【働く人のメンタルヘルス】業務の細分化が引き起こす問題

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いよいよ12月から職場のストレスチェックが実施されます。それまで仕事で活躍してきた人が、ある日突然、心身の調子を崩してしまうことは珍しくありません。本稿は、働く人がメンタルに不調をきたすきっかけとしてよく見られるパターンを紹介するシリーズの5回目です。今回は、働き手として期待されることが拡大・細分化している現状と、その問題について考えます。

業務の細分化が招く弊害


私は臨床心理士として、さまざまな企業で不調者への対応に関するアドバイスをしたり、職場研修を提供したりしています。その中で、しばしば疑問が生じることがあります。そのひとつに、組織の効率化の取り組みがあります。

例えば、最近ではさまざまな業務や連絡がシステム化され、シフト管理も休暇申請も直接に話をせずに済ませられるところが増えています。つまり、業務において面と向かってコミュニケーションをする機会が減っているのです。

また、個々の仕事はどんどん細分化される傾向にあります。働いている人たちには、細分化・特殊化する業務に問題なく対応することが期待されています。コミュニケーションが減っているおかげで、それに異議を唱えるチャンスも減り、従業員は半ば強制的にその要求に応えなくてはなりません。

仕事が細分化すればするほど、ひとりの人間が対応する範囲は狭まります。管理する側は、従業員もそのほうが対応しやすいだろうと考えがちですが、現実は逆なようです。仕事が細分化することで全体のイメージがつかみづらくなり、結果として対応能力が低下する傾向がしばしば見られます。

変化に耐えられない人が排除される


組織は、より良いと思われる方向へと絶えず変化し続けます。その変化は止まることはありません。その一方で、その変化についていけない人を洗い出し、振り落とすかのように働くこともあります。

組織は、その変化についていけること、耐えられることを従業員に求め、期待します。そして、その変化についていかれない人は、排除される傾向にあります。そして、排除の対象になった人は、「モチベーションが落ちる」「やる気が出ない」「体調が悪くなる」──といったかたちで現れるのです。

時には変化に異議を唱えてみる


以前、統計学者のニック・マークスが「地球幸福度指数」という概念を発表しました。その中で、好奇心をもって新しいことを学び続けることの大切さが語られていました。

新しいことにチャレンジするなら、「しなければならない」といった強制的な感ではなく、「してみよう」という自発的な精神で取り組みたいですね。そして時には、「変化についていけない」と開き直ることも大事です。そこからコミュニケーションを取り戻し、時には組織の変化の方向修正ができるようになればと思います。

●玉井 仁(たまい・ひとし)
東京メンタルヘルス・カウンセリングセンター カウンセリング部長。臨床心理士、精神保健福祉士、上級プロフェッショナル心理カウンセラー。著書に『著書:わかりやすい認知療法』(翻訳)など