しても否定的な見解を言い切ってしまうのは「時期尚早」なのではないのか。自分のキャディの暴露本出版を事後に認識するだけでは「too late」だったのではないのか。日本でも高い人気を誇るスコットには、いろんな面で子供たちや人々が心底憧れる選手であってほしい。
 今週、バハマで開催されるヒーロー・ワールド・チャレンジは、毎年どこかで1勝以上を飾ってきたスコットの14年の記録を保持できるかどうかのラストチャンスになる。
 ラストチャンスを迎えるのが“ウッズの大会”というのは、きっと何かの縁だろう。誰にとっても気持ちいい締め括りを期待したい。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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