「チカンです!」一瞬にして仕事や家族も失うリスクに備える痴漢保険とは

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混雑した満員電車内では、男性の誰もが女性の「チカンです!」のひと言で、一瞬にして仕事も家族も失うリスクを抱えている。仮に「無実」だとしても、だ。

実際、痴漢の誤認逮捕や、起訴されたが裁判で無罪となる痴漢えん罪が後を絶たない。そこで注目されたのが、そのリスクに備えられる保険の存在だ。

今年9月、ジャパン少額短期保険株式会社から発売された痴漢えん罪ヘルプコール付きの保険「男を守る弁護士保険」「女を守る弁護士保険」――いわゆる「痴漢保険」として、リリース直後から多くのメディアに報道され、ネット上でも話題になった。

この保険は、相手にケガを負わせたりした場合の損害や弁護士への相談費用を補償する賠償責任保険とセットとなっているが、最大の特徴は痴漢と間違われた時、すぐに弁護士と連絡がとれる「痴漢冤罪ヘルプコール」というサービスだ。

これは“ワンタッチ”で弁護士にSOSを出せるとのことで、契約時に専用のサイトにアクセスできるURLが通知され、自身のスマホやガラケーにブックマーク登録。ブックマークしていたURLをタップすると、登録弁護士宛にメールが一斉送信される。その後、対応可能な弁護士が契約者に連絡をとることで、契約者はその中から弁護士を選んで電話連絡するという仕組みである。

同社の杉本尚士社長が「痴漢冤罪ヘルプコール」のメリットについてこう説明する。

「痴漢えん罪に巻き込まれた時、逮捕や起訴もされずにいち早く釈放されるのが何よりも重要。最初で躓(つまづ)かないことが大切なのです。このヘルプコールがあれば、弁護士にその場で相談して、すぐにどう行動したらいいかアドバイスをもらって適切な処置ができるというわけです」

ちなみに、事件発生後48時間以内でかかる弁護士の相談料などは同社が負担してくれるという。

一方で、痴漢被害にあった女性側にも適応される同保険。女性の場合、痴漢被害を受けたと思った時点で、現場からすぐにヘルプコールを使って弁護士に被害を訴えることができるそう。近年、増加しているという電車の揺れに合わせて身体に触れる、匂いをかぐ、見つめるといった「新型痴漢」も適応されるのだろうか。

「適応されません。迷惑防止条例では、故意に服の上からまたは直接体を触る行為が痴漢になると思います。匂いをかいだり、揺れに合わせて接触してくることが痴漢だと言い切れないからです」(前出・杉本社長)

それでも、女性加入者ついては、まだ全体の1割ほどと少ないものの着実にその数を増やしているとのこと…。

さらに、ひと口に痴漢えん罪といっても、様々なケースが想定される。たとえば、痴漢の“対象”は異性とは限らない。男性が男性に痴漢を疑われたり、男性が同性にお触りされたりする場合もありえない話ではない。こうしたケースにも保険は適応されるのか?

「問題ないです。迷惑防止条例に準じて、保険も適応されます。同条例では、痴漢の対象は異性ではなく“人”と定義されているので、同性とのトラブルに巻き込まれた場合でももちろんご利用いただけます」

電車内等での痴漢プレイの場合はどうだろうか。例えば、面識のある女性と合意の上で行なわれた痴漢プレイをしていたにもかかわらず、第三者に発見され、その瞬間にその女性に「この人、痴漢です!!」と被害者面されてしまったら…。男性からすれば裏切りであり、えん罪でもあるように思えるのだが…?

「う〜ん、実際に触っていますので、冤罪とは言い切れず適応は難しいです。冤罪になるかどうかは警察や司法当局が考えることですし…」

では、プレイではなく本当に痴漢したにも関わらず、保険を適応しようとヘルプコールで助けを求めるーーそんな悪用を考える人も想定される。そこが盲点になるのでは?

「当社は犯罪者を救うつもりは毛頭ありません。悪用した場合は全額負担していただきます。48時間以内で、やっていないと主張している限りはもちろん当社が費用を負担します。しかし、本当はやっていたことが発覚した場合、全額請求させていただきます」

満員電車に乗る多くのサラリーマンにとって痴漢トラブルは他人事ではない。明日は我が身、痴漢えん罪という、現代社会の“落とし穴”にはまらないためにやれるべきことはやっておいたほうがいいのかもしれない。