ヤンマートラクターYT5113のデザインを手がけた奥山清行さん

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幅員44メートルの御堂筋は、4列のイチョウ並木が美しい、日本を代表する大阪市のメインストートだ。普段は交通量の激しいこの場所を歩行者に開放するスペシャルイベント、「御堂筋オータムパーティー2015(御堂筋ワンダーストリート)」が11月29日に開催される。

今年は道頓堀開削400周年、「大坂の陣」から400年など、大阪にとって節目といえる年だ。シンボルイヤーにふさわしいプログラムとして、普段サーキットでしか見ることのできないスーパーカー総勢100台が御堂筋をパレードする。その先導役を務めるのは、大阪市に本社があるヤンマー製、世界限定50台の最新型トラクター「YT5113」だ。

同モデルのデザインを手がけた奥山清行さんは、ともにイタリア車のエンツォ・フェラーリやマセラティ・クアトロポルテなどのカーデザインを担当した経験をもつ、日本が世界に誇る工業デザイナーだ。御堂筋ワンダーストリートのプレイベントとして、奥山さんと建築家の安藤忠雄さんによる「YANMARスペシャルトークセッション」が、新梅田シティ東側「希望の壁」前で11月27日に行われた。

デザインはもちろん、操作性や室内の快適性にもこだわりあり

東京の美術大学を卒業後、カーデザインの世界を中心に活躍する奥山さん。トラクターのデザインに取り組んだことに、「なぜ!?」と驚く人もいるだろう。山形で生まれた彼の胸の内には、日本のものづくり、なかでも農業に対する熱い思いが常にあった。

「子どものころは手で田植えを手伝い、農家の人たちの大変さを体験していました。社会人になって久しぶりに実家に戻ってみると、ヤンマーの田植え機や稲刈り機がまだあったんです。農家にとって機械はロボットというか、パートナーのような存在。私が持っていたこだわりを(ヤンマーの)商品として実現したいと思い、開発の皆さんと一緒にきちんとやらせていただきました」

今年5月に発売を開始したYT5113は、最高出力113馬力と強力なパワーをもつ。機体の傾きを感知して、作業着を瞬時に水平制御する機能もある。10月に東京ビッグサイトで開催されたモーターショーにも出展を果たし、トラクターにもかかわらず話題の的となった。

「これまで農機具は業界内で展示会が開かれてきました。これからは農家以外の方にも興味をもってもらいたい。とくに子どもたちに見てもらって、彼らが『将来農業をやってみたい』と思えるような商品を作りたかった」「就農を志す人がいても、家族に反対されるケースが多いんです。『農業って儲からるの?』『大変なんじゃないの?』『あんな車に乗ってほしくない』。これが正直な意見です。そこを根本的に変えて、カッコいい農業を作りたい」

安藤さんもYT5113を一目見て、「カッコいい...」とつぶやいたそうだ。

「楽しく仕事をする、美しく仕事をする、このトラクターを見ていると元気がでるなと思いますね」

従来の農機具のイメージを一蹴する、圧倒的な存在感を放つ新型トラクターのデザイン。フロントのガラスが大きいのは、操縦者の視認性を高めるためでもある。人間工学に基づいたテクノロジーをベースに、操作性や室内の快適性、高い効率性も追求した。購入者からは「トラクターに乗るたびワクワクする」「長時間作業も疲れにくい」と評価する声が寄せられている。

自由貿易協定である環太平洋経済連携協定(TPP)の大枠合意や農業従事者の減少で日本の農業は危機にあると懸念する向きもあるが、ヤンマーは商品開発を通じて農家を増やす力になる一方で、海外に打って出たいと考えている。同社のアグリ事業本部長によると、2016年春から欧米市場でもYT5113を売り出す予定だ。

世界デビューを目前に控えているが、関西では御堂筋ワンダーストリートが初お目見え。普段農機具に触れる機会のない都会人がみたら、「最先端のトラクターって、こんなにモダンなのか...」と圧倒されることだろう。

大阪で生まれ育った安藤さんも、イベントのコンセプトのユニークさに胸をときめかせている様子。

「今回はトラクターの後ろにフェラーリ100台が走ります。最も速く走るものの前に、生活の道具が走る。街の雰囲気が変わり、人々の驚きの顔を浮かべる――。私の知っている限り、大阪のイベントとしては一番面白いんじゃないかと思っています」

ワンダーストリートは29日の14〜17時、御堂筋の久太郎3交差点と難波西口交差点の区間で開催される。雨天決行。全国のご当地グルメが集結するゾーンや、ケータリングカーの出展などもある。