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東京農工大学(農工大)は11月30日、炎症の原因物質であるプロスタグランジンE(PGE)ががん転移に関わることおよびPGEの受容体を阻害することにより転移を阻止できることを発見したと発表した。

同成果は、同大学大学院 工学研究院生命機能科学部門/グローバルイノベーション研究機構の稲田全規 准教授と宮浦千里 教授らの研究グループによるもので、米科学誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載されるのに先立ち、10月16日にWeb上で公開された。

抗がん剤は、がん細胞に直接作用してその増殖や浸潤をいかに抑制するかというアプローチが主流だが、同研究チームは、身体の正常細胞に作用して、がん細胞が増殖できない、ほかの臓器へ転移できない、という新たなアプローチで今回の研究に取り組んだ。

同研究では、PGE合成酵素である膜型PGE合成酵素(mPGES-1)の遺伝子を欠失したマウスに、皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)細胞を移入した。骨組織の骨芽細胞や皮膚の線維芽細胞は、がん細胞と接着するとmPGES-1が誘導されてPGEを産生するが、同マウスでは転移巣でがん細胞と出会ってもPGEが産生されず組織破壊も起こらなかった。さらに、骨転移や肺転移などのがん転移もほとんど起こらないという結果が得られた。

この成果を創薬につなげるために、PGEの4種の受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)について、受容体選択的にシグナルを阻害できる化合物を投与したところ、EP4受容体を阻害することにより、選択的にがんの転移が阻止できることが明らかになった。EP4受容体を欠失したEP4遺伝子欠損マウスでは、がんの増殖や転移がほとんど起こらなかったという。

同成果は今後、がん転移抑制に有効な新規治療薬開発につながることが期待される。