健康な体は健康な腸から

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健康に関心がある人ならよく耳にするキーワードの1つが「腸内環境」「腸内細菌」だろう。腸内の環境や最近は、お腹の調子だけでなく、血圧や免疫機能、アレルギー、糖尿病、精神疾患まで関係しているとする研究も存在する。

そんな腸内細菌が、心血管の健康にも関係している可能性を示唆する研究が、米国心臓学会誌「Circulation Research」オンライン版で2015年9月10日に発表された。

100兆個1.5キロ存在する腸内細菌

人間の体には、腸に限らず皮膚などにも多くの細菌が存在しており、好気性(酸素のある所で生育する)か嫌気性(酸素のない所で生育する)かによって、生息する場所が異なる。例えば同じ肌でも、皮膚表面には好気性細菌が、皮脂腺の奥には嫌気性細菌がいる。

腸内というと嫌気性のように思えるが、その環境は小腸と大腸で異なる。

こうした誰の腸内にも存在し、感染症の原因とならない常在細菌を「腸内細菌」と呼び、細菌以外の菌類や酵母なども含んでいる。細菌というと有害な存在だと思われがちだが、人間が栄養吸収できるのも、食べたものを分解してくれる腸内細菌がいるためだ。

1人の腸内には1000種類以上、100兆個の腸内細菌が存在しているといわれ、その総重量は約1.5キログラムとする説もある。どれほど膨大な数が腸にいるかが想像できるだろう。

研究では、オランダ、フローニンゲン大学医療センターの研究者らが、同大がおこなっているオランダ在住の18〜80歳、16万5000人を30年間追跡し、遺伝子情報と疾患の関係を調査している大規模研究「LifeLines」から、893人の糞便試料データを抽出。「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と心血管疾患のリスクとなる血中脂質の関係を分析するというもの。

腸内細菌叢(腸内フローラとも)もよく聞く言葉だが、細菌は生物なので、腸の中で一定のバランスが保たれた生態系を築いている。この生態系を腸内細菌叢という。

分析の結果、34種類の細菌がBMI(体重を身長の2乗で割って算出する肥満度)、血中HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪の数値に関係しており、それぞれの数値の決定に4.6%、6%、4%程度の影響があると推算された。LDL(悪玉)コレステロールや総コレステロール値には関係していなかった。

世界は腸内環境研究ブーム

影響度の数値は微量のようにも感じるが、研究者らによると、腸内細菌がBMIやコレステロール値に関係しているとするエビデンス(科学的な根拠)を提示したのは今回の研究が初めてだという。

BMIやコレステロール値は年齢、性別、遺伝子の影響も受けるが、腸内細菌もこれらの要因と同程度に影響を与えており、今後は心血管疾患の治療や予防の際、腸内細菌を検査することも重要になるのではないか、ともコメントしている。

今回の研究をはじめ、腸内細菌叢のバランスと疾患や健康状態の関係についての研究は、近年盛んにおこなわれ、ちょっとした腸内環境ブームだ。

ここ2〜3年ほどでも、2013年にはカナダ、マクマスター大学が、腸内細菌が脳や精神疾患に関係しているとする研究を、2014年に順天堂大学が、2型糖尿病患者は腸内細菌叢のバランスが乱れやすいという研究を発表。今年は、米イリノイ大学が、米国内分泌学会で血糖値コントロールに腸内細菌が大きく関係しているとする研究を、デンマークのオーフス大学からはパーキンソン病の発症リスクと腸内細菌の関係を示唆する研究が発表された。

こうなると、「よい腸内環境」をぜひとも実現したいが、どのような状態が「よい」のだろうか。[監修:溝口徹 新宿溝口クリニック院長](つづく)

参考論文
The Gut Microbiome Contributes to a Substantial Proportion of the Variation in Blood Lipids.
DOI:10.1161/CIRCRESAHA.115.306807 PMID:26358192

(Aging Style)