スマイルデイズ 道の駅やちよ店/パウンドケーキは、南瓜(カボチャ)とにんじんの2種(共に150円)

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近年、道の駅めぐりをする人がふえているという。自分自身、旅先で道の駅を利用する機会は少なくない。地元で取れた新鮮野菜や、珍しい野菜を手頃な価格で買えるのが、道の駅の魅力だ。

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けれど、道の駅に併設されている飲食店には入らないようにしている。なぜなら、業務用の冷凍食品やレトルト食品を使っている店が多いからだ。買い食いこそするものの、地方に出かけたら、温かくて、おいしい手作りの料理を食べたいと思っているので、道の駅で食事をしたことはほとんどない。

ところが、いい意味で予想を裏切る道の駅の飲食店がある。その場所は、千葉県八千代市。

八千代市は首都圏のベッドタウンだが、その郊外には田んぼや畑が点在し、代々続く農家がいまも米や野菜を生産している。バス釣りのメッカとして知られる新川と、国道16号線が交わる場所に、「道の駅やちよ やちよ農業交流センター」がある。

その一画に、地元産の新鮮野菜を販売するコーナーがあるのだが、その対面に、今春、「スマイルデイズ 道の駅やちよ店」という飲食店が開業した。

野菜を買いに来た人が、この店の外観を見ても、「業務用の冷凍食品やレトルトを使っているに違いない」と思うかもしれない。

けれど、スマイルデイズに限っては、それは大きな間違いであることは、店内の香りをかげば一目瞭然ならぬ、一鼻瞭然である。温かくて、おいしそうなにおいが店内に満ちている。

入ってすぐの目の前にあるカウンターには、2種類のパウンドケーキが並んでいる。「南瓜(カボチャ)のパウンドケーキ」と「にんじんのパウンドケーキ」(共に150円)だ。

その脇には「カレーパン」(180円)がある。多いときは1日に150個売れるこの店のヒット商品だが、パン生地はもちろん、カレーも手作り。

パン屋でさえ、カレーパンのカレーに既成品を愛用するパン職人が多い。ところが、スマイルデイズでは、タマネギやカボチャなど、8種類の野菜(トマト、ピーマン、ニンジンは地元八千代産)を刻み、炒める工程からすべて手作り。

「うちのカレーパンには、キーマカレーが入っています。日本でキーマカレーというと、牛ひき肉か、合いびき肉を使うケースが多いかと思いますが、うちでは鶏肉も使うことで味に奥行きを出しています」

と語るのは、「スマイルデイズ 道の駅やちよ店」の山脇直人さんだ。

牛肉、豚肉、鶏肉。3種類のひき肉で作ったキーマカレーは、千葉県産コシヒカリといっしょに「やちよキーマカレー」(550円)としても提供している。手作りのキーマカレーの上に、茹でたほうれん草が添えられ、彩りも鮮やか。

3種類のひき肉は、それぞれ食感が微妙に異なり、噛めば噛むほど肉汁があふれてくる。噛み心地が複雑なのもこの店のキーマカレーの特徴となっている。

実は、山脇さんは、スマイルデイズのスーパーバイザーであり、ハウス食品グループ本社の社員でもある。

「スマイルデイズは、ハウス食品の新規事業開発部が運営する、国内唯一のレストランです。新規事業開発部だからこそ、すべて手作りの料理を提供することにしました。母体がハウス食品だと聞けば、おそらく大半の人が『業務用のレトルトカレーを使っているに違いない』と思われるはずです。だからこそ、手作りに徹することにしました」

厨房は、ホールと売店を合わせたスペースよりも広い。その広い厨房で、キーマカレーを一度に50皿分作る。エキストラバージン・オリーブオイルを引いたフライパンで、ミキサーにかけた野菜を数回に分けて炒める。その後3種類のひき肉を炒める。ヘラでだまをくずしながら、色が変わるまで炒めたら、先に炒めた野菜と合わせ、スパイスを加えて煮込む。

親会社がハウス食品であれば、手頃な価格のレトルトカレーを購入したり、自社で作ったものを取り寄せることなど朝飯前……。なのにあえてそれをせず、家庭料理の延長で、スパイスアドバイザーの山脇さんがフライパンをふり、キーマカレーを仕込む。

その脇で、パートの女性がカボチャのパウンドケーキを作っていた。その仕込みが終わったと思ったら、包丁でパセリを細かく刻みはじめた。みじん切りにしたパセリにオレガノなどのハーブをパン粉に混ぜる。これを鮭をまぶし、「サーモンの香草パン粉焼き」(390円)を作ろうというのである。

肉料理は、キーマカレーの他、「牛もも肉のロースト」(390円)や、「豚挽肉と筍のテリーヌ」(390円)、「手作り特製ハンバーグ」(390円)もある。

野菜料理も充実している。マヨネーズ不使用の「ポテトサラダ」(130円)や「ニンジンのラペ」(130円)など、おいしくて、廉価なサラダが多い。ニンジンのラペにいたっては、搾りたてのオレンジ果汁とすりおろしたオレンジの皮も使っているので香りが豊かで、ほどよい酸味と甘みが舌に嬉しい。

「デザートの用意もあります。『チーズケーキタルト』(300円)と『自慢のプリン』(200円)は豆乳を使うことで生クリームの量を半分にしています。動物性の油脂を抑えていますが、意外とコクがあり、満足していただけると思います」

チーズケーキタルトを食べたのだが、豆乳を使っていることを知らなければ、ごくふつうの、濃厚なチーズケーキだと思ったに違いない。

もういくつ寝るとお正月。成田山など千葉方面へ初詣に出かけた際、八千代に足を伸ばし、「スマイルデイズ 道の駅やちよ店」に立ち寄ってみては。嬉しいことに、この店ではイートインもできるが、テイクアウトも可能だ。

その昔、「おせちもいいけどカレーもね」というハウス食品のキャッチフレーズが流行ったものだが、キーマカレーと惣菜をテイクアウトするも良し。店で食べるも良し。

ご飯とおかず2品(620円)、おかず3品(750円)など、おかずが選べる、お弁当のテイクアウトもある。手作りのおいしいお弁当を買って帰り、ワインを開ける。たまにはのんびりと過ごせる夜があってもいい。

【店舗情報】
スマイルデイズ 道の駅やちよ店
〒276-0005 千葉県八千代市島田2076 道の駅やちよ やちよ農業交流センター
047-489-5761
9:30〜18:30(12月と1月は10:00〜17:30)
定休日は第2月曜(祝日の場合翌日)
年末年始は12月28日〜1月4日まで休み