1年間の休養からの復帰シーズンを戦っている浅田真央が、今季3戦目のNHK杯 で総合3位に終わった。

 27日のショートプログラム(SP)も28日 のフリーも、少し元気がないのが気になった。そこにはGP初戦だった第3戦の中国杯で見せたはつらつとしたところがなかった。どこか疲労感のようなものが見受けられた。

「今大会で自分が目指していたのは、1戦目と2戦目よりもいい演技をすること。そして応援してくれる多くの方たちのためにもいい演技をしたかった。それができなかったので残念な気持ちです。

 シーズンが始まってから自分の満足いく演技ができていないので、すべてをもう一度見直して、すべてを改めてファイナルに向かいたいなと思います。気持ちを強く持ってやりたいです。ファイナルに向けては練習が大事かなと思います。シーズン初戦からいい調子で結果も出ていたので、(今回の演技は)残念な気持ちですが、これをバネにして自分のベストを尽くして頑張りたいです」

 演技後の囲み取材でも彼女の言葉には力がなかった。

 フリーでもSP同様、武器のひとつであるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を失敗した。最初から全体的にスピードがない。続いて3フリップ+3ループの連続ジャンプを予定していたが、勢いがなかったこともあって、フリップは回転不足、2つめのジャンプは2回転に。中国杯では調子が良かったジャンプにキレがなく、プログラム後半で跳んだ得意のフリップでも、着氷でバランスを崩して手をつき、回転不足の判定を受けてしまったほどだ。

「自分の現時点の状態としては、技術的なひとつひとつはできているんですけど、やはり演技をまとめるというところでは半分くらいしか達していない。たくさんの方に『すごく良くなったよ』と言っていただいているんですけど、私自身はまだまだだなという気持ちのほうが強い。そういった部分でちぐはぐになっているのかなという感じでやっています。もっともっと自分が練習しているときに確立したものがあれば、気持ちも上がってくるのかなと思っています。

 ここまでは練習よりも試合のほうがいい状態が続いていたので、ここからはしっかりと自分の滑りや調子を分かって、それを踏まえて気持ちを強く持っていけるようにしたいです」

 佐藤信夫コーチは浅田の現状をこう語る。

「私自身もよく分かっていませんけども、少し体の調子が良くなかったのかな、と。これから細かく分析して考えなければいけないと思っていますが、従来通りに練習を積んでリズムを作ってくれれば、ちょっとしたきっかけで流れがまた戻ってくると思っています。普段も悪い時がありますが、今回は本番で戻ってくるかなと思っていました。でも、 そうならないでそのまま行ってしまったということですね。

 やはり1年空いて、それだけ年も重ねれば、人の体はずいぶんと変わるものです。私は安易に大丈夫だと言いませんし、こういうことが起き得ると予測していました。従来通りこつこつやっていくことで、彼女自身がやり方を見つけ出してくれると思っています。体力的には、20歳前くらいまでは少々無理してもケロッとしていますが、それを超えてくると疲労感が出てきたり、じわじわと不都合なことが出てくると思います。彼女としては未経験の世界に入り込んできているわけですから、それはある程度、経験を積んでくるのを待ってあげないといけないと思っています。従来の感覚やリズムを取り戻せてくれればいいのではないかと、半分期待しながら見守っています」

「試合が恋しくなった」と競技生活に戻ってきた浅田にとって、 この試練は予想していたことだったかもしれない。佐藤コーチが言うように、未知の世界でどう立ち回ればいいのか、彼女自身、まだもがいている最中のようだ。それでも、これまでの経験を最大限に生かしながら、目の前に立ちはだかる新たな壁をしっかりと受け止めて打ち勝っていかなければ、過酷なシーズンを戦い抜くことはできない。

「GP初戦の中国杯は、どちらかというと自分もすごく楽しむ部分が大きかったと思うんですけど、いよいよシーズンが(佳境に)入ってくると、ちょっと気持ちが変わってきたかなというところはありますね。今回の出来は、自分のいまの実力です。時期的なことは関係なく、自分のできることはしっかりやらなければならないと思います。

 試合も練習も含めて、自分が毎日コンスタントにやっていても、できる時とできない時があると思うんですけど、試合で完璧にできると思えるときは、やっぱり練習で毎日しっかり安定して滑ることができている時だと感じます。今回はそれができていなかった感じです」

 総合3位に入ったことで、12月 初旬にスペイン・バルセロナで行なわれるGPファイナルに2年ぶり7度目の出場を決めた。ファイナルでは若い10代 のロシア勢と、強豪の米国勢、そして現全日本女王の宮原知子と対戦することになった。久しぶりのファイナルで健在ぶりを見せつけることはできるのか。NHK杯では失敗が重なったジャンプをしっかり修正して、彼女の調子のバロメーターでもあるトリプルアクセルを成功させて圧倒してほしいところだ。

「NHK杯 ではやるべきことができなかったので、SPとフリーをしっかり見直して次の試合であるファイナルに向かいたい」

 そう締めくくった浅田真央はしっかりと前を向いた。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha