リード・ヘイスティングスCEO

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 既存の映画やドラマの配信だけではなく、エミー賞やアカデミー賞などにノミネートされるほど世界的に評価されているオリジナル作品を生み出している世界最大級のオンラインストリーミングNetflix。今年9月に日本にも上陸した同社は、「テラスハウス」の新シリーズ「TERRACE HOUSE BOYS & GIRLS IN THE CITY」を製作したり、芥川賞を受賞したピースの又吉直樹作の「火花」を映像化したりと日本でも精力的にコンテンツ作りに勤しんでいる。さまざまなコンテンツジャンルを網羅するような勢いを見せているNetflixだが、スポーツやニュース、音楽番組などには絶対に手を出さないのだという。その理由を創業者にして最高経営責任者(CEO)のリード・ヘイスティングス氏が明かした。

 「Netflixでは映画とテレビに集中しようと決めています」。リード氏は、他社が配信しているようなスポーツ、ニュース、音楽、ユーザー投稿型のコンテンツ、教育番組などを配信する予定はないと話す。Netflixではドラマも1話ごとではなく、1シーズンを一挙に配信するなど、コンテンツは1から10まで完成された状態で提供されることが多い。そのため即時性が求められるスポーツやニュースなどは確かに方向性が異なるジャンルだといえる。しかし、音楽番組や教育番組も作らないのはなぜなのか。リード氏は、「何かに秀でたいのであれば、集中しなければならないと思うんです。われわれが一番でありたいと思うのは、テレビ番組(ドラマやバラエティー)や映画です」と説明する。

 「Netflixはゆったりしながら観られる番組を作ろうと思っています。その意味でいえば、料理番組はあるかもしれません。でも算数を教えるような教育番組はないでしょうね。勉強だから」と笑うリード氏だが、そのまなざしは真っすぐだ。リード氏が思うコンテンツの条件は、「喜怒哀楽があるものだと思います。観ている者に感情を生むような良質な番組。それがわたしの思う番組の条件です」とのこと。

 良質なコンテンツ作りのために、クリエイターを大事にすることも忘れない。資金提供などの協力は惜しまないが、一度コンテンツのビジョンを共有した後にはクリエイターの自由に作らせる。「クリエイターのビジョンに合った作品を制作していただいています。だからそこには介入しません」。NetflixのスポンサーはNetflixの会員のみ。だからこそ視聴率などを気にせずに、良いコンテンツ作りに集中できる。日本にもサービス展開を行っている今、もしも無名の人物がNetflixに脚本やコンテンツを持ち込んだ際にもそれが採用されることはあるのだろうか? リード氏は「われわれが求めているのは素晴らしいストーリーです。なので、それがどなたから来ても変わりません」と断言していた。

 リード氏が想像する未来とは。彼は「将来、20年後、テレビは大きなiPadのようになるかもしれませんよ。いろんなアプリがあって、それぞれ違う映像のコンテンツを提供しているような。スクリーンが違うだけで、スマートフォンやスマートテレビが同じような機能になっていくんじゃないかなと思います」と笑顔で答えていた。(編集部・井本早紀)