死亡率高く「高難度」認定更新認められない病院も…改めて腹腔鏡手術について考える

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群馬大学病院の問題以降、各医療機関が行う手術の水準はより厳しくチェックされるようになりました。群馬大学病院では、2009年以降の5年間で肝臓の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術を受けた患者8人が術後4か月以内に相次いで死亡していたことが明らかになり、大きな波紋を呼びましたが、同様のことが他の医療機関で起きないとも限りません。

肝臓の腹腔鏡手術を含む高度な手術を担う病院を認定している日本肝胆膵(かんたんすい)外科学会は、12〜14年度の各病院の報告を調査し、報告に問題のあった2病院について認定の更新を認めていなかったことが分かりました。問題の2病院においては死亡率が8%を超えていたといいます。また、この他にも死亡率が5%を超えた病院が6病院あり、今後、指導を行うことが検討されています。ここでは改めて腹腔鏡手術とはどのようなものなのかを確認しておきましょう。

腹腔鏡手術とは?


従来の開腹手術はお腹を大きく切開して、手術する部位を目視で確認しながら行うものでした。これに対して腹腔鏡手術では、お腹に入れた高精度カメラで撮影した映像をモニターで見ながら手術を行います。腹部に3〜4カ所、数cmの小さな穴を開け、そこから筒状のスコープや器具を入れ、場合によっては炭酸ガスを入れますが、お腹を大きく切開することはありません。最大の特徴は傷口が小さいことで、ここからいくつものメリットが生まれます。

・痛みを抑えられる

傷口が小さいので、痛みも少なくて済みます。例えば、厚労省発表の資料「消化性潰瘍穿孔手術後の鎮痛薬使用量の比較」では、腹腔鏡手術の後で使用する鎮痛剤の量は、開腹手術の場合に比べて20分の3で済むとしています。

・傷口が目立ちにくい

開腹手術に比べて傷口が小さく、手術の跡が目立ちにくいという美容上の利点があります。

・入院期間が短い

傷口が小さいというのは、皮膚の表面に限ったことではありません。腹筋の層を大きく切ることもなく、出血が抑えられます。また、大腸の手術においては開腹手術に比べ、術後の腸閉塞の原因となる「癒着」が生じにくいとされています。体に与えるダメージが少ないため、回復に必要な時間も短くて済み、入院期間の短縮を期待できます。例えば、厚労省発表の資料「鼠径(そけい)又は腹壁ヘルニア術後の入院期間の比較」を見てみると、開腹手術では平均6.3日の入院であるのに対し、腹腔鏡手術では平均2.5日の入院となっています。

腹腔鏡手術で注意が必要なポイント


もちろん腹腔鏡手術は良いことばかりではありません。

・手術時間が長い

モニターを見ながら細かな手術を行うため手術時間は長くなります。お腹の中を空気にさらさないとことは合併症の予防にもつながりますが、一方で、手術時間が長くなれば感染リスクが高まるとも考えられます。

・合併症の問題

出血、他臓器への損傷、創部の感染、などが起こることがあります。また、がんの手術を行う際に炭酸ガスでお腹を膨らませると、微細ながん細胞が散ってしまう可能性があるとの指摘もあります。

・技術が一定ではない

この点は開腹手術についても当てはまりますが、医師や医療機関によって技術に差があります。腹腔鏡手術のような難しい手術は、医師が技術を習得する際のラーニングカーブが緩やかだといわれています。経験を積み、優れた技術を身に着けた医師が育つのには時間がかかります。

今回、2病院に対して認定更新を認めず、6病院に対して指導を検討するとした日本肝胆膵外科学会の対応は、最後にふれた技術の差(死亡率の差)の改善を意図したものといえるのではないでしょうか。腹腔鏡手術は正しく行われれば患者にとってメリットも多い手術です。今後の技術の底上げが期待されています。

<参考>

死亡率8%超2病院、「高難度」認定更新認めず

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151127-00050202-yom-soci

監修:岡本良平医師(医学博士)