自分を笑えるタイプと笑えそうもないタイプと、人を2つのタイプに分けるならば、中田と本田は、笑えそうもないタイプに属する。黄昏れていく自分と向き合うことが不得意のように見える。本田が晩年を、Jリーグのどこかのクラブで過ごす姿を想像することはできない。

 だが少なくとも僕は、本田をすでにピークを過ぎた選手だと捉えている。CSKAモスクワ時代に負った怪我や病気に原因があると考えているが、その前とその後で、パフォーマンスに2割ほどの開きが見てとれる。すでに本田自身は黄昏れていく自分と向き合っているのではないか。他人に気付かれないように振る舞っている可能性がある。

 移籍はそれを浮き彫りにする力がある。移籍先のクラブ名を見れば、上りの階段か、下りの階段かが鮮明になる。ミランが普通の状態にあるクラブならば。

 急降下が激しすぎて、実体が見えにくくなっているミラン。実際より、よく見えるか、悪く見えるかと言えば、前者だ。過去の実績に照らせば、欧州の10大クラブの一つに数えられる。名門のイメージが強いので、実際よりよく見える。だが、移籍にはシビアな物差しが充てられる。クラブが名門か否かは関係しない。移籍市場では、ミランは欧州リーグランキング4位・セリエAの7位チームに過ぎないのだ。

 つまり、同等のクラブへの移籍が適ったとしても、下りの階段に見えてしまう可能性が高い。実際よりよく見えていたこれまでとは、真逆の立場に追い込まれることになる。

 そこで本田はどんな振る舞いを見せるか。カズ派になりきれないと辛い。ついお節介を焼きたくなってしまうのだ。